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チートですか?
しおりを挟む『あれ?俺やっちまった?』
ベルアルムの話を聞いて内心焦る俺。
「神官見習いの者が受け取り、私に持って来たのですが、前回の魔石の付与と言い、貴女には何か特別な力があるのではないのですか?」
ベルアルムが微笑みながらも、真っ直ぐこちらを見ている。
「それは以前ビアトゥール様の前で、偶然だったと実証してみたのではないのですか?」
兄が庇ってくれるけど、ベルアルムは視線を逸らさない。
「そうですね、あの時は偶然だと思いました。
しかしこの二つは間違いなく、サリフォル嬢の作品ですよね?」
それは間違い無いので頷くと、少しだけ視線が柔らかくなった。
「別に責めているわけではありません。
体に障るといけませんから、楽にしてください」
そう言われて「はいそうですね」なんてリラックスできるわけない。
「ただお話をお伺いしたいだけなのです。
この二つを作る時と、魔石の付与の時に何を考えていたのか、共通の点がないか、思い出していただけませんか?」
共通点………俺何を考えてたっけ?
当時のことを思い返してみる。
兄のプレゼントの時は……頑張る兄を応援したいとか?
頑張り過ぎて過労死しないかとかだっけ?
正直あんまり覚えていない。
花瓶敷きの時は……
以前の俺ん家では母親も姉貴も花を飾るなんて習慣はなく、花は生活から離れている物だった。
携わるとすれば、祖父母の墓参りの仏花か、高校の時、クラスメイトがバイクで事故死した事故現場に、献花した時くらいかな。
だから俺にとって花とは、【死者に手向ける物】だ。
でも、墓参りの時にせよ、事故現場にせよ、切り花はすぐ枯れてしまうから、枯れた花を見るともの寂しい気持ちになったよな。
花が長持ちすれば良いのに。
次の花を供えるまで咲き誇っていてくれると、死者も寂しくないだろうな………とか考えてたっけ?
燭台敷きの時は…ロウソクとか炎って命と関連して思い浮かべることって多いよな。
命の灯火って言葉もあるし。
確か命のロウソクって話なかったっけ?
何パターンか【命】や【寿命】と【ロウソク】を掛け合わせた話があったような?
人魚の赤いロウソクとかもラストは村が全滅するとかじゃなかったっけ?
何にせよロウソクが消えるのって縁起がよろしくないみたいだから、長持ちすれば良いよね。
消そうとするまで消えなきゃ良いのに………………とかなんとか考えていたような?
共通点…【死】をイメージすることから逃れると言うか、長生き(長持ち)するようにって思いがこもってた?
王子のことを考えて付与した時は、命に関する事は考えていなかった…よね?
だから普通の付与だったの?
「共通する事で思い当たるとすれば、命を長く繋ぐ事…でしょうか?
死から遠ざかるイメージを思い描いていたかもしれません」
それ以外に思い当たらないし、コレって俺が死んだ記憶を思い出したからってのが関係しているのかな?
そこまでは言えないけど、言葉にして告げてみると、ベルアルムは一つ頷くと、持っていたバックから小瓶に入った水と小皿、小さな空(から)の魔石を取り出した。
小瓶の中身は聖水かな?
「こちらに聖水と魔石をお持ちしました。
今一度試してみて頂きたいのですが、身重の方に無理は言いたくありません」
どうされるかは貴女が決めて下さい、なんてベルアルムは言うけど、検証しなけりゃいけない流れじゃないの、これ。
側のソファーに座る兄とリズヴァーンに目を向ける。
リズヴァーンは黙ったままだけど、兄はベルアルムに俺の代わりに聴いてくれた。
「検証するとしてその結果、キャスティーヌに特別な付与の力が有ったとしたら、貴方はどうなさるつもりか聞かせて頂きたい」
そうそれ。
もし、このなんだか微妙な付与が、チート(とも言えない)スキルだったら、俺ってもしかして【延命の付与の聖女サマ】とか何とかになっちゎったりしちゃったりして?
イヤ~~~~!!!
「実は…今回の話は、私のところで止めているのです」
え?神殿が俺を利用しょうとかそんな感じじょないの?
「見習いの者にも、これらを持ち込まれたお二人にも、口外しないようにと伝えております」
え?んじゃ何でここに来たの?
検証しようとしてんの?
「それなら検証する必要もないのでは?」
そうだよね、さすがシスコンサマ、俺が嫌がりそうな事からは、キッチリ守ってくれる。
ベルアルムは暫く考え込み、顔を上げてニッコリ笑った。
ん?さっきまでと笑顔の質が違うような?
「正直に申し上げましょう。
好奇心です」
ヲイ!!!
「私、知らないことを知るのが好きなのです。
知らないこと、わからないこと、疑問に思ったことをそのままにしておくのが嫌なのです。
もし、キャスティーヌ様に付与を与える力が有ったとしても、一般の方には少なくとも、神官なら誰でもできることです。
多重付与は珍しいけれど、できる者がいないわけでも有りません。
ですから、何かをしようと言うわけではありません。
ただ、本当に多重付与ができるのか、お守り刺繍で付与魔石程の効果が出せるのか、それが知りたいだけなのです」
……おーい、知的好奇心満たしたいだけなのかよ!
え?マジでそれだけ?
本当に神殿へ拉致とか、力尽きるまで付与をやらされるとか、そんなの無しなの?
つーか俺の能力って、好奇心満たすだけの【チート】ではなくほんの【ちっと】の能力なの?
えーーーーーー…。
いや、スッゴイチートとか有って、色々な騒動に巻き込まれたいとか、そんなんじゃないよ。
平穏無事が一番だよ?
でも【転生者】としては、こう…さあ……人々が羨むというか、沢山の人に引っ張りだこにされるような能力があるモンなんじゃないの~?
なんだよ、ガッカリだよ、何て心の中で言ってる間に、兄が話を進めていく。
「キャスティーヌに何かをさせようというのではないと?」
「はい、これからも第三者に漏らすことはありません」
「キャスティーヌの不本意なことはさせたくないのだが」
「強制はしません。
ただ俗世にもこんなに素晴らしい方が居るのだと確信したいのです。
そしてできるなら、一般の方でもここまでできるのだから、神に使える者としては、精進し同じレベルまで行けるように努力するための教材として使わせていただけるとありがたいです」
「そこからバレればキャスティーヌが騒動に巻き込まれるのでは?」
「勿論彼女の事を公にすることは絶対にしません」
「それを保証できるのか?」
「信じていただくしかないです」
「貴方を信じろと?」
「私個人が信じられないのなら、私の信仰心を信じていただけませんか?」
あー、置いてけぼりで話が進んでいる。
まあ楽だけどね。
だって兄が俺…キャスティーヌの振りになる事を、絶対にするわけないからね。
絶対に。
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