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第一章 異世界だねぇ
現状、辛い
しおりを挟むどうやら昨日も使ったゲストルームは、そのまま僕の仮の部屋になるらしい。
朝食後、スイの案内で部屋に戻ると、三人のメイドと、二人の男性が居た。
メイド三人は僕の部屋付きらしい。
男性二人は御用達の服屋で、隅々までサイズを測られた。
そう言えばこちらの世界に来た時、ちゃんとサイズの合う子供服着てたよな?
直前に着てたのは、通勤に着ているトレーナーとジーンズだったのに、何故服が変わってたんだろう?
サイズを測り終え、スイが淹れてくれた紅茶を飲みながら考えていると、どうされました?と声をかけられたので聞いてみた。
「服ですか?
これは過去に召喚された方の推測なんですけれど、世界の壁を越える時頭に浮かんだ年齢や姿でこちらに来るそうです。
その思い浮かべる姿は、裸で思い浮かべませんよね?
その思い浮かべた服装や、装飾品ごとこちらで再現されている様です」
成る程、取り敢えずマッパじゃなくて良かった。
「ところでスイさん、僕コーヒーが飲みたいんですけど」
紅茶も嫌いじゃないけど、毎日缶コーヒー四、五本飲んでた者としては丸一日以上飲んでないので、そろそろカフェイン切れだ。
スイは素晴らしい笑顔を浮かべて
「お子様にコーヒーは体に毒だと伺っております」
「え?でも34歳なんだけど……」
「お子様の体には、宜しくないと伺っております」
……えー…これって身体が大人になるまで飲ませてもらえないとか?
18位の見た目になるまで約1300年?
1300年コーヒー断ち?
……マジかよ…………。
*****
さて、これからどうすれば良いのかとか、昨日今日で聞いた情報などを整理した方が良いのか?
いつまでも現実逃避してられないよな。
事態を把握しやすい様書き出そうと、スイに頼んで筆記用具を持って来てもらう。
……しかし問題発生、椅子に座ったら机に届かない……。
椅子の上にクッションを積んで、その上で正座をすると、ギリ届くんだけど、三枚積みのクッションの上の正座は危険でした……。
そして屈辱の膝抱っこ……座ったスイに抱っこされてしまった………。
これは『暖かいクッションの椅子』だ、そう、『生暖かいクッションの椅子だ』
まずは……なんだろう?
・悪戯で召喚された
・子供の身体になった
・馬鹿みたいな寿命になった
・大人の身体つきになるまで後1300年……
あ、ダメだ、心が折れた…。
思わず頭を抱えてしまう。
他の事だ、他の事。
・妖精と会話が出来る
・妖精との通訳の仕事を頼まれた
・妖精のせいで寿命が……
…………やめた。
まだ色んな事が生々しいから、今は無理だ。
「スイさん、もう結構ですので降ろして下さい」
「おや、もう良いのですか?」
それは残念だ、と言う言葉は聞こえなかった。うん。
膝から降ろして貰って、ソファーに移動する。
「そう言えば、ここがとりあえずの僕の部屋だと言われましたよね?
でもずっとここで暮らす訳にはいきませんよね。
僕はどうすれば良いのでしょう……」
王族でも無いのに城に住むなんて、出来る訳ないし、したくも無い。
家を借りて一人暮らし?
でもこの幼児体形で、果たしてまともに生活なんて出来るのかな……。
考え込んでちょっと落ち込んでいると、スイが大丈夫ですよ、と声をかけてくれた。
「まだ今確認の途中なので伝えていませんでしたけど、ウチ様が成人するまでの後見人を、英雄の家系の方にお願いする書状を各家に送っております。
返事が来てはっきり決まるまでは、と思っていましたが、不安になりますよね。
なのでお伝えさせていただきます」
「うーん?
つまりどこかの長生き英雄家系、がとりあえず面倒見てくれるって事?」
「そうなりますね。
こちらの世界の事も、まだお分かりでは無いでしょうし、ウチ様がお嫌で無ければ独り立ち以降も、いずれかの家の後ろ盾が有る方が良いかと思われます」
そりゃそうだわな。
悪戯で呼び出されて、途方も無い寿命もたらされて、右も左も分からないところで放り出されるなんて、笑い話にもならない。
「詳細が決まるまで、勿論その後も国で生活は保証させていただきますのでご安心下さい」
「宜しくお願いします」
お世話になるんだから頭を下げておこう。
「いえ、こちらの不手際なのですから、頭をお上げ下さい」
「いや、でも世話になるのだから……」
いえいえ、当たり前の事ですから、などと二人で言い合っていると、扉がノックされたので、そこで一旦話を止めた。
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