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第一章
第21話:どこかで?
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作業部屋に置いてあるソファーベッドに女性を寝かせ、亡くなった三人の探索者を管理者倉庫に収納すると帰路を急いだ。
出くわしたゴブリンは鎧袖一触蹴散らし、スライムはすべて無視して進んでいく。
途中遭遇した探索者パーティーには、最奥にゴブリンの大きな集落が出来ていることを告げて注意喚起を促しつつ、なんとか無事に出口へと辿り着いた。
「思ったより早く戻れたな。でも急がないと……」
ミニレーダーで人がいないことを確認すると、すぐに怪我をした女性探索者を作業部屋から運び出し、そのままダンジョンの出口へと向かった。
ちゃんと息をしていることにホッとするが、しかしステータスが戻ってもさすがに回復まではしていない。早く治療を受けさせよう。
「あれ? この子、どこかで会った気が……」
乱れた髪と吐いた血の汚れのせいで今まで気付かなかったが、どこかで会った気がする。
いや、でも今はそんなことを考えている場合じゃないか。
オレは所謂お姫様抱っこ状態でそのままゲートをくぐってダンジョンを出ると、警備についていた探索者に声を掛けた。
「すみません!! 怪我人なんです! 手を貸して貰えませんか!」
すると、すぐに四人いた警備のうち三人がこちらに駆け寄ってきた。
「どうした!? なにがあった!?」
「フィールドボス、ゴブリンマーダーにやられたんです! 怪我をしているので治療をお願い出来ますか? あと、イレギュラーを発見したのでその報告もしたいのですが……」
「え? フィールドボスはわかるがイレギュラーって?」
「おい! 馬鹿! 先に怪我人だろ! お前はすぐに職員に知らせにいけ! 君は一旦彼女をそこに寝かせて! 俺はストレッチャーを取ってくる!」
「おっと、すまない。行ってくるわ」
「わかりました。寝かすのはここでいいですか?」
怪我人を地面に寝かすことにちょっと申し訳ない気持ちになるが、お姫様抱っこ状態よりは体に負担が少ないだろう。
できるだけそっと彼女を寝かせてやる。
しかし、さすが警備を請け負っている探索者というべきか、素早く的確な対応をしてくれる頼もしさに、ようやく少し肩の荷が下りた。
ソロの探索者というのは気ままで自由なことが利点だが、すべての判断を自分でしなければならないし、その責任もすべて自分が負わなければいけない。
そこに人の命まで関わってくると、探索者としての経験がまだ浅いオレには荷が重すぎる。
彼女だけでも助けられそうで本当に良かった。
「うん。大丈夫。助かるわ。なんとかなると思う。それで、君の方は大丈夫なの?」
残ったのは警備の中で一人だけ女性の探索者だ。
応急処置の心得があるようで、口の中に血溜まりがないか確認し、気道を確保してから話しかけてきた。
「あ、はい。オレは大丈夫です。怪我もありません」
「そうか。それは良かったわ」
「はい、でも……」
それからオレは、自分がたまたま近くにいて彼女を助けたこと、しかし駆けつけた時には既に彼女のパーティーメンバーだと思われる三人が亡くなってしまっていたことを簡単に説明した。
「そうなの。それはご苦労だったわね。詳しくはあとで協会の人に報告することになると思うけど、ひとまずは君もそこのベンチにでも座って休んでいていいわよ。彼女はもう心配いらない。怪我は決して軽くはないけど、協会に常駐している回復系スキルを持った者なら完治させられるはずよ」
「そうですか。彼女だけでも助かるのなら頑張ってマーダーと戦った甲斐があります」
そんな話をしていると、すぐに先程の探索者がストレッチャーを運んできた。
休んでいいと言われたが、断って三人で協力して彼女を乗せる。
この状況で一人ベンチに座って休む気にもなれなかったので、オレもそのまま一緒に医務室に付き添うことにした。
「悪いわね。でも、彼女を医務室に運んだら、あなたはそのままギルド職員に報告をして貰うことになると思うわ。疲れてるだろうけど、ごめんね」
「いえ、大丈夫です。イレギュラー発生の報告もあるのでちょうど良かったです」
「イレギュラー?」
女性の警備の人にはイレギュラーの話をしていなかったので、ストレッチャーを押しながら、最奥の広場でゴブリンの大集落を発見したことだけ説明しておいた。
「はぁ……今日は業務延長確定ね。でも、事前にわかっただけでもあなたに感謝だわ」
「かなり大きい集落に感じましたけど、大丈夫そうですか?」
「ん~普通のゴブリンなら近くから応援呼べば大丈夫だと思うけど、もう少し詳しい情報がないとなんとも言えないわ。まぁでも、あなたはそんなこと心配しないで職員に報告してくれればいいから」
「はい。わかりました」
残った警備の人には入ろうとする探索者に注意喚起してくれることになっているらしいし、これ以上はオレが考えることではないだろう。
医務室はダンジョン側から協会の建物に入ってすぐの所にあったのですぐに着いた。
既に受け入れ準備が整っていたので、すんなり医務室にいた人に引き継ぐ事ができた。
さすが協会から信頼されて警備を任される探索者だけあって手際がいい。
そんな風に感心していると、ちょうどそこへ協会職員の人がオレを呼びに来たのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
会議室で待っていた二人の職員は、どちらも顔見知りだった。
医務室に迎えに来た職員は知らない人だったが、一緒に会議室に入ってきたので、どうやらこの三人相手に説明するようだ。
「霧島さん、お疲れのところ申し訳ありません」
最初に口を開いたのはオレが探索者試験を申し込んだ時に対応してくれた女性職員だ。
名前を桐生さんと言う。
桐生さんとはその後も何度か会って挨拶は交わしているが、ちゃんと話すのは試験の時以来だ。
「いえ。状況が状況ですから」
もう一人の顔見知りは、買い取り窓口でよく話す大柄な男性職員の大門寺さん。
一言で言うならマッチョ。元探索者らしい。
ちなみに初顔の職員は書紀担当のようで、ノートパソコンを取り出して記録を担当するようだ。
前にネットで見た話だから本当かどうかわからないが、録音や録画すると探索者にとって生命線である所持スキルの情報を残すことになるので、今でもこういう報告の場では映像や音声は残さないように配慮されているらしい。
「悪いな。それで、怪我した森羅の嬢ちゃんの件とイレギュラーの件だが、イレギュラーの方は長くなりそうだから先に嬢ちゃんの方を頼む。それと、悪いが端末のログを提出してくれ」
オレは「わかりました」と返事をすると、D-Loggerを操作して今日のログを送信した。もちろん自分の使用したスキルはフィルターで除外しておいた。
「はい、送りました。それで、ひとつ補足しておきたいのですが、嬢ちゃんの件と言ってましたが彼女は一人ではなかったですよ。ただ、私が駆けつけた時には既に彼女のパーティーメンバーの三人は亡くなっていて……。結果的に彼女、森羅さん? しか助けられなかった感じです」
ん? 森羅……どこかで……。
「あっ!?」
どこかで聞いた名前だと思ったら、探索者試験の時に一緒に合格した薙刀の子か!?
「霧島さん、もしかして今、森羅さんのこと思い出したんですか……」
あ、めっちゃジト目で見られてる……。
でも、しょうがないだろ。髪が乱れてて顔がほとんど隠れてたし、吐血したせいで顔も血塗れだったんだから……。
そもそも……。
「ほんとに余裕なかったんですよ」
「なんだ。霧島は森羅の嬢ちゃんと知り合いだったのか」
「はい。試験の時にたまたま一緒になっただけですが。それで亡くなったパーティーメンバーの件ですが……」
しかし、あの子か~。まだ探索者になってそんなに経ってないのに、仲間を三人も亡くしてショックだろうな……。
ん? いや、ちょっと待て……。なんだろう……この違和感は?
森羅さん、オレと一緒に探索者になったってことは、まだかなりレベルが低いはずだよな?
オレはチートなレベル上げをしているから、あの辺りでも余裕で戦えるけど、普通の探索者ならこの短い期間にあんな深いところまで潜れるものか?
なにか引っかかるところがあるが、でも、先に亡くなった三人のことを報告をしないと。
そう思って話を進めようとしたのだが……。
「パーティーメンバーって誰だ? 嬢ちゃんはソロのはずだぞ?」
「え? 森羅さんってソロで活動してたんですか?」
それじゃぁ、あの三人はいったい……?
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いや、でも今はそんなことを考えている場合じゃないか。
オレは所謂お姫様抱っこ状態でそのままゲートをくぐってダンジョンを出ると、警備についていた探索者に声を掛けた。
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すると、すぐに四人いた警備のうち三人がこちらに駆け寄ってきた。
「どうした!? なにがあった!?」
「フィールドボス、ゴブリンマーダーにやられたんです! 怪我をしているので治療をお願い出来ますか? あと、イレギュラーを発見したのでその報告もしたいのですが……」
「え? フィールドボスはわかるがイレギュラーって?」
「おい! 馬鹿! 先に怪我人だろ! お前はすぐに職員に知らせにいけ! 君は一旦彼女をそこに寝かせて! 俺はストレッチャーを取ってくる!」
「おっと、すまない。行ってくるわ」
「わかりました。寝かすのはここでいいですか?」
怪我人を地面に寝かすことにちょっと申し訳ない気持ちになるが、お姫様抱っこ状態よりは体に負担が少ないだろう。
できるだけそっと彼女を寝かせてやる。
しかし、さすが警備を請け負っている探索者というべきか、素早く的確な対応をしてくれる頼もしさに、ようやく少し肩の荷が下りた。
ソロの探索者というのは気ままで自由なことが利点だが、すべての判断を自分でしなければならないし、その責任もすべて自分が負わなければいけない。
そこに人の命まで関わってくると、探索者としての経験がまだ浅いオレには荷が重すぎる。
彼女だけでも助けられそうで本当に良かった。
「うん。大丈夫。助かるわ。なんとかなると思う。それで、君の方は大丈夫なの?」
残ったのは警備の中で一人だけ女性の探索者だ。
応急処置の心得があるようで、口の中に血溜まりがないか確認し、気道を確保してから話しかけてきた。
「あ、はい。オレは大丈夫です。怪我もありません」
「そうか。それは良かったわ」
「はい、でも……」
それからオレは、自分がたまたま近くにいて彼女を助けたこと、しかし駆けつけた時には既に彼女のパーティーメンバーだと思われる三人が亡くなってしまっていたことを簡単に説明した。
「そうなの。それはご苦労だったわね。詳しくはあとで協会の人に報告することになると思うけど、ひとまずは君もそこのベンチにでも座って休んでいていいわよ。彼女はもう心配いらない。怪我は決して軽くはないけど、協会に常駐している回復系スキルを持った者なら完治させられるはずよ」
「そうですか。彼女だけでも助かるのなら頑張ってマーダーと戦った甲斐があります」
そんな話をしていると、すぐに先程の探索者がストレッチャーを運んできた。
休んでいいと言われたが、断って三人で協力して彼女を乗せる。
この状況で一人ベンチに座って休む気にもなれなかったので、オレもそのまま一緒に医務室に付き添うことにした。
「悪いわね。でも、彼女を医務室に運んだら、あなたはそのままギルド職員に報告をして貰うことになると思うわ。疲れてるだろうけど、ごめんね」
「いえ、大丈夫です。イレギュラー発生の報告もあるのでちょうど良かったです」
「イレギュラー?」
女性の警備の人にはイレギュラーの話をしていなかったので、ストレッチャーを押しながら、最奥の広場でゴブリンの大集落を発見したことだけ説明しておいた。
「はぁ……今日は業務延長確定ね。でも、事前にわかっただけでもあなたに感謝だわ」
「かなり大きい集落に感じましたけど、大丈夫そうですか?」
「ん~普通のゴブリンなら近くから応援呼べば大丈夫だと思うけど、もう少し詳しい情報がないとなんとも言えないわ。まぁでも、あなたはそんなこと心配しないで職員に報告してくれればいいから」
「はい。わかりました」
残った警備の人には入ろうとする探索者に注意喚起してくれることになっているらしいし、これ以上はオレが考えることではないだろう。
医務室はダンジョン側から協会の建物に入ってすぐの所にあったのですぐに着いた。
既に受け入れ準備が整っていたので、すんなり医務室にいた人に引き継ぐ事ができた。
さすが協会から信頼されて警備を任される探索者だけあって手際がいい。
そんな風に感心していると、ちょうどそこへ協会職員の人がオレを呼びに来たのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
会議室で待っていた二人の職員は、どちらも顔見知りだった。
医務室に迎えに来た職員は知らない人だったが、一緒に会議室に入ってきたので、どうやらこの三人相手に説明するようだ。
「霧島さん、お疲れのところ申し訳ありません」
最初に口を開いたのはオレが探索者試験を申し込んだ時に対応してくれた女性職員だ。
名前を桐生さんと言う。
桐生さんとはその後も何度か会って挨拶は交わしているが、ちゃんと話すのは試験の時以来だ。
「いえ。状況が状況ですから」
もう一人の顔見知りは、買い取り窓口でよく話す大柄な男性職員の大門寺さん。
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前にネットで見た話だから本当かどうかわからないが、録音や録画すると探索者にとって生命線である所持スキルの情報を残すことになるので、今でもこういう報告の場では映像や音声は残さないように配慮されているらしい。
「悪いな。それで、怪我した森羅の嬢ちゃんの件とイレギュラーの件だが、イレギュラーの方は長くなりそうだから先に嬢ちゃんの方を頼む。それと、悪いが端末のログを提出してくれ」
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ん? 森羅……どこかで……。
「あっ!?」
どこかで聞いた名前だと思ったら、探索者試験の時に一緒に合格した薙刀の子か!?
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あ、めっちゃジト目で見られてる……。
でも、しょうがないだろ。髪が乱れてて顔がほとんど隠れてたし、吐血したせいで顔も血塗れだったんだから……。
そもそも……。
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