【完結】乙女ゲームのヒロインに転生したけどゲームが始まらないんですけど

七地潮

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ヒロイン 5

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何故…と言うか、ついつい欲望にふらふら~と、ショタの唇を奪いそうになって、停学処分をくらっちゃった。

いやほら、攻略対象な可愛い弟(ショタ)キャラが、フルフルと震えながら涙目で見上げて来るんだよ?
ちゅーの一つも奪いたくなるってもんだと思わない?

しかしヤバいのは、もう明日から一週間テスト期間、その後採点に一日、翌日には謝恩会だよ。
私ってどのルート走ってるの?

採点日に貴族クラスは奉仕活動として、孤児院でボランティアや教会で炊き出しを行うから、その振り分けを今日やってた筈。
確か悪役令嬢は放課後礼拝堂で、担当教会の場所やらやる事を説明受けるメンバーの一人だった筈。

そこでヒロイン(私)を見つけて、
『わたくしの○○○に手を出すなんて、身の程を弁えていないわね』
とか何とか言いがかりをつけて来て、最終的に噴水へ突き落とす……だったと思う。

でも、王子とも幼馴染の宰相息子とも、ましてや公爵令息とも絆を深めていないから、このイベントは無いかな?

でもこのイベントは、謝恩会の断罪イベントに必要なんだから、どうにかイベントをおこさないと。


…と、放課後噴水の近くで待ってたけど、悪役令嬢は普通に礼拝堂へ行って、普通に帰っちゃったよ、どうしよう。

こうなったら自作自演しかないよね?
ずぶ濡れで保健室へ行って、先生に噴水に落ちてびしょ濡れだったって言う証人になってもらわないといけないんだから。

………でもさ、今11月下旬だよ?
指先をチョンッと入れただけで冷たいのが丸わかりなんだけど…。

でも、断罪イベントの為なんだから、覚悟を決めて…………


バシャーーーーン!!


うっひゃーーーー!!冷たーーーーい!!


すぐさま上がって保健室へ駆け込んだよ。



「おや、こんな寒い時期に着衣で寒中水泳かい?」
「い え   噴す  いに   落とさ」

ガクブルで言葉が途切れ途切れになっちゃうけど、伝えなきゃだよ。

「誰かに落とされたのかい?」

シャツのボタンを三つも開けていて、冬なのにシャツの下は素肌、鎖骨がエロい。
髪をかき上げる仕草がエロい。
垂れた目に泣きぼくろがエロい。

「いえ  わざと じゃ  ない 思い ます」
「わざとじゃなくても、冬に噴水に落とすのは、いたずらじゃあ済まされないよ」

「エスフィー様は  あ…」
ハッキリと名前を出しておいて、いかにも口から出ちゃった感を出しつつ項垂れる。
私って女優~。

「まさかエスフィー嬢が?」
「違います!私の勘違いです!」

あったまって来たから、口が回る様になって来た。

「……先ずは体を温めようか」

ふふふふ、光魔法が使える私(ヒロイン)は、教会から派遣されて来ている先生は、元から親密度が高いし上がりやすいのよね。

「着替えを出すから、まずは濡れた髪を拭いていなさい」
「ありがとうござ………」

え?何この女神プリントのタオル……。

保健室内をよくよく見回してみると…

机には女神フォトスタンド、女神ぬいぐるみ、椅子には女神座布団(尻に敷くのかい!)ソファーには女神クッション、ベッドには女神抱き枕?観葉植物は女神の形に刈り込まれ(トピアリーって言うんだっけ?)、壁には女神ポスターに女神カレンダー、先生の白衣の背中には、女神の刺繍(昭和のヤンキーかい!)

「サイズはどれが良いかな」

予備の制服を探している先生に気づかれない様、私はそっと保健室を後にした。



「怖い怖い怖い怖い!
無理無理無理無理ーーー!!!!」



ばっちり風邪をひいて、テストは散々でしたとさ。



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