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「胡桃ちゃん、今回のライブは初めて?」
「えっと、三回目です。凄く楽しかったですっ」
「良かった。いつからファンなの?」
さりげなく聞く。彼女が最後で本当に良かったと思った。
他の人々は既に退出している。
「高校の時に、剛史さんの絵を見て、それから曲を聴いて、す、好きになりました」
「俺の絵、見てくれたんだ」
「はい、黒い薔薇の絵……とても、素敵でした」
「……気持ち悪くなかった?」
実際に番組で批判された。存在しない黒い薔薇を水彩画で描いて小さな個展を開いた時に「調子に乗るな」と言われた。酷い扱いだった。
自分のありのままの感情を描いただけで誰かに見せるつもりはなかったのだが。誰にも受け入れられないと、そう思っていたのに。彼女は首を横に振った。
「剛史さんの心に引き寄せられました。ファンの皆さんも多分そう感じたと思うんですけど……剛史さんの野性が私の中に入ってきた、みたいで……えっと、上手く言えなくてごめんなさい。でも、とても惹かれたんです」
「そう言ってくれたのは君が初めてだよ」
「えっ、みんなそう思わなかったんですか」
素できょとんとしていて、剛史は笑った。自然に笑えた。
良く気づいてくれたと褒めたくなった。抱き締めたくなった。
マネージャーがスタッフと話しているのを見計らってメモ用紙を一枚破った。
CDを渡す時、時間はちょうど五分になりかけていた。手を差し出す。
「ありがとう。これからもよろしくね」
「はいっ」
彼女が手を握ってくれた時、自分の反対側の手に握っていた紙をそのまま、さりげなく彼女の手に入れて握らせた。
え、という声をよそにマネージャーが「お時間です」と無理矢理引き裂く。
分かっていたけど、今だけはコイツが恨めしかった。彼女となら一時間でも一週間でも一緒にいていいのに。
とぼとぼと楽屋を出て行った彼女を見送って、握手した右手を広げる。
「剛史さん、今あの子に」
「……なあ結羽、お前は一目惚れって信じてる?」
マネージャーが息を呑んでいた。
それを無視して、右手をそっと股に寄せる。
生温かい。
彼女はどう反応するだろう。これは賭けだ。
どうか、俺が望む反応をしてほしいと、剛史は初めてファンに願っていた。
「えっと、三回目です。凄く楽しかったですっ」
「良かった。いつからファンなの?」
さりげなく聞く。彼女が最後で本当に良かったと思った。
他の人々は既に退出している。
「高校の時に、剛史さんの絵を見て、それから曲を聴いて、す、好きになりました」
「俺の絵、見てくれたんだ」
「はい、黒い薔薇の絵……とても、素敵でした」
「……気持ち悪くなかった?」
実際に番組で批判された。存在しない黒い薔薇を水彩画で描いて小さな個展を開いた時に「調子に乗るな」と言われた。酷い扱いだった。
自分のありのままの感情を描いただけで誰かに見せるつもりはなかったのだが。誰にも受け入れられないと、そう思っていたのに。彼女は首を横に振った。
「剛史さんの心に引き寄せられました。ファンの皆さんも多分そう感じたと思うんですけど……剛史さんの野性が私の中に入ってきた、みたいで……えっと、上手く言えなくてごめんなさい。でも、とても惹かれたんです」
「そう言ってくれたのは君が初めてだよ」
「えっ、みんなそう思わなかったんですか」
素できょとんとしていて、剛史は笑った。自然に笑えた。
良く気づいてくれたと褒めたくなった。抱き締めたくなった。
マネージャーがスタッフと話しているのを見計らってメモ用紙を一枚破った。
CDを渡す時、時間はちょうど五分になりかけていた。手を差し出す。
「ありがとう。これからもよろしくね」
「はいっ」
彼女が手を握ってくれた時、自分の反対側の手に握っていた紙をそのまま、さりげなく彼女の手に入れて握らせた。
え、という声をよそにマネージャーが「お時間です」と無理矢理引き裂く。
分かっていたけど、今だけはコイツが恨めしかった。彼女となら一時間でも一週間でも一緒にいていいのに。
とぼとぼと楽屋を出て行った彼女を見送って、握手した右手を広げる。
「剛史さん、今あの子に」
「……なあ結羽、お前は一目惚れって信じてる?」
マネージャーが息を呑んでいた。
それを無視して、右手をそっと股に寄せる。
生温かい。
彼女はどう反応するだろう。これは賭けだ。
どうか、俺が望む反応をしてほしいと、剛史は初めてファンに願っていた。
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