4 / 58
第一章
第4話:ゴロゴロ
しおりを挟む
ちょっとビビりながらも、なんとか無事に爺ちゃんの家まで戻ってきた。
もちろんダンジョンゲートも一緒だ。
でも、空間に固定された場合のことを考えて、できるだけ家から離れたところに止めてある。
心情的にはゲートさっきの場所にポイしてきたかったが、あの辺りに住んでいるのはみんな知り合いだし、迷惑をかけるわけにはいかない。
だからダンジョンゲートと一緒に戻ってきたのは仕方ないのだが、このままだと爺ちゃんの形見とも言えるこのフルカスタムの軽トラが接収されることになる。
「爺ちゃんから大事にしてやってくれって頼まれたのにな……」
悩みに悩んだが、どう考えても隠し通せるものではない。
自分で魔物を倒せてダンジョンブレイクを回避できるのならまだしも、そんなのトップクラスの探索者でもないと無理だ。
いや。そもそも一人では、たとえトップクラス探索者だったとしても、よほど難易度の低いダンジョンじゃないと魔物の間引きが追いつかないだろう。
昔、夢を諦めないで探索者になっていれば、まだわずかな可能性はあったかも知れないけど……。
「そんなこと、今さら言っても仕方ないな」
爺ちゃんの家でのんびり過ごして、こっちに引っ越すかどうかをゆっくり考えて決めるつもりだったのに、とんでもないことになった。
空を見上げると、もううっすらと白み始めている。
「諦めて連絡するか……」
オレはスマホを取り出すと、もう一度「日本探索者協会」をネットで検索して電話番号を調べることにした。
「普通の窓口は九時からか。お。緊急連絡先があるな」
しかし連絡する覚悟は決めたけど、これ、どうやって説明すればいいかな。
馬鹿正直に軽トラの荷台にダンジョンゲートが出来ましたって言って信じてもらえるのか? オレだったら悪戯を疑うが……。
「ちゃんと状況を説明できるように、しっかり確認しておくか」
荷台の後ろに回り込むと、爺ちゃんがカスタムで付けたアルミブリッジを引き出す。
ブリッジってのは耕運機とかを荷台に積む時とかに使うスロープみたいなものだ。
普段ならこんなもの使わずに荷台に飛び乗っているが、躓いてダンジョンの中に……とか洒落にならないからな。
「へぇ~不思議なもんだな。本当に空間が歪んで見える」
テレビや動画などで見たことはあるが、実物を見るのは始めてだ。
ここまで近くで見ることが出来るのなんて探索者ぐらいだし、この先こんな機会はそうそうないだろう。
そう考えるとなんだか興味が湧いてきた。
最初は混乱してしまってそれどころではなかったが、冷静になってみるとゲートというものになんだかわくわくしている自分に気付く。
童心に帰るという感じだろうか。
オレの年代の男なら、誰しもが子供の頃には探索者に憧れていたからな。
うちは両親をダンジョンブレイクで亡くしているから不謹慎に思われるかもしれないが、正直言って両親の記憶はほとんどないし、連日探索者の活躍するニュースを見て育ったから恨みよりも憧れや興味の方が強かった。
と言っても、ダンジョンの中に入る度胸なんてものはない。
それこそ未だに連日ダンジョン関連の犠牲者の報道がなされている状況で、免許すら持ってないオレが一人で入るなんて、それは度胸ではなく無謀なだけだ。
「ばぅ!」
「え?」
ダンジョンゲートに気を取られていると、足元にご飯の器を加えただいふくがいた。
ブリッジを使って荷台にあがってきたのか。
「ば、ばぅぅ~……!?」
はっ? え? まじか?
今……だいふくがオレのところまで来ようとして、ゲートに触れて……!?
「うぉぉぉぉ!? だいふく~!!」
オレはそのままダンジョンゲートへと無謀にも飛び込んだのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
一瞬の浮遊感のあと、目が眩んで転びそうになった。
「まぶしっ!? っ!? とと……あぶね」
さっきまでまだ薄暗い中にいたので、目が眩んで一瞬何が起こったのかわからなかった。
だけど、少しして明るさに目が慣れてくると、想像していたダンジョンの中とは全然違う光景に息を呑んだ。
「え? 外?」
爽やかな風が吹く草原。
どこまでも澄み渡る青い空。
薄暗い洞窟や遺跡のようなものを想像していたので、完全に意表をつかれた。
「これってたしか、フィールドタイプだっけ……」
ダンジョンに圧倒的に多いのは洞窟や遺跡のようなタイプなのだが、海外には森林や砂漠、湿地などのフィールドタイプのものも存在していたはずだ。
だけど、フィールドタイプのダンジョンは全体の数パーセントと聞くし、日本にも数えるほどしかなかったはず。まさかこのダンジョンがそうだとは思わなかった。
「って、そんなこと考えてる場合じゃない! だいふく~!」
幸いなことに周りに魔物の姿らしきものは見えないし、だいふくもすぐに見つけられたのだが……なぜか、走って遠ざかっていっている。
「え? なんで? というか、お前そんな早く走れたのかよ!?」
今まで散歩でも見たことないような速さで駆けていくだいふく。
オレも後を追いかけるがなかなかその差が縮まらない。
そしてそのまま緩い下り坂に差し掛かった時だった。
「あ、転がった……」
短い足で必死に走っていたのだが、躓いたのか、ゴロゴロと坂を転がり始めた。
はやっ!? それ絶対、走るより速いよな!?
縮まった差がまた開いていく。
「まじか!?」
転がるだいふくを必死に追いかけ、ダイビングキャッチするように飛び込んで確保したのは、坂を下りきったあとだった。
もちろんダンジョンゲートも一緒だ。
でも、空間に固定された場合のことを考えて、できるだけ家から離れたところに止めてある。
心情的にはゲートさっきの場所にポイしてきたかったが、あの辺りに住んでいるのはみんな知り合いだし、迷惑をかけるわけにはいかない。
だからダンジョンゲートと一緒に戻ってきたのは仕方ないのだが、このままだと爺ちゃんの形見とも言えるこのフルカスタムの軽トラが接収されることになる。
「爺ちゃんから大事にしてやってくれって頼まれたのにな……」
悩みに悩んだが、どう考えても隠し通せるものではない。
自分で魔物を倒せてダンジョンブレイクを回避できるのならまだしも、そんなのトップクラスの探索者でもないと無理だ。
いや。そもそも一人では、たとえトップクラス探索者だったとしても、よほど難易度の低いダンジョンじゃないと魔物の間引きが追いつかないだろう。
昔、夢を諦めないで探索者になっていれば、まだわずかな可能性はあったかも知れないけど……。
「そんなこと、今さら言っても仕方ないな」
爺ちゃんの家でのんびり過ごして、こっちに引っ越すかどうかをゆっくり考えて決めるつもりだったのに、とんでもないことになった。
空を見上げると、もううっすらと白み始めている。
「諦めて連絡するか……」
オレはスマホを取り出すと、もう一度「日本探索者協会」をネットで検索して電話番号を調べることにした。
「普通の窓口は九時からか。お。緊急連絡先があるな」
しかし連絡する覚悟は決めたけど、これ、どうやって説明すればいいかな。
馬鹿正直に軽トラの荷台にダンジョンゲートが出来ましたって言って信じてもらえるのか? オレだったら悪戯を疑うが……。
「ちゃんと状況を説明できるように、しっかり確認しておくか」
荷台の後ろに回り込むと、爺ちゃんがカスタムで付けたアルミブリッジを引き出す。
ブリッジってのは耕運機とかを荷台に積む時とかに使うスロープみたいなものだ。
普段ならこんなもの使わずに荷台に飛び乗っているが、躓いてダンジョンの中に……とか洒落にならないからな。
「へぇ~不思議なもんだな。本当に空間が歪んで見える」
テレビや動画などで見たことはあるが、実物を見るのは始めてだ。
ここまで近くで見ることが出来るのなんて探索者ぐらいだし、この先こんな機会はそうそうないだろう。
そう考えるとなんだか興味が湧いてきた。
最初は混乱してしまってそれどころではなかったが、冷静になってみるとゲートというものになんだかわくわくしている自分に気付く。
童心に帰るという感じだろうか。
オレの年代の男なら、誰しもが子供の頃には探索者に憧れていたからな。
うちは両親をダンジョンブレイクで亡くしているから不謹慎に思われるかもしれないが、正直言って両親の記憶はほとんどないし、連日探索者の活躍するニュースを見て育ったから恨みよりも憧れや興味の方が強かった。
と言っても、ダンジョンの中に入る度胸なんてものはない。
それこそ未だに連日ダンジョン関連の犠牲者の報道がなされている状況で、免許すら持ってないオレが一人で入るなんて、それは度胸ではなく無謀なだけだ。
「ばぅ!」
「え?」
ダンジョンゲートに気を取られていると、足元にご飯の器を加えただいふくがいた。
ブリッジを使って荷台にあがってきたのか。
「ば、ばぅぅ~……!?」
はっ? え? まじか?
今……だいふくがオレのところまで来ようとして、ゲートに触れて……!?
「うぉぉぉぉ!? だいふく~!!」
オレはそのままダンジョンゲートへと無謀にも飛び込んだのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
一瞬の浮遊感のあと、目が眩んで転びそうになった。
「まぶしっ!? っ!? とと……あぶね」
さっきまでまだ薄暗い中にいたので、目が眩んで一瞬何が起こったのかわからなかった。
だけど、少しして明るさに目が慣れてくると、想像していたダンジョンの中とは全然違う光景に息を呑んだ。
「え? 外?」
爽やかな風が吹く草原。
どこまでも澄み渡る青い空。
薄暗い洞窟や遺跡のようなものを想像していたので、完全に意表をつかれた。
「これってたしか、フィールドタイプだっけ……」
ダンジョンに圧倒的に多いのは洞窟や遺跡のようなタイプなのだが、海外には森林や砂漠、湿地などのフィールドタイプのものも存在していたはずだ。
だけど、フィールドタイプのダンジョンは全体の数パーセントと聞くし、日本にも数えるほどしかなかったはず。まさかこのダンジョンがそうだとは思わなかった。
「って、そんなこと考えてる場合じゃない! だいふく~!」
幸いなことに周りに魔物の姿らしきものは見えないし、だいふくもすぐに見つけられたのだが……なぜか、走って遠ざかっていっている。
「え? なんで? というか、お前そんな早く走れたのかよ!?」
今まで散歩でも見たことないような速さで駆けていくだいふく。
オレも後を追いかけるがなかなかその差が縮まらない。
そしてそのまま緩い下り坂に差し掛かった時だった。
「あ、転がった……」
短い足で必死に走っていたのだが、躓いたのか、ゴロゴロと坂を転がり始めた。
はやっ!? それ絶対、走るより速いよな!?
縮まった差がまた開いていく。
「まじか!?」
転がるだいふくを必死に追いかけ、ダイビングキャッチするように飛び込んで確保したのは、坂を下りきったあとだった。
215
あなたにおすすめの小説
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
この世界にダンジョンが現れたようです ~チートな武器とスキルと魔法と従魔と仲間達と共に世界最強となる~
仮実谷 望
ファンタジー
主人公の増宮拓朗(ましみやたくろう)は20歳のニートである。
祖父母の家に居候している中、毎日の日課の自宅の蔵の確認を行う過程で謎の黒い穴を見つける。
試にその黒い穴に入ると謎の空間に到達する。
拓朗はその空間がダンジョンだと確信して興奮した。
さっそく蔵にある武器と防具で装備を整えてダンジョンに入ることになるのだが……
暫くするとこの世界には異変が起きていた。
謎の怪物が現れて人を襲っているなどの目撃例が出ているようだ。
謎の黒い穴に入った若者が行方不明になったなどの事例も出ている。
そのころ拓朗は知ってか知らずか着実にレベルを上げて世界最強の探索者になっていた。
その後モンスターが街に現れるようになったら、狐の仮面を被りモンスターを退治しないといけないと奮起する。
その過程で他にもダンジョンで女子高生と出会いダンジョンの攻略を進め成長していく。
様々な登場人物が織りなす群像劇です。
主人公以外の視点も書くのでそこをご了承ください。
その後、七星家の七星ナナナと虹咲家の虹咲ナナカとの出会いが拓朗を成長させるきっかけになる。
ユキトとの出会いの中、拓朗は成長する。
タクロウは立派なヒーローとして覚醒する。
その後どんな敵が来ようとも敵を押しのける。倒す。そんな無敵のヒーロー稲荷仮面が活躍するヒーロー路線物も描いていきたいです。
「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜
大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。
広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。
ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。
彼の名はレッド=カーマイン。
最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!
TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。
その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。
競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。
俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。
その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。
意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。
相変わらずの豪華客船の中だった。
しかし、そこは地球では無かった。
魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。
船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。
ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ……
果たして、地球と東の運命はどうなるの?
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ
高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。
タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。
ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。
本編完結済み。
外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。
底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった
椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。
底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。
ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。
だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。
翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる