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第一章
第5話:返事したのオレじゃない
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倒れ込んだ状態からくるりと横に転がって仰向けになり、呼吸を整える。
「ぜぇはぁ……ぜぇはぁ……」
元々田舎暮らしで体力に自信はあったのだが、リモートワークになって引きこもりがちになったせいか、思った以上に体力が落ちていたようだ。
いろいろ片付いたら少し運動でも始めるか……。
「しかし、なんであんな急に走り出したんだ?」
万歳するように掲げたオレの手には、脱力しただいふくが確保されている。
「ばぅ?」
「ばぅ? じゃねぇよ……お前なぁ……」
いや、本当になんでこんな走って……。
「あ……原因はご飯の器か!?」
だいふくを追っかけている時に前方でなにかキラって光るものが見えた気がしたんだが、ご飯の器を追いかけて走ってたのか……。
そう言えば昔だいふくにボール遊びを覚えさせようとしてボールを投げたら、ボールを咥えようとするたびに前足で蹴飛ばしてしまって延々走り続けていたな……。
きっとダンジョンに入った時に器を落として転がったせいで、サッカーのドリブルみたいな状態になっていたのだろう。最後は一緒に転がってたけど。
思わず想像して笑いそうになるけど、よく考えたらそんな場合じゃない!
「ま、周りに魔物は!?」
だいふくを抱っこしたまま飛び起きて周囲を見渡すが、今のところ大丈夫なようだ。
視界の開けている場所で良かったとホッと息を吐き出す。
「ばぅわぅ!」
「わかったわかった。器も拾っておくから」
この期に及んでまだ器を拾おうとするだいふくの姿になんだか緊張しているのが馬鹿馬鹿しく思えてくる。
だからといって、さすがにこんな場所で気は抜かないけど。
「とりあえず急いでここを出よう」
器を拾い、歩き出そうとした時だった。
≪ユニークスキル『ダンジョンアドミニストレーター』を獲得しました≫
突然脳内に声が響いた。
「はっ? え? なにこれ?」
たぶん耳から入った声ではない。
直接脳内に響くような変な聞こえ方だった。
「え……スキルって……」
ダンジョン探索者はレベルを上げることによってスキルを獲得することがある。
でも普通は、何十、何百という数の魔物と戦い、戦闘を繰り返してようやく運が良ければ獲得できるって感じだったはずだ。探索者になって何年も経つのに、レベルアップによる身体能力の強化だけでスキルがゼロという人も多いと聞く。
しかし極稀に、それこそ数千人に一人ぐらいの割合で、ダンジョンに入っただけでスキルを得る人がいる。そういった人たちのことをダンジョンという環境に適性を持つ者として『ダンジョン適合者』と呼ぶのだそうだ。
このことは結構有名で、始めてダンジョンに入る時、みんな自分にその幸運が訪れることを期待して神社にお参りに行くんだとか。いかにも日本人らしい。
「しかしこれって……まさか、オレがダンジョン適合者だったってことか」
ダンジョンに入って一定時間過ごすことでステータスを取得し、レベルを上げられる準備が整うと言われているんだが、入って数分たった今になって遅れてスキル取得のアナウンスが聞こえたのはそれが理由だろう。
「しかも、ユニークスキルって言ってなかったか?」
スキルの種類は剣技のようなものから魔法のようなものまで多肢にわたる。
中には生産系と呼ばれるような戦闘の役に立たないものもあり、その全てはまだ解明されていない。
そして数多くあるスキルの中でも、一番謎に包まれているのがユニークスキルだと言われている。
所持している人が少なく珍しいだけのレアスキルと異なり、世界でたった一人だけしか取得できないスキルだ。
その存在だけは公にされているが、その詳細は秘匿されていてオレみたいな一般人にはどんなスキルが存在するのかさえ知ることはできない。
もちろん『ダンジョンアドミニストレーター』なんて怪しいスキルは、噂ですら聞いたことがない。
仕事がIT系だからアドミニストレーターの意味ぐらいはわかる。
「直訳すれば、ダンジョンの管理者ってことだよな?」
言葉からはテーブルトークRPGとかのダンジョンマスターやゲームマスターを想起させられるが……。
「そうだ。たしかスキルって意識することで自然にその使い方がわかるって話だったよな?」
さっそくとばかりに自分の内に意識を向ける。だいふくを抱っこしたまま……。
「………………じたばたしてるから集中しずらいな!」
かと言って下ろして、またどっかいかれては困る。
なんとか頑張って、そのまま雑念を払ってスキルについて意識を向けた。
集中すること十数秒。
「え……まじか……」
いや、ちょっとこれは……まじか。
昨日からすっかりまじか教の教祖になってしまっている。
「本当にダンジョンの管理っぽいことができるみたいだ……」
なんでも自由自在ってわけではなさそうだが、本当にダンジョンマスターに近しいことができそうだ。
保有するダンジョンリソースの範囲内という制限があるようだが、魔物の配置やポップ率など、かなりいろいろなことが設定できる。
他にもフィールドマップの表示などの付随的な能力も使えるようになるらし……。
≪本ダンジョンの管理者に就任しますか?≫
スキルについて確認していると、また脳内に声が響いた。
本ダンジョンって今オレがいるこのダンジョンのことだよな。
めっちゃ興味はあるけど、勝手にそんなことしていいのか?
この後、探索者協会に連絡して「オレのダンジョンです」とか報告するのか?
いやいや、そういうわけにはいかないだろう。
断ろうと口を開きかけた時、だいふくが吠えた。
「ばぅ!」
≪承諾確認しました。あなたは本ダンジョンの管理者に就任しました≫
≪以後、本ダンジョンは識別名『霧島 蒼司』の管理下に置かれます≫
は? 教祖として一言いいか……?
「まじか……」
「ぜぇはぁ……ぜぇはぁ……」
元々田舎暮らしで体力に自信はあったのだが、リモートワークになって引きこもりがちになったせいか、思った以上に体力が落ちていたようだ。
いろいろ片付いたら少し運動でも始めるか……。
「しかし、なんであんな急に走り出したんだ?」
万歳するように掲げたオレの手には、脱力しただいふくが確保されている。
「ばぅ?」
「ばぅ? じゃねぇよ……お前なぁ……」
いや、本当になんでこんな走って……。
「あ……原因はご飯の器か!?」
だいふくを追っかけている時に前方でなにかキラって光るものが見えた気がしたんだが、ご飯の器を追いかけて走ってたのか……。
そう言えば昔だいふくにボール遊びを覚えさせようとしてボールを投げたら、ボールを咥えようとするたびに前足で蹴飛ばしてしまって延々走り続けていたな……。
きっとダンジョンに入った時に器を落として転がったせいで、サッカーのドリブルみたいな状態になっていたのだろう。最後は一緒に転がってたけど。
思わず想像して笑いそうになるけど、よく考えたらそんな場合じゃない!
「ま、周りに魔物は!?」
だいふくを抱っこしたまま飛び起きて周囲を見渡すが、今のところ大丈夫なようだ。
視界の開けている場所で良かったとホッと息を吐き出す。
「ばぅわぅ!」
「わかったわかった。器も拾っておくから」
この期に及んでまだ器を拾おうとするだいふくの姿になんだか緊張しているのが馬鹿馬鹿しく思えてくる。
だからといって、さすがにこんな場所で気は抜かないけど。
「とりあえず急いでここを出よう」
器を拾い、歩き出そうとした時だった。
≪ユニークスキル『ダンジョンアドミニストレーター』を獲得しました≫
突然脳内に声が響いた。
「はっ? え? なにこれ?」
たぶん耳から入った声ではない。
直接脳内に響くような変な聞こえ方だった。
「え……スキルって……」
ダンジョン探索者はレベルを上げることによってスキルを獲得することがある。
でも普通は、何十、何百という数の魔物と戦い、戦闘を繰り返してようやく運が良ければ獲得できるって感じだったはずだ。探索者になって何年も経つのに、レベルアップによる身体能力の強化だけでスキルがゼロという人も多いと聞く。
しかし極稀に、それこそ数千人に一人ぐらいの割合で、ダンジョンに入っただけでスキルを得る人がいる。そういった人たちのことをダンジョンという環境に適性を持つ者として『ダンジョン適合者』と呼ぶのだそうだ。
このことは結構有名で、始めてダンジョンに入る時、みんな自分にその幸運が訪れることを期待して神社にお参りに行くんだとか。いかにも日本人らしい。
「しかしこれって……まさか、オレがダンジョン適合者だったってことか」
ダンジョンに入って一定時間過ごすことでステータスを取得し、レベルを上げられる準備が整うと言われているんだが、入って数分たった今になって遅れてスキル取得のアナウンスが聞こえたのはそれが理由だろう。
「しかも、ユニークスキルって言ってなかったか?」
スキルの種類は剣技のようなものから魔法のようなものまで多肢にわたる。
中には生産系と呼ばれるような戦闘の役に立たないものもあり、その全てはまだ解明されていない。
そして数多くあるスキルの中でも、一番謎に包まれているのがユニークスキルだと言われている。
所持している人が少なく珍しいだけのレアスキルと異なり、世界でたった一人だけしか取得できないスキルだ。
その存在だけは公にされているが、その詳細は秘匿されていてオレみたいな一般人にはどんなスキルが存在するのかさえ知ることはできない。
もちろん『ダンジョンアドミニストレーター』なんて怪しいスキルは、噂ですら聞いたことがない。
仕事がIT系だからアドミニストレーターの意味ぐらいはわかる。
「直訳すれば、ダンジョンの管理者ってことだよな?」
言葉からはテーブルトークRPGとかのダンジョンマスターやゲームマスターを想起させられるが……。
「そうだ。たしかスキルって意識することで自然にその使い方がわかるって話だったよな?」
さっそくとばかりに自分の内に意識を向ける。だいふくを抱っこしたまま……。
「………………じたばたしてるから集中しずらいな!」
かと言って下ろして、またどっかいかれては困る。
なんとか頑張って、そのまま雑念を払ってスキルについて意識を向けた。
集中すること十数秒。
「え……まじか……」
いや、ちょっとこれは……まじか。
昨日からすっかりまじか教の教祖になってしまっている。
「本当にダンジョンの管理っぽいことができるみたいだ……」
なんでも自由自在ってわけではなさそうだが、本当にダンジョンマスターに近しいことができそうだ。
保有するダンジョンリソースの範囲内という制限があるようだが、魔物の配置やポップ率など、かなりいろいろなことが設定できる。
他にもフィールドマップの表示などの付随的な能力も使えるようになるらし……。
≪本ダンジョンの管理者に就任しますか?≫
スキルについて確認していると、また脳内に声が響いた。
本ダンジョンって今オレがいるこのダンジョンのことだよな。
めっちゃ興味はあるけど、勝手にそんなことしていいのか?
この後、探索者協会に連絡して「オレのダンジョンです」とか報告するのか?
いやいや、そういうわけにはいかないだろう。
断ろうと口を開きかけた時、だいふくが吠えた。
「ばぅ!」
≪承諾確認しました。あなたは本ダンジョンの管理者に就任しました≫
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は? 教祖として一言いいか……?
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