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エルフの魔法

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「じゃあ私は穴を掘ろうかね」
「なら私は水を貯めるよ」
「そこの木を大きくしようかね」
「よし、あんたの髪を伸ばしてやろう」

言いながら指をさすと、地面に穴が開きそこに水が湧き出す。
指をさされた木は大きくなり沢山の実を付けた。

そして俺の髪が伸びた……。

「魔法はね、有る物に作用するんだよ。
今みたいに土に圧力をかけると固くなり、甕の様になるから水を溜めれる」
「水は空気中に有る水分を集める」
「木は育つ力に作用して発育を促した」
「あんたの髪も成長を促したのさ」

一緒に外に出ていたシルジットが、紐を手渡してくれたので、腰まで伸びた髪を何とか縛る。
後で誰かに切ってもらおう。

エルフの言う様に、魔法は有る物に作用して効果を表す、成る程理解はできる。
しかし疑問が一つ、

「詠唱とか魔法名を言わ無くても、発動するんですか?」
「詠唱って何だい?」
逆に聞かれてしまった。

「えっと、例えば『風よかのものを吹き飛ばせ、ウインド!』とか…」

魔法と言えば詠唱と魔法名じゃ無いの?
確かどこかで読んだ話だけど、効果を詠唱して、魔法名を発言する事で魔法が発動するとかなんとか。

疑問を投げかけたら、四人は目を見合わせて吹き出した。

「何だいそりゃ、恥ずかしいねえ」
「お前さんは明かりをつける時にでも一々前置きするのかい?」
えー?明かりをつける時…?

「例えば『光よ、集う闇を打ち払え、ライト!』とか?」

…………ナイワー……。
自分で言葉にしてても思ったよ。
ナイワーーーー

なんだろう、魔法ってファンタジー世界の物で、現実には無いから色々ドリームが広がって、詠唱とか魔法名を叫ぶとか思ってた。
けど、普通に生活に使うなら、一々行動を口に出すなんて事はしないよね。

聞いてる方も恥ずかしいけど、言ってる方も恥ずかしい。

魔法と浮かれたけど、冷静に考えたら、詠唱ってかなり羞恥プレイだ。

「精神集中とかで詠唱するとか、魔法名叫ぶとかも無いんですね」
「無い無い。
集中するのにペラペラ喋ってどうするの」

確かに、詠唱するのに気が行っちゃって、集中できないよね。
それに戦いの時に魔法名叫ぶと対策取られそうだし。
野球で投げる前に「カーブ投げるぜ!」とか言ってる様なもんだね。

こんなこと言ってたら、漫画家さんや小説家さんからクレー来るかな。

こんな残念世界なのに、何でこんなとこだけキッチリしてんのかな?

本当、この世界の責任者とじっくり話し合いたいね。
あ、でもあの女神じゃあ話し合っても無理か。

あー、なんだかモヤモヤする。

理解はできても、何だかモヤモヤしたまま食堂に戻る。

「まあこんな事くらいしかできないけど、協力はできないね」

中に戻ると冷めたいたお茶を、コボルトが温かい物と交換してくれた。
ありがとうと受け取って折角なので一口飲む。

正直思った以上にショボいけど、例えば畑を作ったりしたら役立つだろうな、と思ってたのに断られた。

「作物などの発育を促すだけでも大変役立つのですが、無理なのでしょうか」
「手伝ってやりたいのは山々なんだがね……」

四人が口をつぐむ。
暫しの沈黙の後、案内してくれた男性エルフが声を掛けてきた。

「手伝いは無理と言う事だ。
そろそろ俺達は夕食にするからこの辺でお開きにしてくれ。
仲間が森の外に居るんだろ?送って行ってやるよ」
追い立てられる様に外に出された。
協力できないと言うなら仕方ない、無理に頼み込むものでも無いしね。

俺たちはエルフの村を出る事にした。





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