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第三章 異世界の馬車窓から
迷子の出会い
しおりを挟むさて、困ったぞ。
今現在三つの事で困っている。
困っている事その一、城下町にて、只今絶賛迷子中。
困っている事その二、迷い込んだ裏道で、怪我をした小動物を発見。
困っている事その三、どうもその小動物が、毒を持っていそうな見た目で手助けを躊躇してしまう。
さて、どうしたもんか。
*****
まずは迷子なんだけど、今日から城下町のフジ家へ行く事になっているのだが、到着してみると取り込んでいて、少し待って欲しいとの事。
なので町に出たついでにと、スイに色々案内してもらっていたところ、囲まれてしまったんだ。
何にって、女性にスイが!
綺麗な娘さんから、可愛い女の子、艶っぽい女性まで、どんどん集まって来て、弾き出された僕は、
「この辺ウロウロしてるね」
と声をかけてその場を離れた。
「お待ち下さい」
と引き止める声は聞こえたけど、護衛の騎士さんもいる事だし、高い建物の無いこの町では、どの場所からでも城が見えるから、いざとなったら城へ戻れば良いやと呑気に構えていた。
時刻は昼時、1メートルちょっとの身長の僕は、護衛の騎士さん達から見失われてしまっていた……。
でもあまり気にせずに、城へ向かって歩いていたんだけど、どこで間違えたのか行き止まりの袋小路に入ってしまう。
引き返して戻ったつもりが、人の家の庭に入り込んでいたり、突き当たったら川だったり、そうこうしているうちに城は(僕の身長では)見えなくなり、人に道を聞こうにも、いつの間にか人通りのない裏道に入り込んだようだった。
……まあ、いざとなれば妖精の力を借りれば良いんだけど、何が一番困ったかって……絶対スイに怒られる事だよな。
そしてウロウロしていたら、道の隅で蹲っている毛玉を見つけた。
最初は落し物の縫いぐるみかと思ったんだ。
だって派手なオレンジ色しているから。
でも微妙に動いているように見えて、近づいてみると毛玉が動いた。
立ち上がっただろう(毛が長くて足が見えないけど立ったと思う)その毛玉は毛の長い小型犬……マルチーズっぽい。
でも違う点がいくつか。
目が細く、柄なんだろうけど、眉毛が有る。
その上鳴き声が、
『ピヨピヨピヨ』
ひよこかよ。
さらにその脚はどう見ても爬虫類系の形態だ。
爪も鋭い。
それから毛色も犬ではあり得ない色だ。
細い目で困ったようなハの字眉、その情けな……ゴホン、気の弱そうな……いや、気の良さそうな顔を見て僕の口から出たのは、
「熊澤さん」
以前の職場で、園長の下で働いていた五十代の男性職員の顔が脳裏に浮かぶ。
何時も身勝……大らかな園長の尻ぬぐ………フォローと、ワガマ……自由奔放なバイトの間に入って、困った顔をしつつも、怒る事も声を荒げる事もなく、仕事が円滑に行えるように頑張っていた先輩が思い出された。
胃を悪くして何度も入院していたよなぁ、熊澤さん大丈夫かなぁ。
などと思い出しながら、その生き物を見ていて気付いた。
「お前怪我してるのか?」
僕の方を気にしながら、しきりに舐めている後脚に血が滲んでいる。
これは保護した方が良いんだろうけど、僕が近づけない理由が、もしあの脚が表すように、この生き物が爬虫類だとすると、色が問題ある気がするんだよね。
その生き物はとても鮮やかなオレンジ色で、ミミや脚先が黒の派手な色合いなんだ。
確か爬虫類などで派手な色合いって、警告色な場合が多かった気がする。
もしあの鋭い爪に毒なんか有ったら、その爪で引っ掻かれたら目も当てられない。
しかも相手は手負いの獣なのだ。
小動物とは言えど、身長1メートルちょっとの僕からしたら、全長50センチはありそうなその生き物は、かなり大きく感じる。
さてさて、どうしたもんかな。
暫く考えたけど、やはりこのまま放って置く訳にもいかず、
「いいか、今から抱っこするけど、危害は与えないから大人しくしてくれ。
怪我をしているから、怪我を治してくれる人を探して連れて行ってあげるから。
絶対助けてあげるから、大人しくしてくれよ」
穏やかな声を心がけて、話しながらゆっくり近く。
相手はじっと僕の方を見ているが、警戒している様子は無いようだ。
目の前まで行ってもじっとしているので、しゃがんで顔の前に下から手を出す。
するとマルチーズ擬きは鼻先を近づけ、ペロリと指を舐めてきた。
どうやら大丈夫な様だ。
やっぱりこれって僕の体質のおかげだよな、など考えながら、上着を脱ぎ、そっとマルチーズ擬きを包み込み抱き上げた。
腕の中でその子は僕の顎をペロペロ舐める。
懐かれたかな?
よし、スイを探して獣医さんの所へ連れて行ってもらおう。
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