【完結】英雄召喚されたのに色々問題発生です【改訂版】

七地潮

文字の大きさ
97 / 161
第三章 異世界の馬車窓から

初代様の記録〜其の漆〜

しおりを挟む

雨足は激しくなり、兵供の気配を消す。

敵の総数二百程、全てがひと塊りに纏まっておる。

我の闇の術で姿を隠し、敵陣の間近まで寄り合図を待つと、程なく、右翼と左翼が同時に奇襲を仕掛ける。

敵兵がそちらへ散るのを待ち、敵大将の元へと背後より忍び寄り、一気に制圧する。

勿論反撃は有ったのだが、我のもう一つの術なのだろう、見えぬ壁の様な者で周りと切り離され、敵の攻撃は我には届かぬ。

「主らの大将は捕らえた、武器を収めよ!
刃向かわねば危害は与えぬ。

こちらは会合を求めておる故、大将を招きたいだけである。
勿論会合が終われば大将は解放する故、すぐさま武器を収めよ」

我の口上に敵方はざわめくが、仕方のないことだ。
大将を抑えた奴の戯言などすぐさま聞けるわけがない。

「……皆、武器を捨てろ。
この人の言う通りにするんだ」
我に囚われておる大将が、落ち着いた声で周りを制す。

「大丈夫、この方は私に危害を加える事はない。
武器を捨てるんだ」
「…ほう、我の言葉を信じるか?」
問うてみるとそ奴は、
「ええ、信じられます。
貴方から嘘は感じられませんから」
肝の座った奴よ。

周りの者が武器を手放すのを確認した後、敵将を誘(いざな)う。

「この国の主人(あるじ)が話をしたいと申しておる。
付いてまいれ」

我の言葉に周りの妖供が引き止めようとするが、我の妖術なのか、近づく事が出来ぬ。
近づけぬが周りを隙間なく取り囲まれるのは煩わしい。

我は遠くに見える大木に狙いを定め、渾身の力を込め大雷(おおいかずち)を落としてみせる。

「我等が妖術なら貴様らを一掃するのは容易き事為れど、この国の主人は貴様らを滅ぼす事なく和平を望んでおる。
その甘くも面白き考え故に、我も力を貸しておる。
無傷で戻す事を違わぬ故、道を開けよ」

我が言葉を発すると、暫しの後妖供が割れ道ができる。
伴を走らせ、右翼左翼供に兵を下がらせる。
町の入り口付近に待機させ、敵大将と副将を城へと連れ戻る。

城で王が捕虜ではなく、客人として持て成し、話し合いをしておる。

戦いに至った経緯は自分らの住む土地確保の為、妖供を有無を言わせず一方的に追いやった事が発端だと、王が非を認める。

先住しておる妖供を人とは違う姿をしておる事を理由に、話もせず、数に任せ蹂躙した事は先祖の過ちだと頭を下げよる。
下げられた妖供は唖然とした顔だ。

如何なる世界でも戦さの発端などは限られておる。
住む土地を求めて、豊かな収益を求めて、手駒になる人員確保、主な所はそんなものだ。

後は力の誇示だが、此奴らの祖も、国を追い出され、豊かに住める土地を求めていたのであろうが、先住するものを追い出しただけで、のちの策も為さず、遺恨だけ残した結果がこの戦さの始まりだと、話を聞いておりわかった。

相手が妖だから、相手が人だからと、話をしても通じるわけがないと、実力行使に出るのは愚策と思い悩む王に、何かしらの助力があり、小さき者の力を借りるに至ったと言う経緯らしいな。

「ですから、私としてはお互いの定住地を犯す事なく、交流をし、供に生きていけないのかと思うのです」

相変わらず甘い。

「しかし、住人が増えればまた住む土地欲しさに我等を追いやるのでは?」
妖の言うのも最もだ。

「この大陸は広い。
人の住む土地など、未開の土地に比べれば一握りも無いです。
にもかかわらず、開拓の手間を惜しみ、手軽だからと先住されている貴方方の土地を奪った先祖たちの愚行が始まりです。
ですから、私はこの地より南へ人が踏み込まない様この地を人の住む最南端の地とする事を誓います」





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

忘れ去られた婚約者

かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』 甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。 レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。 恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。 サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!? ※他のサイトにも掲載しています。 毎日更新です。

お久しぶりです旦那様。そろそろ離婚ですか?

奏千歌
恋愛
[イヌネコ] 「奥様、旦那様がお見えです」 「はい?」 ベッドの上でゴロゴロしながら猫と戯れていると、侍女が部屋を訪れて告げたことだった。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

<完結>溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。 本編完結済み。 続きのお話を、掲載中です。 続きのお話も、完結しました。

処理中です...