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一人きりだけど兄弟

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ドラゴンの洞窟の出口へ向かいながら、一言も喋っていないアンズに声をかける。

「どうしたの?ずっと黙ってるけど気分でも悪い?」
『…………』
黙ったままふるふると震えたのは首を振ったのだろうか?
首も頭もないけどそんな雰囲気だ。

「ガーリックはさっき聞いた事知ってたの?」
ガーリックに話を振ってみる。

「……いや、知らなかったね。
実は特別種って、なんとなく他の種とは違うのはわかってたけど……一人きりの種だろうなとは思ってたけど…………そうか、私はドラゴンの一部なんだ」

うん…そうかな、とは思ってても本当に一人っきりで増えもせず、ずっと一人っきりの種族って、想像しててもちょっと寂しいのに、それが絶対の事と確定されたんだもんね。

複雑なんだろうな。

「で……でもホラ、町ができたら種族は違っても仲間は側に居るんだし、えっと、同じドラゴンの一部ならアンズと兄弟って事じゃない?
アンズみたいな可愛い弟が出来たってちょっと羨ましいよ」

明るめの声でフォローしてみると、俺の意図に気づいたのか、ガーリックがふと小さく息を吐いて笑った。

「そうだね、他の魔族ではありえない、ある意味の同腹の兄弟って事かな」
「そっか、魔族の純血種の親は一度の出産で亡くなるから、血を分けた?同じ親の兄弟って居ないんだよね。
なら最強兄弟じゃん」
「確かに最強兄弟だよね」

俺の言葉にガーリックはいつもの感じで笑うけど、腕の中のアンズが身をよじって頭突き?する(体当たりか?)

『アルジ、違う!
俺の方が兄だよ!
俺の方が先に誕生してるんだから、俺が兄でガーリックが弟!』
「大差無いだろ」
『いや、譲れないね。
俺の方が先だし、強さも上だし』
「確かに単純に戦闘だとアンズの方が上でも、知識や他の事合わせると私の方が上だね」
『なんだとー』

なんだろう、同じドラゴンから生まれた?発生した?と思って言い合いを聞いてると、本当に年の近い兄弟の兄弟喧嘩に聞こえてくる。

「はいはい落ち着いて、ほら出口だよ」
僕達は外に出て待ち合わせ場所に向かった。


*****


待ち合わせ場所にはホッティが先に居た。

採取用に持っていたのか、パンパンに膨らんだ袋を持っている。

「お待たせ、欲しいもの見つかったみたいだね」

コクリと頷き袋の口を開けて中を見せてくれる。
人参…?いやパ…パ……パパイヤ……じゃなくてなんだっけ、赤いピーマンっぽいやつ?

「………竜の爪…………お腹…パンパンの時……飲む………お通じスッキリ……」

んー、便秘に効くのかな?
もしかしてアレか?
とんがらしみたいなもん?
キムチとか沢山食べた次の日お腹ピーピーになるもんね。

僕は一つ袋から出してホッティが止める前に齧ってみた……

「…………カハッ……か……かはひ……いはい………み、みふ……」

めっちゃ辛い!
口の中の物をぺって吐き出しても口を閉じれないくらい痛辛く、犬みたい舌を出してにはぁはぁと口で息をしてたら慌てたホッティが水筒を差し出してくれた。

「何やってるの?!
こんなもの齧るなんて身体に良く無いし、下手したらショックで心臓止まるよ!」

あー、ホッティが本気でご立腹です。
スラスラと早口で喋ってるもん。

水を飲んで何とか落ち着いてゴメンと謝る。
でも齧って確定、これサイズと辛さは段違いだけど、とんごらしだ。

あ、とんがらしじゃなくて唐辛子?鷹の爪?より辛さ的にハバネロとかジョ……ジョリキュア?みたいにかなり上だけど、これなら量さえ間違えなければ味付けの幅が広がるよね。

あ!この先うどんとか作れるようになったら入れたり、キムチ作ってキムチ鍋とか、チヂミとか……あー夢が広がる。

想像しながら思わずにょにょしていると、心配顔のホッティが覗き込んできた。

「………………大丈夫……?………」

なんだか違う意味の大丈夫って響きに聞こえたのは気のせいだよね。


*****


他にも待ってる間に採取した薬草や、ハーブ等を見せてもらいながら時間を潰していると、ガサガサと草木を分けて近寄って来る音が聞こえてきた。

近くの木が大きく揺れたと思ったら、

「オーーーホホホホホ、アタシが一番よ」

高笑いと共に、猫オネエが木から飛び降りてきた。

『だからズリいって!』

間を置かず、ワーウルフとサクラも姿を現わす。

「そうですよ、木の上を飛び移るなんて反則です」
「あーら、地面を走っての勝負とは言ってなかったわよ、あくまで麓とこの場所迄誰が一番早いかと言う勝負でしょ。
どこを進もうと早い者勝ちよ。
負けたからって言い訳は見苦しくってよ、オーーーホホホホホ」

片手は腰、もう片手は指を反らし口元で、こういう人のオヤクソクなポーズで高笑い……。

んー、まあ足元の悪い道無き道より、そりゃあ木の上を飛び移る方が断然早いよね。
誰が早いかの競争なんだから同じ条件じゃ無いと勝負にならないでしょ。

「途中迄は地面を走っていたのに、私達の方が早かったからと木の上移動に移ったのではないですか」
『そうだそうだ、俺らの方が早くて負けそうだから途中から木に登ったくせに言い訳って何だよ』
「あーら、どんな手段を使っても結果は結果、アタシが一番先に戻ったんだからアタシのか、ち、よ」

サクラ達が顔を赤くして(いや、ワーウルフの顔色はわかんないけど)反論しても、何だかんだと言い逃れる。

そんな三人を見ながらガーリックが僕の耳元で呟いた。

「アレも兄弟になるのか?
御免被りたいね」
『俺もあんなのが弟なんてイヤだよアルジ』
腕の中のアンズも同意する。

あー、絶対あの人トラブルメーカーにしかなんないよ。

それでもロンが連れて行けって言うんだから置いて行くわけには行かないよね。
それを伝えた時のサクラ達の反応が…………


その後ドラゴンの住む山に、不満を現わす大きな声が響き渡ったのは言うまでも無い……





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