微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸

文字の大きさ
18 / 54

【第18話:お守り】

しおりを挟む
 オックスさんと別れたあと、オレたちは予定通りに武器屋に来ていた。

「フォーレスト! これはどうかしら? 凄くカッコイイわよ! あっ!? こっちのもいいわね!」

 ただ、フィアが武器を見てここまではしゃぐのは予定外だったが。

「ごめんなさい。お姉ちゃん、昔、お兄ちゃんに武器屋に連れてって貰うのが大好きだったから」

「お兄ちゃん子だったんだな。ロロアはそうじゃないのか?」

「うん。武器屋はどっちかと言うと苦手で……」

 姉妹なのに二人の性格はかなり正反対だよな。
 でも、それでうまくバランスがとれているように思えるから不思議だ。

「もし苦手なら外で待っているか? ここの店の向かいに雑貨屋と服屋があっただろ? そこで待っていたらどうだ?」

「え? でも……お姉ちゃん、ちょっと暴走気味だし」

「ははは。気にしないでいいって。オレが何とかするから」

「わかりました。じゃぁ、お言葉に甘えて、向かいの店に行ってますね!」

「剣を買ったら迎えに行くから、適当に時間を潰しててくれ。そんなに時間はかからないだろうから」

 と、思ってた時がオレにもありました……。

「ねぇねぇ! やっぱりこっちの剣の方がよくない? あ、それからおじさん! こっちの槍、ちょっと触らせて貰っていいですか?」

「い、いや……さっき薦めてくれた剣でいいんじゃないか?」

「そう? あ、そっちの槍じゃなくて、その隣のです!」

 まさか武器屋で、女性の買い物の長さというのを思い知ることになるとは……。

 でも、ロロアを一人で雑貨屋に向かわせてから結構時間が経ってしまったな。
 フィアには悪いが、この剣を買ったら先に店を出るか。

「フィア! オレ、この剣を買う事にするよ。それで、ロロアが向かいの雑貨屋で待ちくたびれてると思うから、先に行っているぞ?」

「え? ロロア雑貨屋に行ってるの?」

 え……気付いてなかったのか……。

「あ、あぁ。オレは先に行くけど、フィアはしっかり見てからでいいから」

 フィアが使っている槍もだいぶんガタが来ていたので、買い替えるみたいだ。
 それなら本当に納得したものを選んでもらった方が良いからな。

「ん~。悪いけどそうさせて貰うわ。武器だけは妥協したくないの」

「わかってるって。今度の依頼は、フィアが一番大変な役なんだから、しっかり選んでくれ」

 結局オレは、それなりの剣を買い、ロロアを待たせてある雑貨屋へと先に向かったのだった。

 ◆

 雑貨屋に入ると、ロロアが何やら悩んでいる様子が目に入った。

 よく見てみると、たくさんの小さな水晶石に糸を通して作ったブレスレットを、真剣に見入っているようだ。
 水晶石はとても綺麗だけど、手頃な値段で有名だ。庶民の宝石とも言われており、守り石としてお守り代わりに持つ人も多い。

「水晶石のブレスレット?」

「あ……フォーレストさん! 来られてたんですね。気付かなくてすみません!」

「いや、待たせて悪かったな。フィアが槍を買うって言いだしてな」

「やっぱり……。でもお姉ちゃん、前からそろそろ新しいのを買うってお金を貯めてたから、仕方ないですね」

 前から買い替えを考えてお金を貯めていたのなら、じっくり選ばせてあげないといけないな。

「ところで、ロロアは何を悩んでいたんだ?」

「えっと……その、お守り代わりにこういうのも良いなぁって思って」

 やっぱりお守りとして見てたんだな。
 オレも気になったので手に取って見てみると、お守りとしてだけでく、丁寧な作りをしており、アクセサリーとしても凄く綺麗だ。

「良さそうな品じゃないか。これ、パーティー結成記念って事で、オレからロロアとフィアの二人にプレゼントさせてくれ」

 今のオレにとっては手頃な値段だし、お守り代わりに二人にプレゼントするのも良いだろう。

「えぇぇ!? だ、ダメですよ! 私、そんなつもりで見てたんじゃないですし、その、あの……そこそこお値段もしますし!」

「いいんだ。昨日少し話したと思うけど、国からたくさんの懸賞金が出ているんだ。オレと二人を結んでくれたのはお兄さんのお陰だろ? お兄さんもお守り持たせてあげたいと思ってると思うぞ?」

「そ、そんな……ずるいですよ」

 そこからも少し渋っていたロロアだったが、強引にオレが店員を呼んで購入してその場で渡してあげると、最後は凄く喜んでくれた。

「あの……大事にしますね! ありがとうございます!」

 ちょうどその時、向かいの武器屋からフィアが出てくるのが見えたので、オレたちも雑貨屋を出ることにした。

「お姉ちゃん!」

「ん? ロロアどうしたの? えらくご機嫌だね?」

「そういうフィアはあまりご機嫌には見えないが、結局槍は買わなかったのか?」

「うん。良い槍だったんだけど、私にはちょっと長すぎたの……」

 話を聞いてみると、気に入った槍が二本とも、長くてフィアには扱いきれなかったらしい。
 フィアは女性としては背が高い方だと思うが、それでも男としては少し小柄なオレと同じぐらいなので、そういう事も多いそうだ。

「それは残念だったな」

「うん。王都には他にも何件か武器屋はあるし、今度また見てまわってみるわ」

「そうか。まぁ、槍は残念だったが、代わりにこれで機嫌直してくれ」

 オレがロロアにあげたのと同じ水晶石のブレスレットを渡してあげると、目に見えて狼狽えだした。

「え? え? な、なに? 綺麗だけど……え? え?」

「ロロアが見つけたんだが、お守りに良さそうだから買ったんだ。パーティー結成記念ってことでプレゼントさせてくれ」

「ねぇねぇ! お姉ちゃんも付けてみて♪」

「え、で、でも……本当に良かったの? あ、ありがと……」

 普段は結構男勝りな感じだが、やはりこういう物は好きなんだな。
 姉妹でお揃いのブレスレットをして喜んでいる姿を見ると、どうやら贈った甲斐があったようだ。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

パーティーの役立たずとして追放された魔力タンク、世界でただ一人の自動人形『ドール』使いになる

日之影ソラ
ファンタジー
「ラスト、今日でお前はクビだ」 冒険者パーティで魔力タンク兼雑用係をしていたラストは、ある日突然リーダーから追放を宣告されてしまった。追放の理由は戦闘で役に立たないから。戦闘中に『コネクト』スキルで仲間と繋がり、仲間たちに自信の魔力を分け与えていたのだが……。それしかやっていないことを責められ、戦える人間のほうがマシだと仲間たちから言い放たれてしまう。 一人になり途方にくれるラストだったが、そこへ行方不明だった冒険者の祖父から送り物が届いた。贈り物と一緒に入れられた手紙には一言。 「ラストよ。彼女たちはお前の力になってくれる。ドール使いとなり、使い熟してみせよ」 そう記され、大きな木箱の中に入っていたのは綺麗な少女だった。 これは無能と言われた一人の冒険者が、自動人形(ドール)と共に成り上がる物語。 7/25男性向けHOTランキング1位

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

お前を愛することはないと言われたので、姑をハニトラに引っ掛けて婚家を内側から崩壊させます

碧井 汐桜香
ファンタジー
「お前を愛することはない」 そんな夫と 「そうよ! あなたなんか息子にふさわしくない!」 そんな義母のいる伯爵家に嫁いだケリナ。 嫁を大切にしない?ならば、内部から崩壊させて見せましょう

金喰い虫ですって!? 婚約破棄&追放された用済み聖女は、実は妖精の愛し子でした ~田舎に帰って妖精さんたちと幸せに暮らします~

アトハ
ファンタジー
「貴様はもう用済みだ。『聖女』などという迷信に踊らされて大損だった。どこへでも行くが良い」  突然の宣告で、国外追放。国のため、必死で毎日祈りを捧げたのに、その仕打ちはあんまりでではありませんか!  魔法技術が進んだ今、妖精への祈りという不確かな力を行使する聖女は国にとっての『金喰い虫』とのことですが。 「これから大災厄が来るのにね~」 「ばかな国だね~。自ら聖女様を手放そうなんて~」  妖精の声が聞こえる私は、知っています。  この国には、間もなく前代未聞の災厄が訪れるということを。  もう国のことなんて知りません。  追放したのはそっちです!  故郷に戻ってゆっくりさせてもらいますからね! ※ 他の小説サイト様にも投稿しています

偽聖女の汚名を着せられ婚約破棄された元聖女ですが、『結界魔法』がことのほか便利なので魔獣の森でもふもふスローライフ始めます!

南田 此仁
恋愛
「システィーナ、今この場をもっておまえとの婚約を破棄する!」  パーティー会場で高らかに上がった声は、数瞬前まで婚約者だった王太子のもの。  王太子は続けて言う。  システィーナの妹こそが本物の聖女であり、システィーナは聖女を騙った罪人であると。  突然婚約者と聖女の肩書きを失ったシスティーナは、国外追放を言い渡されて故郷をも失うこととなった。  馬車も従者もなく、ただ一人自分を信じてついてきてくれた護衛騎士のダーナンとともに馬に乗って城を出る。  目指すは西の隣国。  八日間の旅を経て、国境の門を出た。しかし国外に出てもなお、見届け人たちは後をついてくる。  魔獣の森を迂回しようと進路を変えた瞬間。ついに彼らは剣を手に、こちらへと向かってきた。 「まずいな、このままじゃ追いつかれる……!」  多勢に無勢。  窮地のシスティーナは叫ぶ。 「魔獣の森に入って! 私の考えが正しければ、たぶん大丈夫だから!」 ■この三連休で完結します。14000文字程度の短編です。

【完結】転生の次は召喚ですか? 私は聖女なんかじゃありません。いい加減にして下さい!

金峯蓮華
恋愛
「聖女だ! 聖女様だ!」 「成功だ! 召喚は成功したぞ!」 聖女? 召喚? 何のことだ。私はスーパーで閉店時間の寸前に値引きした食料品を買おうとしていたのよ。 あっ、そうか、あの魔法陣……。 まさか私、召喚されたの? 突然、召喚され、見知らぬ世界に連れて行かれたようだ。 まったく。転生の次は召喚? 私には前世の記憶があった。どこかの国の公爵令嬢だった記憶だ。 また、同じような世界に来たとは。 聖女として召喚されたからには、何か仕事があるのだろう。さっさと済ませ早く元の世界に戻りたい。 こんな理不尽許してなるものか。 私は元の世界に帰るぞ!! さて、愛梨は元の世界に戻れるのでしょうか? 作者独自のファンタジーの世界が舞台です。 緩いご都合主義なお話です。 誤字脱字多いです。 大きな気持ちで教えてもらえると助かります。 R15は保険です。

普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜

神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。 聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。 イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。 いわゆる地味子だ。 彼女の能力も地味だった。 使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。 唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。 そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。 ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。 しかし、彼女は目立たない実力者だった。 素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。 司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。 難しい相談でも難なくこなす知識と教養。 全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。 彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。 彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。 地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。 全部で5万字。 カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。 HOTランキング女性向け1位。 日間ファンタジーランキング1位。 日間完結ランキング1位。 応援してくれた、みなさんのおかげです。 ありがとうございます。とても嬉しいです!

処理中です...