軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸

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第一章

第19話:イレギュラー

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 浅井ダンジョンに通うようになって一〇日が経過した。

 毎日欠かさず行っているけど、軽トラダンジョンの中でしっかり休日も作って休んでいるので疲れはまったくない。
 ただ、今のところはまだレベルあげの効率も、お金の稼ぎも圧倒的に軽トラダンジョンの方が上なので、浅井ダンジョンは普通のダンジョンに慣れるためと、貯まっている魔石の換金目的で通っている感じだ。

 時間の流れが遅い時などはすぐに出て駐車場に向かい、軽トラダンジョンで有効に時間を使ってから改めて夕方に浅井ダンジョンに入り、スライムの魔石を換金だけして帰っている。
 だから、軽トラダンジョンで過ごす時間の方が圧倒的に長い。

 ただこれから先、オレのレベルが上がってDランクのダンジョンで活動出来るようになれば、稼ぎはともかく軽トラダンジョンでのレベル上げは難しくなってくる。
 それは現状軽トラダンジョンに配置できる魔物のレベルが原則20が上限だからだ。フィールドボスなどはこの限りではないようだが、うちのフィールドボスはだいふくだからな。
 だから今のうちから普通のダンジョンに慣れておく必要があった。

 ちなみに現在のオレのレベルは18だが、もうスライムでなく、戦闘訓練も兼ねてコボルトやクレイジーシープを相手にしている。配置するスライムのレベルを20にすればまだスライムでもレベル上げができるが、この先のことを考えれば出来るだけ戦闘に慣れておきたいからな。

 もし設定できるレベル上限がダンジョンアドミニストレーターのスキル依存なら、スキルが成長してこの先も軽トラダンジョンを続けて有効活用できる可能性はあるが、ダンジョン依存のものなら諦めるしかないだろう。

 こればかりはその時になってみないとわからない。
 なにせユニークスキルだから自分で調べて検証していくしかない。

 あと、浅井ダンジョンではゴブリンを相手にしているが、同じレベルならコボルトの方がだいぶん強いみたいだ。

 ただ、ゴブリンは多様性があるので集団戦になると手強くなる傾向にある。
 だから今日は浅井ダンジョンの最奥で集団戦の訓練をする予定だった。

 あれからポリカーボネート製の盾も買ったし、今のオレならゴブリン数匹を同時に相手にしても危なげなく勝てる。

「勝てるんだが……。まじか……。いや、これは無理だろ……」

 浅井ダンジョンの最奥で、ゴブリンの大集落を発見してしまった。

 このダンジョンは洞窟型のダンジョンだが、最奥にはスタジアムがいくつか入るような広大な空間が広がっていた。
 そこにどうやって建材を手に入れたのか、簡易な防壁を備えた大規模集落を作りあげていたのだ。

 ダンジョン最奥と言っても一つだけではなく、向かう方向によっていくつかある。
 オレの場合はあまり人目につく所で戦いたくなかったので、一番不人気な所を協会で教えてもらってここを選んだのだが、まさかこんなことになっているとは……。

 遠くから簡易マップで正確な数字を確認しようとしたが、敵の数が多すぎて点で塗りつぶされており、数えられなかった。

「どんなに少なくても一〇〇匹以上はいるよな……?」

 集落まではかなりの距離を取ったうえで瓦礫に隠れているし、もし見つかっても逃げるぐらいは出来ると思う。だけど……初めてだな。命の危険を感じたのは……。

 今までは、軽トラダンジョンのお陰で常に安全マージンが確保出来ていた。
 防御力の高い管理者ローブを着ている安心感も大きい。
 だから漠然と、自分なら探索者になっても死ぬようなことはないだろうと思っていた。
 でも、こういう事態に遭遇して初めて、ようやく探索者という職業が本当に危険な仕事なのだと理解できた気がする。

 ダンジョンではこういう普段とは違う特殊な状況がたまに起こる。
 これをイレギュラーと呼ぶ。
 その言葉自体は知っていたが、その危険度の高さを全然理解出来ていなかったようだ。

「とりあえず探索者協会に報告に行こう」

 ダンジョンの入口で警備している探索者は、そのダンジョンのランクより最低でも一つ上のダンジョンで問題なく活動できるレベルの人たちだ。
 オレからすればこのゴブリンの大集落は脅威だが、そのレベルの人たちなら簡単とは言わないまでもなんとかしてくれるだろう。

 油断せずに視線を集落のある方に向けながら、ゆっくりと後ろに下がって距離を取っていく。

 そうしてひとまず安心できる距離まで来たその時だった。
 あまり警戒していなかった後方から、かすかに悲鳴のようなものが聞こえた気がした。

「え……今、たしかに誰かの悲鳴が聞こえたよな?」

 耳を澄ませてみると、今度は間違いなく野太い悲鳴が聞こえてきた。

「ぎゃぁぁ!? フィールドボスだぁ!!」

「うわぁ!? た、助けてくれぇ!」

 オレの今いる位置でギリギリ聞こえるぐらいなので、集落のゴブリンたちには気付かれていないだろう。そのことにほっと胸を撫で下ろす。

 でも、フィールドボスか……。

 ここのボスはゴブリンリーダーか、稀に沸くレアポップのゴブリンマーダーのどちらか。
 てっきり大集落を率いているのがフィールドボスかと思っていたが、よくよく考えればあの数をフィールドボスクラスで率いるのは無理がある。
 そうなれば大集落を率いているのはイレギュラー個体で、フィールドボスは別にいても不思議ではない。

 しっかり勉強してレベルもあげてきたが、オレは経験が不足している。
 最初からそれに気付けというのは無理があるだろう。

「って、言い訳している場合じゃない!」

 大集落を相手にするのは絶対に無理だが、フィールドボス相手なら襲われている探索者と力を合わせればなんとかなるかもしれない。
 簡易マップで確認すると、魔物は一体のみで探索者は四人。
 一見有利に見えるが、魔物が一体だけということはレアポップのマーダーの可能性が高い。
 確かゴブリンリーダーよりマーダーの方がワンランク上の強さだったはずなので、厳しい戦いになるかもしれない。

「危ないのは嫌だが、このまま逃げたら寝覚めが悪いよな!」

 探索者になる前のオレなら絶対にそのまま逃げていたと思う。だって、オレ一人が助けに行ったところで犠牲者が増えるだけだから。

 でも、今なら助けられるかも知れない。
 その可能性があるのに手を差し伸べないのは違うだろう!

 オレは簡易マップを頼りに、全力で駆け出したのだった。
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