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第一章
第1話:ダンジョンができました
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今日と明日は仕事も休み。
少し遅い朝飯を食べながらテレビをつけると嫌なニュースが映し出された。
「またダンジョンブレイクが起こったのか……」
この世界にダンジョンができて三〇年。
オレが五歳の時、突然世界中で異空間に繋がる不思議なゲートが出現した。
まだ小さかったので記憶は曖昧だが、すごい騒ぎだったのだけはよく覚えている。
「朝から晩まで特番ばかりで、好きなアニメが放映中止になって泣いてたな……」
なにか良くないことが起こったと、テレビの画面越しに感じていたのもあるのかもしれない。
そんな風に日本がただただ大騒ぎしている間に、海外では数日後には軍が中心になって調査団を結成。
競うようにダンジョンへと突入していった。
ちなみにこの当時はダンジョンとは呼ばれていなかったと思うのだが、小さかったので覚えてない。
調査が進み、情報が出揃ってきて明らかになったのは、中が異空間になっていること。
そして……現実の世界にはいないはずの異形のものたちの存在だった。
魔物だ。
徐々に調査が進んでいき、動物を元にしているようなものから、ファンタジーの世界ではおなじみのゴブリンやオークなど、さまざまな種類の魔物が確認されていった。
物語やゲームの中だけの存在が現れたことに世界は騒然となった。
ただ、ファンタジーが現実になったと喜んでばかりもいられないことがすぐに判明する。ダンジョンの中では電子機器がほぼ動作しない上に、魔物に銃器や薬品、炎などの攻撃がいっさい効かなかったからだ。
その上、ほとんどの魔物は人を見れば襲いかかってくる。
まるでそういう行動を義務付けられているかのように。
その後、さまざまな検証の末にわかったのは、魔物は魔力を纏っており、魔力が込められていない攻撃は魔力の膜がすべて防いでしまうのだとか。
そのため、人体から自然に発せられる魔力を通す素材で出来た武器を手に持って戦う近接戦闘を余儀なくされた。もちろん苦しい戦いを強いられることになったのは言うまでもなく、多くの国で調査団に大きな被害が相次いだ。
そしてこの情報がもたらされたことで、日本の対応は遅れに遅れることになる。
この当時はまだダンジョンの中から有用な素材なども見つかっておらず、調査団を送り込むメリットがないと慎重派、反対派が優勢となったのだ。
その結果、消極的な対応をし続けた日本のダンジョンが、世界で一番最初に……ブレイクした。
正式名『ダンジョンブレイク』。
それは異空間となっている世界『ダンジョン』から、我々の暮らすこの世界へと魔物が溢れ出す現象のことをさす。
日本で調査がまったく行われなかったことでダンジョン内の魔物が増え続け、ゲートから魔力が溢れ出して周囲に魔力が充満。最終的にゲートが壊れ、中から一気に魔物が溢れ出したのだ。
しかも日本に出現した多くのダンジョンでほぼ同時多発的に……。
最終的に米軍の助けを借りて収束するまでにひと月を要し、犠牲者は一〇万人を超えた。
この時にオレの両親も……。
「……嫌なニュースのせいで、つい昔のことを思い出してしまったな」
その後、爺ちゃんに引き取られ、超がつくど田舎で育てられた。
真面目だったらしい両親とは違ってなかなかに破天荒な性格だったが、やさしくて楽しい人だった。
その爺ちゃんも大往生の末に、数週間前、その生涯に幕を下ろした。
他に親戚もいないので爺ちゃんから田舎の家を受け継ぎ、今日は今住んでいる賃貸マンションから久しぶりにその家に向うことになっていた。
「ばぅ!」
「お。だいふく、起きたのか?」
だいふくってのは、今のペット可のマンションに引っ越してから飼い始めた愛犬の名前だ。どうやら朝飯をよこせと言っているようで、ご飯の器を咥えている。
犬種はパグ。
そこまで太ってないのにすっげー丸っこい。丸すぎて転がるんじゃないかってたまに心配になるぐらいまん丸だがパグだ。
血統書もあるから間違いない。
肝が座っているのか何ごとにも動じない性格の子で、爺ちゃんがこいつは将来大物になるって笑いながらよく言っていた。大物になるパグってなんだよ……。
そうこうしているうちに、いい時間になったのでだいふくを連れて家を出た。
爺ちゃんの家までは車で約一時間半。
ぽつんと一軒家って感じで周りには他に家はなく、電車どころかバスも通っていないので、車で向かうことになる。
車は爺ちゃんの乗っていた軽トラ。
しかもフルカスタムのめっちゃ厳ついやつ。
爺ちゃんはなぜか昔から軽トラ弄りが大好きで、フルオーダーで一点もののカスタムカーに仕上がっている。
生前、「儂が死んだらこいつを頼む」と言われていたので、もともと乗ってた中古のミニバンを売っぱらって家と一緒に受け継いだ。
車を二台持ち出来るほど稼ぎはよくないので、一応そこそこ都会の地方都市に暮らしているというのに愛車が軽トラになってしまった。
まぁオレも爺ちゃんの影響受けて軽トラ好きだし、フルカスタムの軽トラは意外とカッコいいので気に入ってはいるが。
今となってはこれが一番の形見かもしれないな。
家を出て約一時間半。最後のコンビニで食料その他を買い込んで更に車を走らせること三〇分。ようやく爺ちゃんの家が見えてきた。
「あ~やっぱ勿体ないよな~」
見えてきたのは古い大きな母屋と新築の離れ。
九〇歳だというのに「趣味の部屋が欲しい! まだまだ遊び足りない!」とか言って、気付いたら離れがいつの間にか建っていた。
せっかくの新しい家なので、このまま手放すのも勿体ない。
場所が場所だから売っても安く買い叩かれるのが見えているし、それに思い出の詰まった場所だ。出来れば手放したくなかった。
「こっちに引っ越すかな……」
たまに顔を見せに帰ってきていたとはいえ、すっかり街の暮らしに慣れた身だ。
一番近いコンビニでも車で三〇分かかるし、不便なのは間違いない。
でも運がいいのか悪いのか、オレの仕事はリモートワークができるエンジニアだ。
爺ちゃんが人工衛星を使ったインターネットサービスを契約していたからネットも問題ない。
そう考えると、結局は引っ越すことに決めそうだな~。オレ。
「ま。もう少し時間をかけて考えよっと」
家の前に軽トラを止めるとだいふくを連れて母屋に向かう。
母屋にかかった表札を見ると、綺麗な『霧島』の文字と雑に彫刻刀で掘られた『蒼司』の文字が見える。
霧島が名字で蒼司はオレの名前だ。
爺ちゃんがオレを引き取った時に「お前の家はここだ」と言って、いきなり彫刻刀でオレの名前を彫ったんだ。
「はは。汚ねぇ字だな……。今日はこっちで寝るか~」
せっかくだから新築の離れで寝ようかと思ったが気が変わった。
いろいろな思い出が蘇る……のだが……。
「ばぅ!」
「だいふく……その器どっから持ってきた……」
お前さっきコンビニの駐車場で食ったばかりだろと思いながらも、だいふくと一緒に少し早めの昼飯にした。
◆◇◆◇◆◇◆◇
その日の深夜のことだった。
だいふくの下手くそな遠吠えで目が覚めた。
「ばっふぅぉ~ぉん!」
「なんだよだいふく……うるさいなぁ……」
「ばぅ!」
尚も障子の方に向かって吠えるだいふく。
「こんな時間に近所迷惑……にはならんか」
寝ぼけてたが爺ちゃん家だった。
周りにまったく家は無いから近所迷惑にはならんかったわ。
いや、それよりどうしたんだ?
元々だいふくは変な奴だが、それにしても様子がちょっと変だ。
「え? なんか明るいな……」
ここは街頭一つ無い超がつくど田舎。
寝る前に薄~い下限の月が出ていたのを覚えているから月明かりでもないはず。
だいふくを後ろから脇を掴んで抱きかかえると、障子を開けて縁側に出た。
どうやら軽トラを止めている辺りが、ほんのりと明るいようだ。
「あれ? ポジションライトでも消し忘れたか?」
そう思い、サンダルを履いて外に出たのだが……。
「は……? な、んだこれ……?」
軽トラの荷台の上辺りの空間が渦巻いていたのだった。
少し遅い朝飯を食べながらテレビをつけると嫌なニュースが映し出された。
「またダンジョンブレイクが起こったのか……」
この世界にダンジョンができて三〇年。
オレが五歳の時、突然世界中で異空間に繋がる不思議なゲートが出現した。
まだ小さかったので記憶は曖昧だが、すごい騒ぎだったのだけはよく覚えている。
「朝から晩まで特番ばかりで、好きなアニメが放映中止になって泣いてたな……」
なにか良くないことが起こったと、テレビの画面越しに感じていたのもあるのかもしれない。
そんな風に日本がただただ大騒ぎしている間に、海外では数日後には軍が中心になって調査団を結成。
競うようにダンジョンへと突入していった。
ちなみにこの当時はダンジョンとは呼ばれていなかったと思うのだが、小さかったので覚えてない。
調査が進み、情報が出揃ってきて明らかになったのは、中が異空間になっていること。
そして……現実の世界にはいないはずの異形のものたちの存在だった。
魔物だ。
徐々に調査が進んでいき、動物を元にしているようなものから、ファンタジーの世界ではおなじみのゴブリンやオークなど、さまざまな種類の魔物が確認されていった。
物語やゲームの中だけの存在が現れたことに世界は騒然となった。
ただ、ファンタジーが現実になったと喜んでばかりもいられないことがすぐに判明する。ダンジョンの中では電子機器がほぼ動作しない上に、魔物に銃器や薬品、炎などの攻撃がいっさい効かなかったからだ。
その上、ほとんどの魔物は人を見れば襲いかかってくる。
まるでそういう行動を義務付けられているかのように。
その後、さまざまな検証の末にわかったのは、魔物は魔力を纏っており、魔力が込められていない攻撃は魔力の膜がすべて防いでしまうのだとか。
そのため、人体から自然に発せられる魔力を通す素材で出来た武器を手に持って戦う近接戦闘を余儀なくされた。もちろん苦しい戦いを強いられることになったのは言うまでもなく、多くの国で調査団に大きな被害が相次いだ。
そしてこの情報がもたらされたことで、日本の対応は遅れに遅れることになる。
この当時はまだダンジョンの中から有用な素材なども見つかっておらず、調査団を送り込むメリットがないと慎重派、反対派が優勢となったのだ。
その結果、消極的な対応をし続けた日本のダンジョンが、世界で一番最初に……ブレイクした。
正式名『ダンジョンブレイク』。
それは異空間となっている世界『ダンジョン』から、我々の暮らすこの世界へと魔物が溢れ出す現象のことをさす。
日本で調査がまったく行われなかったことでダンジョン内の魔物が増え続け、ゲートから魔力が溢れ出して周囲に魔力が充満。最終的にゲートが壊れ、中から一気に魔物が溢れ出したのだ。
しかも日本に出現した多くのダンジョンでほぼ同時多発的に……。
最終的に米軍の助けを借りて収束するまでにひと月を要し、犠牲者は一〇万人を超えた。
この時にオレの両親も……。
「……嫌なニュースのせいで、つい昔のことを思い出してしまったな」
その後、爺ちゃんに引き取られ、超がつくど田舎で育てられた。
真面目だったらしい両親とは違ってなかなかに破天荒な性格だったが、やさしくて楽しい人だった。
その爺ちゃんも大往生の末に、数週間前、その生涯に幕を下ろした。
他に親戚もいないので爺ちゃんから田舎の家を受け継ぎ、今日は今住んでいる賃貸マンションから久しぶりにその家に向うことになっていた。
「ばぅ!」
「お。だいふく、起きたのか?」
だいふくってのは、今のペット可のマンションに引っ越してから飼い始めた愛犬の名前だ。どうやら朝飯をよこせと言っているようで、ご飯の器を咥えている。
犬種はパグ。
そこまで太ってないのにすっげー丸っこい。丸すぎて転がるんじゃないかってたまに心配になるぐらいまん丸だがパグだ。
血統書もあるから間違いない。
肝が座っているのか何ごとにも動じない性格の子で、爺ちゃんがこいつは将来大物になるって笑いながらよく言っていた。大物になるパグってなんだよ……。
そうこうしているうちに、いい時間になったのでだいふくを連れて家を出た。
爺ちゃんの家までは車で約一時間半。
ぽつんと一軒家って感じで周りには他に家はなく、電車どころかバスも通っていないので、車で向かうことになる。
車は爺ちゃんの乗っていた軽トラ。
しかもフルカスタムのめっちゃ厳ついやつ。
爺ちゃんはなぜか昔から軽トラ弄りが大好きで、フルオーダーで一点もののカスタムカーに仕上がっている。
生前、「儂が死んだらこいつを頼む」と言われていたので、もともと乗ってた中古のミニバンを売っぱらって家と一緒に受け継いだ。
車を二台持ち出来るほど稼ぎはよくないので、一応そこそこ都会の地方都市に暮らしているというのに愛車が軽トラになってしまった。
まぁオレも爺ちゃんの影響受けて軽トラ好きだし、フルカスタムの軽トラは意外とカッコいいので気に入ってはいるが。
今となってはこれが一番の形見かもしれないな。
家を出て約一時間半。最後のコンビニで食料その他を買い込んで更に車を走らせること三〇分。ようやく爺ちゃんの家が見えてきた。
「あ~やっぱ勿体ないよな~」
見えてきたのは古い大きな母屋と新築の離れ。
九〇歳だというのに「趣味の部屋が欲しい! まだまだ遊び足りない!」とか言って、気付いたら離れがいつの間にか建っていた。
せっかくの新しい家なので、このまま手放すのも勿体ない。
場所が場所だから売っても安く買い叩かれるのが見えているし、それに思い出の詰まった場所だ。出来れば手放したくなかった。
「こっちに引っ越すかな……」
たまに顔を見せに帰ってきていたとはいえ、すっかり街の暮らしに慣れた身だ。
一番近いコンビニでも車で三〇分かかるし、不便なのは間違いない。
でも運がいいのか悪いのか、オレの仕事はリモートワークができるエンジニアだ。
爺ちゃんが人工衛星を使ったインターネットサービスを契約していたからネットも問題ない。
そう考えると、結局は引っ越すことに決めそうだな~。オレ。
「ま。もう少し時間をかけて考えよっと」
家の前に軽トラを止めるとだいふくを連れて母屋に向かう。
母屋にかかった表札を見ると、綺麗な『霧島』の文字と雑に彫刻刀で掘られた『蒼司』の文字が見える。
霧島が名字で蒼司はオレの名前だ。
爺ちゃんがオレを引き取った時に「お前の家はここだ」と言って、いきなり彫刻刀でオレの名前を彫ったんだ。
「はは。汚ねぇ字だな……。今日はこっちで寝るか~」
せっかくだから新築の離れで寝ようかと思ったが気が変わった。
いろいろな思い出が蘇る……のだが……。
「ばぅ!」
「だいふく……その器どっから持ってきた……」
お前さっきコンビニの駐車場で食ったばかりだろと思いながらも、だいふくと一緒に少し早めの昼飯にした。
◆◇◆◇◆◇◆◇
その日の深夜のことだった。
だいふくの下手くそな遠吠えで目が覚めた。
「ばっふぅぉ~ぉん!」
「なんだよだいふく……うるさいなぁ……」
「ばぅ!」
尚も障子の方に向かって吠えるだいふく。
「こんな時間に近所迷惑……にはならんか」
寝ぼけてたが爺ちゃん家だった。
周りにまったく家は無いから近所迷惑にはならんかったわ。
いや、それよりどうしたんだ?
元々だいふくは変な奴だが、それにしても様子がちょっと変だ。
「え? なんか明るいな……」
ここは街頭一つ無い超がつくど田舎。
寝る前に薄~い下限の月が出ていたのを覚えているから月明かりでもないはず。
だいふくを後ろから脇を掴んで抱きかかえると、障子を開けて縁側に出た。
どうやら軽トラを止めている辺りが、ほんのりと明るいようだ。
「あれ? ポジションライトでも消し忘れたか?」
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