哀歌-aika-【R-18】

鷹山みわ

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追想

追想-6-

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「また思い出しちゃったな」
雪とあの曲を一緒にしたら、目に涙が浮かんでくる。やはり忘れるにはまだ時間がかかりそうだ。
視線を落とすとスマートフォンが震えている。ディスプレイに浮かんでいる文字を見る。
「尚人くん?」
躊躇いもなく通話を押した。
「もしもし」
『あ、胡桃ちゃん?急に電話してごめんね』
第一声で謝るところが低姿勢で謙虚さが滲み出てくる。本当に優しい人だ。
それだけで胡桃は温かい気持ちになれる。
「いいの。今、誰かと話したいなって思ってたから」
『良かった。僕は……なんか雪見てたら胡桃ちゃんと話したくなって』
「ふふっ」
微笑む。自分が自然に笑っていることに安心した。
『えっと何を話そうかな……』
「うん。私も考えるね」
ゆっくり話すのは嫌いじゃない。むしろ昔はそれが好きだった。
尚人と一緒ならどんな話も楽しく感じられる。それを分かっているから彼の言葉をいつまでも待っていられる。
歩きながら話していると、涙がもう落ちていないことに気づいた。
いつの間にか降り続けている雪を見ていても、視界が歪むことはなくなっていた。




「えっ、今度の日曜日?……特に予定はないけど。
……えっ、新作のケーキ?しかもチョコレートケーキ、行くっ、絶対に行く。
尚人くんが推すケーキに外れないから、絶対に一緒に行くね。
……うん、私も楽しみだよ」

――俺と一緒にいなくても笑うようになったんだね。

弾んでいる声。嬉しそうにはにかむ顔。
俺と一緒の時も喜んでいたけれど、時折何かに怯えた顔になるのを知っていた。
でも、それでも、二人でいた時間は、ベッドにいた瞬間は幸せだったと思いたい。
俺も。君も……そうだったよね……?

そう“だった”……

「何時にどこに待ち合わせる?尚人くんに合わせるよっ」

――――ごめん、無理だ

道路の向こうに歩いている、愛しい人。決して言葉に出来ない人。
俺を捕らえて放さない人。
俺を、狂わせる人。

終わりたくない



「……愛してる」

剛史の呟いた言葉はか細く、降り続けている雪と突風でかき消されていった。

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