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誕生日
誕生日-2-
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『彼女が喜ぶ誕生日プレゼント』
『二十歳の誕生日のおすすめ』
『絶対に喜ばれるプレゼント10選』
そんな画面をスマートホンで眺めつつ、剛史はため息を吐いた。
「仕事前にそんなため息吐かないでください」
結羽が毒づく。テーブルに顔を伏せた男を見てこちらもため息が出そうだ。
これから収録だというのにメイクの最中からスマートホンと睨めっこしては息を吐く事を繰り返してばかりいる。
呆れつつも苦笑いした。
恋人ができたと聞いた時は諸々考えて慌てたが、これまでの恋愛とは違う様子だった。
剛史が明らかに楽しそうで、軽快にステップを踏むように仕事をこなしている。
どうやら今の彼女は彼に良い影響を与えている、かもしれない。
まだ付き合って数ヶ月しか経っていないので様子見ではある。
マネージャーとしては恋愛に夢中になるなんて御法度だと言いたいが……一人の男、剛史の古い友人としては大いに恋愛してほしいと思っているので、仕事の悪影響にならない限り結羽は見守る立場を変えないつもりでいる。
あと普通に、剛史がこうやって恋愛に四苦八苦しているのを見るのは面白い。
顔を上げて頬を膨らませているこの男。
子どもっぽい表情はギャップを感じて喜ぶファンが多いのだ。
「彼女に何をあげたらいいのか悩んでるんだよ。結羽も良い知恵ないのか」
「そういうのは気持ちでしょ。あと、俺がどうこう言っても剛史さんはどうせ納得しないから何も言わないだけです」
”どうせ”を強調されたので黙る。
「……まあ、そうだな」
また息を大きく吐いて画面に目を向ける。
あまり重いと彼女も困るだろうし、でも二十歳という節目の大きなイベントなのだから印象を、強く印象づけてやりたい。ただの剛史の独占欲かもしれないけれど。
彼女が喜んでくれるもの。
そして、できれば、毎日剛史を感じてくれるものが良いと密かに思っている。
「……あ」
それは、プレゼント候補の中に出てきた。
一瞬で画面に釘付けになった。
――剛史さん、好き
耳から彼女の吐息が聞こえてくる。
仕事前なのに呼吸が乱れてしまいそうだった。
「いいかも」
「お、その様子は良いもの見つけたみたいですね」
「……うん」
「では一旦置いて、仕事モードに切り替えてくださいね」
はいはい、と言って鏡の自分をじっと見つめる。
TAKESHIとして切り替えるための儀式だった。
本来の俺はこの鏡にしまい込んで、仕事のTAKESHIが体に乗り移る。
誰とでもコミュニケーションが取れる良い人に。
体の熱はとっくに引いていて、一息ついた後、楽屋からゆっくりと出て行った。
『二十歳の誕生日のおすすめ』
『絶対に喜ばれるプレゼント10選』
そんな画面をスマートホンで眺めつつ、剛史はため息を吐いた。
「仕事前にそんなため息吐かないでください」
結羽が毒づく。テーブルに顔を伏せた男を見てこちらもため息が出そうだ。
これから収録だというのにメイクの最中からスマートホンと睨めっこしては息を吐く事を繰り返してばかりいる。
呆れつつも苦笑いした。
恋人ができたと聞いた時は諸々考えて慌てたが、これまでの恋愛とは違う様子だった。
剛史が明らかに楽しそうで、軽快にステップを踏むように仕事をこなしている。
どうやら今の彼女は彼に良い影響を与えている、かもしれない。
まだ付き合って数ヶ月しか経っていないので様子見ではある。
マネージャーとしては恋愛に夢中になるなんて御法度だと言いたいが……一人の男、剛史の古い友人としては大いに恋愛してほしいと思っているので、仕事の悪影響にならない限り結羽は見守る立場を変えないつもりでいる。
あと普通に、剛史がこうやって恋愛に四苦八苦しているのを見るのは面白い。
顔を上げて頬を膨らませているこの男。
子どもっぽい表情はギャップを感じて喜ぶファンが多いのだ。
「彼女に何をあげたらいいのか悩んでるんだよ。結羽も良い知恵ないのか」
「そういうのは気持ちでしょ。あと、俺がどうこう言っても剛史さんはどうせ納得しないから何も言わないだけです」
”どうせ”を強調されたので黙る。
「……まあ、そうだな」
また息を大きく吐いて画面に目を向ける。
あまり重いと彼女も困るだろうし、でも二十歳という節目の大きなイベントなのだから印象を、強く印象づけてやりたい。ただの剛史の独占欲かもしれないけれど。
彼女が喜んでくれるもの。
そして、できれば、毎日剛史を感じてくれるものが良いと密かに思っている。
「……あ」
それは、プレゼント候補の中に出てきた。
一瞬で画面に釘付けになった。
――剛史さん、好き
耳から彼女の吐息が聞こえてくる。
仕事前なのに呼吸が乱れてしまいそうだった。
「いいかも」
「お、その様子は良いもの見つけたみたいですね」
「……うん」
「では一旦置いて、仕事モードに切り替えてくださいね」
はいはい、と言って鏡の自分をじっと見つめる。
TAKESHIとして切り替えるための儀式だった。
本来の俺はこの鏡にしまい込んで、仕事のTAKESHIが体に乗り移る。
誰とでもコミュニケーションが取れる良い人に。
体の熱はとっくに引いていて、一息ついた後、楽屋からゆっくりと出て行った。
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