95 / 161
第三章 異世界の馬車窓から
初代様の記録〜其の伍〜
しおりを挟む協力するにも、我等は何も知らぬ。
この地の事も敵の事も何一つ知らぬでは策の建てようよない。
近隣の地形などを示した図を見ながら、相手の布陣なども聞くが、やはり一つ処に集まっておるだけの様だ。
これで戦さと呼べるのであろうか。
余程これまで戦さとは無縁だったと言うところなのであろうな。
「して、先程の術とやらは我等も使えるのか?」
「【人に祝福を与えし妖精の術】ですか?
種類は違いますが、祝福さえ受けていれば、その祝福をもたらす妖精の【人に祝福を与えし妖精の術】を使う事が出来ます」
王に尋ねてみたのだが、長くてかったるい。
「……長いのう、【妖術】で良かろう」
我が言うと、先程術を放ってみせた男が息を飲む。
「長いとか短いとかの問題ではありません!
妖精の協力無くして我々には魔物に立ち向かう術(すべ)は無いのですよ!
不興を買ってしまうでは無いですか!
「煩いのう、不興も何も此奴ら愉快そうに笑いながら舞っておるでは無いか」
我の周りを漂う小さき者を指すと、その男は驚いた顔をして詰め寄って来る。
「あ……貴方は妖精の姿が見えるとでも言うのですか⁉︎」
「見えるも何も、そなたにはこの羽を生やして飛んでおる幼子共(おさなごども)が見えぬのか?」
他の者共を見てみるが、どうやら我以外にはこの小さき者は光の塊にしか見えぬ様だ。
「王以外に見える者が居るとは……」
男の呟きに伴が口を挟む。
「上様は日の本を統べるべき方ですからね。
俗民の見えぬものを見るのも当然の事です」
何故か此奴が誇らしげな顔をするのは良いが、話が進まぬでは無いか。
先程の事を思い起こしてみれば、小さき者の力を引き出すとの事であろう。
使える妖術は千差万別のようだが、どうやって推し量るべきかと考えておると、周りを漂う赤き者が肩に乗り、こちらを見上げる。
言葉は通じずど、何やら想いが伝わって来る…ような気がする。
身体の奥底に熱い何かが感じられ、我は窓辺へ歩み寄り、右手を差し出し心のままに動いてみる。
「……火よ…」
右手を突き出し、身体の中の熱を撃ち放つ。
掌の上に現れた火の玉は、前方へと飛び出して行った。
ふむ、感覚はわかった。
なれば熱いものとは別に感じる弾ける様なこの感覚は…。
手を天空に翳し感覚のまま、感じる力を振るう。
「雷(いかずち)よ」
天空より稲光と共に雷が空を割く。
面白いのう、なれば次は、
「闇よ」
指す方角が闇に包まれる。
「ほほぅ、これは面白い、全ては思うままか。
まだ別の力も感じるが、それが何かはわからぬの。
わからぬものはどうすればよいのだ?」
問いながら振り向くと、皆一様に顔色を無くしておる。
先程我に難癖をつけてきた男などは、蒼白になり震えておる。
「ほ……他にもですって?」
「ああ、後二つ程力を感じるのお」
我の言葉に更に酷く震えたかと思うと、今度は顔を真っ赤にして怒鳴りだした。
「なんなのですかこれは!
私は王と同じ二つもの祝福を受けた一番の術師ですよ!
それなのに何故こんな異世界の得体の知れぬ者が、この私より祝福を受けるのですか!
神が私を認めたから、妖精も二つの祝福を与えてくれたのでしょう?
何故その私より……こんなふざけた話納得いきません!
私が一番なのです!
私が誰よりも優れていなければ可笑しいでしょう!
私が……私が……」
「…此奴何を言っておる?」
様子のおかしくなった男に言うと、男は更に赤くなり、声を張り上げる。
「この異界人が!
我に祝福を与えし妖精よ!我のプライドをコケにするこの男に裁きを!
ウインドアロー!」
目に見えぬ風の矢を放って来るが、身体の動くまま、術を放ってみる。
「時よ」
我が術を発すると、喚いておった男と共に、風の矢はその動きを止めた。
ふむ、不明な術の一つは時を操るものか。
我が納得しておると、意識を取り直した王が指示し、止まったままの男を部屋の外へと連れ出させた。
部屋の中はしんと静まり返っておる。
煩くなくなり良い事だ。
2
あなたにおすすめの小説
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
<完結>溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
本編完結済み。
続きのお話を、掲載中です。
続きのお話も、完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる