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エルフって……
しおりを挟む若い二人の男性エルフに、無言のまま案内される。
森の出口に近い場所まで来た所で二人は立ち止まり振り向いた。
「すまんな、力になれなくて」
一人が頭を下げて来た。
「いえ、こちらの都合なのですから、無理に頼む事では無いですし、なんだか事情がありそうですし…」
俺が言うとオニギリが俺に言う。
「見てわからなかったのか?あの女性達を」
オニギリの言葉に、エルフもシルジットも視線を落とす。
「え?何かあるんですか?
ご年配の方だから働けないとかじゃなくて?」
僕の言葉にオニギリとシルジットは、やはりわかってなかったか、と言う顔をした。
「コー、ご年配って言うが、あの女性達は多分コイツらと同じ年だぜ」
エルフを指差す……え?同じ年?
「コウイチ様、魔族であろうと人族であろうと、魔法は使えば魔力が減り、寿命が縮まります。
ただ魔族は人族より保有している魔力が多いので、人族より魔法を使う事ができます。
エルフは他の種族より大変豊富な魔力を保有しておりますが、それも無限では有りません。
多く使えば老化を促す事となりますし、使い切ってしまうとお亡くなりになります。
エルフの女性は探究心が旺盛で、魔法の研究をしますので、男性より寿命が短くなり、見た目にも差が出て来るそうです」
え?年をとってるんじゃ無くて、魔法の使いすぎで老化してるの?
「何それ、生活に役立つかもしれないですけど、命を削ってまで研究なんてしなくても良いじゃないですか」
思わず声が大きくなる。
命削ってまでやる事?
研究したからって、魔力の多い魔族は力第一で魔法なんて殆ど使ってないし、生活に役立つ魔法を人族が知っても魔力量的に使えないし、研究成果を発表できる場所があるわけでも無い。
研究なんてする意味無いじゃん。
「……それでも『知りたい』と感じる想いは止められません」
「でも……でも…………」
「間も無く女性達は眠りにつくでしょう。
長い間一緒に過ごして来ました…。
新しい魔法を発見した時の、彼女たちのあの楽しそうな顔…思った様な成果の出なかった時の悔し涙……そして諦めず成し遂げた時の輝く笑顔……。
女性を守る為に居る私達も後を追うでしょう。
繁殖力の無い私達エルフは静かに滅びゆくしか無いのです」
この人達はもう諦めてるの?
寿命が尽きるまで思い出だけに浸って、静かに過ごすしか無いの?
滅びるのを待ってるだけなの?
「そんなの嫌だ!」
俺は今来た道を走って戻った。
*****
来た道を戻りつつ思い出す……。
俺の家は元々父さんと母さんと俺の三人暮らしだった。
じいちゃんとばあちゃんは、田舎で農家をやっていた。
父さん達は年なんだから一緒に暮らそうと言ってたんだけど、じいちゃん達は断っていたんだ。
お盆と正月には三人で田舎に遊びに行っていた。
俺はじいちゃん達が大好きだったから『一緒に住まないの?』って聞いても、じいちゃんは笑っているだけだった。
俺が小学三年の冬に、ばあちゃんから電話がかかって来たんだ。
『二週間程前から入院しているのだけど、ここ五日ばかりおじいさんと連絡が取れないの。
悪いけど様子を見て来てくれないかしら』
父さんは仕事だから母さん一人で新幹線に乗って行ったんだけど、そこには変わり果てたじいちゃんが……。
ばあちゃんは足の骨を折って、じいちゃんと二人暮らしだから、大事をとって入院していた。
だからじいちゃんは、たった一人、誰にも看取られずに心臓発作で亡くなっていたそうだ。
『なんで入院した時点で連絡くれなかったんだ!』
葬式で父さんがばあちゃんに詰め寄って泣いていた。
大人が…力強い父さんが泣いていた姿に俺はビックリした。
『若い人達に迷惑かけたくなかったのよ。
あなた達二人とも仕事しているのだから、年寄りが迷惑かけるのは申し訳ないだろ』
その後大人で話し合ってばあちゃんは同居する事になったんだ……。
だから、ひっそりと最後の時を待つだけなんて、そんな寂しい事、言わないで欲しい。
俺のわがままなのはわかるけど、知ったからにはこのままでいて欲しくないんだ!
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