軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸

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第一章

第20話:HP全損

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 ダンジョンの中を風を切り裂くように駆け抜けていく。
 すごい……レベルを上げてから初めて全力で走ったが、視界が狭まり、洞窟の壁が、目に映る景色が、すごい速さで後ろに流れている。

 オレはまだレベル18だが、既に身体能力はアスリートを超え、一般人では到達できない域にまで達しているようだ。

 だけど、それでもまだ探索者としては駆け出し。
 一般的にはレベル20を超えてD級ダンジョンの攻略を進めていけるようになってようやく一人前とされており、そこにはまだ到達していないからな。

 とは言っても、一般人と比較すれば実際にはこのレベルでもかなり強い。このまま頑張ってレベルを上げ、出来ればCランク探索者にはなりたいところだ。

 現在のオレのランクはE。
 一番下のE級ダンジョンにのみ入れる新人探索者だ。

 ランクはダンジョンの級と紐づけられており、つまりD級ダンジョンに入れる資格を持つ探索者をDランク探索者と呼び、以降C>B>A>Sと上がっていく形だ。

 人数的にはベテランの探索者でもD級ダンジョンまでで攻略を止めている人が多く、Dランク探索者が一番のボリュームゾーンとなっていた。C級ダンジョンまで探索できるようになれば探索者として一目置かれることになる。

 だからオレもCランク探索者を目指しているんだが、当面の目標はDランク探索者になってD級ダンジョンの探索が出来るようになることだ。

 ちなみにだけど、オレはSやAランクはもちろん、Bランクも目指してはいない。
 危険度が跳ね上がるし、そもそも最強を目指してない。
 ただ、Cランクダンジョンを探索できるレベルで既に人外とか言われているのに、正直なところ今は想像ができないっていうのが本音だったりするが。


 だけど……こういう場面に遭遇した時に、自力で道を切り抜けられるぐらいの強さは欲しい!


「見えた!! この先の部屋か!」

 剣戟の音が聞こえてくるし、探索者の後ろ姿も見えた。
 まだ持ちこたえているようだ。

 間に合った!!
 力を合わせればなんとか切り抜けられるはず!

 そう思って勢いよく部屋に飛び込んだのだが……。

「きゃぁ!?」

 オレが部屋に飛び込んだと同時に、最後の・・・探索者が蹴り飛ばされてしまった。
 部屋には血塗れで横たわる三人の男の探索者と、たった今、蹴り飛ばされて蹲っている女の探索者。ミニレーダーで確認すると男三人の方はグレーの点になっており、もう事切れているようだ……。

 しかしショックを受けている場合ではない。その女の探索者最後の一人も、今まさにゴブリンマーダーが命を刈り取ろうとしていた。

「させるか!!」

 フィールドボスと一対一で戦うのは危険すぎる。
 そんなことはわかっているが、勝手に体が動いていた。

 勢いそのままに駆け寄ると、ゴブリンマーダーと女の探索者の間に割って入る。

「ぐっ!?」

 掲げたポリカーボネート製の盾に強烈な衝撃が走った。
 でも……防げない強さではない!

「はぁっ!!」

 すかさずメイスを振るうが避けられた。

 でも、避けられるのは想定内だ。
 いきなり攻撃を当てに行かずに、一旦距離を取りたくてわざと大振りにしたからな。

 オレはメイスを避けて体勢の崩れたゴブリンマーダーに向けて、吹き飛ばすように思い切り右足を突き出した。

「ぎゃぎゃ!?」

 腕で塞がれたが距離を取ることには成功だ。
 狙い通り、ゴブリンマーダーは少し距離を取って警戒している。

 普段からゴブリンより素早いコボルトで戦闘訓練を積んでおいて良かった。
 厳しいがなんとか戦いにはなるレベルだ。

「おい! 大丈夫か!?」

「ぅぅ……な、なんとか……ごふっ……」

 なっ!? 血を吐いてるじゃないか!?
 HP全損状態か!?

 人はダンジョンに入ってレベルを上げることで、ステータスを上げることが出来る。
 探索者はこれによって徐々に人外じみた能力を得ていくわけだが、まだこの具体的な仕組みは解明はされていない。

 ただ、わかっていることもいくつかある。
 たとえばステータスと呼ばれる肉体とは別のなにか・・・が存在するということだ。

 物理的な筋肉や神経、頭脳などとは切り離されたもので、力、体力、素早さ、器用さ、頭の良さなどがあると言われており、現在は研究機関が各種ステータスの数値化を目指して研究をしている。

 その研究のお陰で、現在ではレベルとHP、MPに関しては世界探索者機構より指標となる数値化方法が発表されていて、おなじみD-Loggerでも確認することができるようになっていた。

 その数値化の基準になっているのが魔力だ。

 レベルは纏う魔力の強度。
 HPは纏う魔力の総量。
 MPは放出できる魔力の総量を計測して数値化しているそうだ。

 そして、纏う魔力の強度が上がることで基本的なステータスや、攻撃力や防御力が上がり、纏う魔力が尽きるまでは肉体的にはダメージを受けない。
 こにれよりHPが残り1しかなくても、ゲームのように最後まで戦えるのだ。

 つまり、今この女性が血を吐いているということは、HPを全損しているということであり、纏っていた魔力が完全に消失している状態ということになる。
 それはステータスの恩恵が消え、今、彼女はただの一般人と同じということだった。

「くっ……死ぬんじゃないぞ……」

 ゴブリンマーダーから目を離せないのでしっかりと見ることは出来ないが、かなりの深手を負っているようだ。このままでは危険な状態だろう。
 戦闘への復帰が出来ないのはこの際もう構わないが、せめて彼女一人だけでも助けたい。

「こいつはオレがなんとかしてみせる! それを使え!」

 オレは懐から出す振りをして、管理者倉庫から回復ポーションを取り出すと、女性へと投げ渡した。

「え……でも……」

「迷ってる場合か! いっぱいあるから気にせず使え!」

 一番効果の低い低級回復ポーションだが、それでも売れば五万円で買い取って貰える。協会での販売価格だと八万だ。

 でも彼女が一瞬躊躇したのは、値段が高いからではなく、ポーションが常に入手困難な状態だからだろう。

 探索者にとっての生命線だし、みんな数を確保しておきたいから需要にドロップ供給が全然追いついていないのだ。地方の探索者協会のショップではほぼ常に売り切れ状態だ。

 でもそれ……コボルトからたまにドロップするから管理者倉庫に山程あるんだ。
 不審に思われるので一気に売りさばく事もできず、管理者ローブのお陰で今までダメージを喰らったことがないので消費することもない。

 ひたすら溜まる一方なんだわ。

 だけどこれで回復すのはあくまでも纏う魔力だけだ。
 HPが回復しても怪我が治るわけではない。

 特殊なポーションがあれば肉体的な怪我まで治るそうだが、そちらは一般の怪我人や病人にも使えるせいでとんでもない額で取引されており、普通の探索者で持っている奴はほとんどいないらしい。

「あ、ありがとうござい、ます……」

 でもそれでも、ステータスの恩恵が復活するから多少は動けるようになるだろうし、HP全損状態よりは怪我の治りも早くなるはずだ。

「逃げれるなら逃げて欲しいんだが、無理なら戦闘に巻き込まれないよう離れたところで待っててくれ、こいつを片付ける!」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇


 ゴブリンマーダーと二〇分ほど激闘を繰り広げ、なんとか倒すことが出来た。
 スライムとか普通のゴブリンならメイスは攻撃力が高いのもあって簡単に一撃で倒せるのだが、さすがフィールドボス、段違いに強かった。

「はぁはぁ……」

 そもそも武器の相性が悪かったな……。
 ゴブリンマーダーは短剣を使うのだが、コボルトより動きが早く、武器の扱いも上手いため、攻撃のスピードが遅いメイスだとなかなか当てられなかったのだ。

 幸いなことにゴブリンマーダーの短剣では管理者ローブの防御を抜くことは出来ず、攻撃を受けてもほぼノーダメージだった。
 最後は捨て身の攻撃で意表を突くことでなんとか倒すことが出来たが、管理者ローブがなければ負けていただろう。

「な、なんとか勝てたな……」

 だけど……勝てたのは嬉しいが素直には喜べないな。
 三人も犠牲者が出てしまった。
 人の亡骸を見たのは初めてで、疲労も合わさってちょっと吐きそう……。

 でも、休んでいる暇はない。
 女性探索者がいつの間にか気を失ってしまっていたからだ。
 早くダンジョンを出て治療をしてもらわないと危ない。

「どうするか……」

 ゴブリンマーダーが落とした魔石と短剣は管理者倉庫にもう入れてある。

 問題は三つ。

 まず、一つ目の問題はこの三人の遺体だ。
 普通は遺品だけ回収して後で探索者協会に報告する形になるのだが、オレの場合は管理者倉庫を使えば遺体を持ち帰ってあげることが出来る。
 出来れば収納系のスキルは隠しておきたかったが、遺族のことを思うと忍びない。

 急いで報告に向かって戻ってきても間に合わないだろう。遺体は暫くするとダンジョンに吸収されてしまうからな。

「それに、この子もどうやって運ぶか……」

 大人びて見えたが、よく見ると思った以上に若そうだった。
 いってても二十歳ぐらいか。
 仲間が三人とも亡くなってしまったのはかなりきついだろうな……。

 しかし今は精神的なダメージよりも肉体的なダメージが深刻だ。

 かなり大量に血を吐いていたし、恐らく内臓にダメージを受けている。背負っていくのは危険だ。
 かといって、お姫様抱っこで運べば多少はマシかもしれないが、帰りに魔物に遭遇すると両手が塞がっていて戦えない。
 簡易マップとミニレーダーがあるから奇襲は受けないが、ここは洞窟型ダンジョンなので全ての魔物を避けていくことも不可能だ。

「となると、これしかないか……」

 一瞬悩んだが、やはり命には代えられない。
 最悪このスキルがバレることを覚悟し、オレは作業部屋に通じるゲートを出現させたのだった。
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