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珈琲
珈琲-2-
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「……何食べる?胡桃ちゃんの好きなもの食べていいよ」
そう言われてメニューを見ると、普通に入る店の倍以上の値段が並んでいて瞬きを繰り返した。
「ほ、ほんとに高いですね」
「まあ安心して。君よりは大人だし働いているから、それなりにお金はある方だと思うぞ」
笑いながら眼鏡を外して、じっとこちらを眺めてくる。
何を選ぶのか待っているのだろうか。恥ずかしくなって俯く。
自分の好きなものは何だっただろう。
「えっと……じゃあ、この肉料理で」
「うん。意外に肉食系か、いいな」
どう良いのか分からなかったけど、褒められたみたいで嬉しくなった。
スタッフに諸々注文した後、会話が始まる。
主に剛史が胡桃に質問してきた。年齢、学生なら勉強していること、休日の過ごし方、好きなこと、最近の発見とか。軽い話をして胡桃も場慣れしてきた。彼の相槌は優しくて、時折話してくれる内容も面白かった。聞き上手だし話し上手で、緊張がどんどん解れてくる。
この人は沢山の人に好かれるだろうなと今更ながら思った。
メインディッシュのハンバーグを食べていると、ふいに彼は尋ねてきた。
「胡桃ちゃんは彼氏いないの?」
「えっ」
ナイフとフォークの手が止まった。
急に微妙な所を突かれて少し黙る。
「……あ、ごめん。聞かない方が良かったかな」
「……いえ……いません……」
小声で呟く。
顔を上げると、彼の表情が柔らかくなって、笑ったような。
気のせいかもしれない。
「た、剛史さんはやっぱりいるんですか?ファン会とかで言われてますけど」
「……どうだろうね。ご想像にお任せにしておこうかな」
微笑む顔には余裕があった。
やっぱりいるんだろうなと納得する。
見た目も中身も素敵な彼を女性が放っておくはずがない。
耳元で「愛してる」って囁かれたら、胡桃は身も心も蜂蜜のように蕩けてしまうだろう。
器用に動かす手の指。
これに触られたら過敏に反応するだろう。
フォークをそのまま口に頬張る。
その唇でキスをされたら、きっと気持ち良いのだろう。
(っ……なに考えてるの私)
顔が真っ赤になって必死で首を横に振る。
どうしてこんな事を妄想してしまうのか。
「顔、赤いけどどうした」
「な、な、なんでもないです」
「……ほんと可愛いな」
その声でまた可愛いなんて言わないでほしい。耳が機能しなくなってくる。
肉の味が分からない。美味しかったはずなのに、頭の中は剛史の事ばかり考えている。
目の前の彼の仕草に、いちいち反応している。
そう言われてメニューを見ると、普通に入る店の倍以上の値段が並んでいて瞬きを繰り返した。
「ほ、ほんとに高いですね」
「まあ安心して。君よりは大人だし働いているから、それなりにお金はある方だと思うぞ」
笑いながら眼鏡を外して、じっとこちらを眺めてくる。
何を選ぶのか待っているのだろうか。恥ずかしくなって俯く。
自分の好きなものは何だっただろう。
「えっと……じゃあ、この肉料理で」
「うん。意外に肉食系か、いいな」
どう良いのか分からなかったけど、褒められたみたいで嬉しくなった。
スタッフに諸々注文した後、会話が始まる。
主に剛史が胡桃に質問してきた。年齢、学生なら勉強していること、休日の過ごし方、好きなこと、最近の発見とか。軽い話をして胡桃も場慣れしてきた。彼の相槌は優しくて、時折話してくれる内容も面白かった。聞き上手だし話し上手で、緊張がどんどん解れてくる。
この人は沢山の人に好かれるだろうなと今更ながら思った。
メインディッシュのハンバーグを食べていると、ふいに彼は尋ねてきた。
「胡桃ちゃんは彼氏いないの?」
「えっ」
ナイフとフォークの手が止まった。
急に微妙な所を突かれて少し黙る。
「……あ、ごめん。聞かない方が良かったかな」
「……いえ……いません……」
小声で呟く。
顔を上げると、彼の表情が柔らかくなって、笑ったような。
気のせいかもしれない。
「た、剛史さんはやっぱりいるんですか?ファン会とかで言われてますけど」
「……どうだろうね。ご想像にお任せにしておこうかな」
微笑む顔には余裕があった。
やっぱりいるんだろうなと納得する。
見た目も中身も素敵な彼を女性が放っておくはずがない。
耳元で「愛してる」って囁かれたら、胡桃は身も心も蜂蜜のように蕩けてしまうだろう。
器用に動かす手の指。
これに触られたら過敏に反応するだろう。
フォークをそのまま口に頬張る。
その唇でキスをされたら、きっと気持ち良いのだろう。
(っ……なに考えてるの私)
顔が真っ赤になって必死で首を横に振る。
どうしてこんな事を妄想してしまうのか。
「顔、赤いけどどうした」
「な、な、なんでもないです」
「……ほんと可愛いな」
その声でまた可愛いなんて言わないでほしい。耳が機能しなくなってくる。
肉の味が分からない。美味しかったはずなのに、頭の中は剛史の事ばかり考えている。
目の前の彼の仕草に、いちいち反応している。
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