【完結】英雄召喚されたのに色々問題発生です【改訂版】

七地潮

文字の大きさ
104 / 161
第四章 そしてこれから

賢者の意思を伝える石

しおりを挟む

問われるままに答えていると、暫しの沈黙が訪れた。

自分に問いかけてきたものは何なのだろうと思っていると、再び意思が伝わってきた。

『理想を語る者よ、良かろう。
我が眷属の力を貸そう。
汝と汝の国民の幾人かに妖精を遣わそう。
妖精の術と寿命を受け取るが良い。

魔物と共存すると言うのなら、魔物と添い遂げる事も許そう。
人と魔物で思うままの国を作るが良い。

妖精を住まわす事により、異なる世界より窮地を救う者を喚び出す事を許そう。
人と魔物と異世界の者とで力を合わせるが良い。

そなたの国に害なす者をその地に根付かせぬ加護を与えよう。
そなたの国の民が末永くその地にあるように、全ての民に心の繋がる伴侶を与える事にしよう。

そなたにも良き出会いがある。
そなたと、その子孫がこの国を治めていくが良い。

我はそなたとそなたの国に複数の加護を与えよう。

但し、国を治める者は必ず人とする事。
人が治め、魔物との架け橋となる事。

そなたの子孫が意思を背かぬ限り、我の加護は続く事を約束しよう。

そして、多くのものが心安らかに過ごせる国になる様に努めよ』

……あなたは神なのですか?

『我は世界を見守るもの。
正しくあろうとする者に加護を与えしもの』

…私は正しいのでしょうか?
もしかするとただのエゴなのではないのでしょうか?

『正しいかそうでないかを決めるのは後の世の者。
我は今のそなたの想いに加護を与えよう。
そなたの願いが後(のち)に正しく伝わるよう、記録の石を授けよう』

……ありがとうございます。
いただいた加護に恥じぬ様、私の出来る事を成したいと思います。
見守っていてください。

『ラグノルに祝福を』

光は消え、元の場所へ戻ってきた。
今のが夢でない証拠に、手の中には卵ほどの仄かに暖かな石があり、周りに小さな魔物……妖精がふわふわと漂っている。

「私は神に会ったのか?」

信じられない事ではあるが、現実なのだと理解し、私はこの記録の石に今の出来事を、忘れないうちに刻んでおく。

数多き祝福を授かった国が、長きに渡り良き国となるように。
そして、私の子や子孫に、この出来事を、この国のあり方を忘れない様に、願いを込めて……】


*****


その後、召喚する事を家臣に伝えて一悶着、召喚して一悶着、賛同できない人々は国を出て行って、祝福を受けた王様、タシ・テス・ヤカは、当時の妖精王と女王の祝福で、二百年近く生きていたみたいだ。
その間に子供や孫、曽孫の方が先に寿命を迎えたのが、とても辛かったと。
そりゃあそうだろうな。

でも、ヤカ王の生きている間に、魔物との共存が確たるものになったのは、喜ばしい事だったとある。

王としては凄い事を成し遂げたのだろうけど、身内の死を二百年近く見てきたのはキツイだろうな。

王の奥さんは国の事、民の事を考える、とても良い王妃だったそうだ。
けれど、祝福を受けていない人間だったので、早くに亡くなったそうだから、余計に辛かったろう。

そう考えると祝福を受けた人は、同じく祝福持ちか、魔物と一緒にならないと、寂しい老後どころでなく、人生の大半を一人で過ごす事に……。
その上、子供や孫の王達が、亡くなる前にヤカ王に、
「先に逝きます」
的なメッセージ残してるって……僕なら心折れそう。

そんなヤカ王を支えたのが、召喚された英雄達と妖精、そしてどんどん明るい笑顔になる国民だったそうだ。

強い意思を持ってないと、途中で挫けそうだよなぁ。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

悪役令嬢まさかの『家出』

にとこん。
恋愛
王国の侯爵令嬢ルゥナ=フェリシェは、些細なすれ違いから突発的に家出をする。本人にとっては軽いお散歩のつもりだったが、方向音痴の彼女はそのまま隣国の帝国に迷い込み、なぜか牢獄に収監される羽目に。しかし無自覚な怪力と天然ぶりで脱獄してしまい、道に迷うたびに騒動を巻き起こす。 一方、婚約破棄を告げようとした王子レオニスは、当日にルゥナが失踪したことで騒然。王宮も侯爵家も大混乱となり、レオニス自身が捜索に出るが、恐らく最後まで彼女とは一度も出会えない。 ルゥナは道に迷っただけなのに、なぜか人助けを繰り返し、帝国の各地で英雄視されていく。そして気づけば彼女を慕う男たちが集まり始め、逆ハーレムの中心に。だが本人は一切自覚がなく、むしろ全員の好意に対して煙たがっている。 帰るつもりもなく、目的もなく、ただ好奇心のままに彷徨う“無害で最強な天然令嬢”による、帝国大騒動ギャグ恋愛コメディ、ここに開幕!

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

処理中です...