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授業が終わって、アパートの一室に帰ってきた。
女子大生になって、一人暮らしを始めて二年目。
眠い授業もあるけど、友達と遊ぶしバイトも楽しいし憧れのキャンパスライフを満喫していると思う。
作り置きしていたご飯を温めると同時に、音楽を流し始める。最近、ちょっと良いイヤホンを買って得をした。音響が以前のものと桁違いで重低音が聞こえるようになった。
もうすぐライブだから曲を聴きたい。
覚えているけど何度も聞きたくなるのだ。
彼の声にはどこか中毒性があった。耳元で聞いていると繰り返して気づけばアルバムを三周している。
アーティストとして、俳優として、モデルとして様々なテレビ番組に登場しては印象を残している彼。
華やかな主役を飾るわけでも、CDの売り上げランキングの独占をしているわけでもない。悪く言えば中途半端な立ち位置がTAKESHIだった。
高校生の時、胡桃は彼の声を聞いて忘れられなくなった。ライブは今回で三回目。
古参には少ないと言われそうだが、金銭の余裕がないのと自制を込めて「自分が頑張ったと思ったら行く」というスタンスを続けている。だから行くライブやイベントが貴重で彼が美化されていた。
「ツアーは……どうせ当たらないし」
でも声が間近で聞けるだけでいい。それだけでにやつきが抑えられない。
チケットを眺めては握りしめて狭い部屋の中をスキップしている。
ライブの恒例企画としてチケット番号の抽選があり、見事当選したファンは楽屋に案内されて束の間、彼と話すことができる。五組という狭き門。倍率は胡桃が受けた志望校の合格率より低い。
ライブのサブイベントになっているが、胡桃は最初から期待していなかった。
それは宝くじと同じだから。
何より、自分にはふさわしくない。
憧れの彼とは世界が違うのだから。
電子レンジの音が鳴って、チケットを仕舞った後、慌てて熱くなった料理をテーブルまで持って行った。
女子大生になって、一人暮らしを始めて二年目。
眠い授業もあるけど、友達と遊ぶしバイトも楽しいし憧れのキャンパスライフを満喫していると思う。
作り置きしていたご飯を温めると同時に、音楽を流し始める。最近、ちょっと良いイヤホンを買って得をした。音響が以前のものと桁違いで重低音が聞こえるようになった。
もうすぐライブだから曲を聴きたい。
覚えているけど何度も聞きたくなるのだ。
彼の声にはどこか中毒性があった。耳元で聞いていると繰り返して気づけばアルバムを三周している。
アーティストとして、俳優として、モデルとして様々なテレビ番組に登場しては印象を残している彼。
華やかな主役を飾るわけでも、CDの売り上げランキングの独占をしているわけでもない。悪く言えば中途半端な立ち位置がTAKESHIだった。
高校生の時、胡桃は彼の声を聞いて忘れられなくなった。ライブは今回で三回目。
古参には少ないと言われそうだが、金銭の余裕がないのと自制を込めて「自分が頑張ったと思ったら行く」というスタンスを続けている。だから行くライブやイベントが貴重で彼が美化されていた。
「ツアーは……どうせ当たらないし」
でも声が間近で聞けるだけでいい。それだけでにやつきが抑えられない。
チケットを眺めては握りしめて狭い部屋の中をスキップしている。
ライブの恒例企画としてチケット番号の抽選があり、見事当選したファンは楽屋に案内されて束の間、彼と話すことができる。五組という狭き門。倍率は胡桃が受けた志望校の合格率より低い。
ライブのサブイベントになっているが、胡桃は最初から期待していなかった。
それは宝くじと同じだから。
何より、自分にはふさわしくない。
憧れの彼とは世界が違うのだから。
電子レンジの音が鳴って、チケットを仕舞った後、慌てて熱くなった料理をテーブルまで持って行った。
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