哀歌-miele-【R-18】

鷹山みわ

文字の大きさ
40 / 52
香水

香水-4-

しおりを挟む
履いていたボクサーパンツを降ろす。彼女の赤いスカートを大きく捲った。
互いの下着にはもう染みが付いていた。興奮した吐息が部屋で共鳴し合う。
隣にあった淫らな香水をさらに自分自身に掛けた。官能的な貪る匂い。自分と彼女の中で赤い花が咲き乱れている幻覚。もう、自分達が薔薇になって交配しているようだった。


どうやら俺自身もこの匂いに犯されてしまったらしい。


「今日は、誕生日だから、胡桃の望み、聞きたい」
「っ……たけしさんいじわるです……」
「言って?……何が欲しい」


ふふっと笑う。
本当は限界をとっくに超えているが、無理矢理押し込んで彼女の声が聞きたかった。
彼女自身の声で望んで欲しかった。

胡桃も普段なら言葉にするのも恥ずかしくて口を閉じてしまうが、香りに犯された体はもう言うことを聞かない。
泣き叫ぶように、目の前の男に望んだ。


「欲しいです……剛史さんの……くださいっ」
「もちろんっ」


両足が彼の腰に、両腕が首に巻き付く。彼の右腕が胡桃の後頭部を支えるように回されて、肌が密着した。
どこにも隙間なんて作りたくなかった。ぴったりと重なるように、まるで最初から一つの花だったように。
熱くて大きな欲望の塊。それに答える自分のずぶ濡れの欲。二つが入り乱れていく。剛史の血流がそのまま流れてくるようだった。声が止まらない。


「く、ん……勝手に奥までいく……」


控えめな声で耐える。でもずるずると彼女の蜜に誘われていく。力はほとんど入れていないのに、彼女の中が引き締まってここまで来いと引っ張るよう。自分の余裕はあとどれだけ残っているか。


「ああぁ……だめ、かってに……」
「すっげえ嫌らしい顔してるな」


顔が良く見える。見えすぎて、彼のにやついた顔が大きく映る。
おかしい。ほんの少しの薔薇の香りだけでこんなに狂うなんて思わなかった。
今の自分は飢えていて、彼の存在しか分からなくて、彼が欲しくて堪らない。
だから、もっと奥に、秘密の場所に来てほしい。


「来たよ」


低い声が耳に届く。裏側を舌で舐められて半分意識を持っていかれた。
大好きな彼が確かにいると分かる場所。体に纏わり付く匂いと汗。ぐちゃぐちゃに混ざり合った何か。
うごいて、と呟いた瞬間から激しく体が上下に揺れた。
歯を食いしばる彼の声と姿。甲高くなった自分の声。余裕も羞恥も全部消えた。もちろん理性も消えた。
既に動きは速くて、間隔も狭くて、息は途切れ途切れだった。ここまで行程を端折って、まるで獣のようだと胡桃は感じた。薔薇の花じゃなくて、互いを求め合う野獣。

体に注がれて満たされていく。自分の本当の姿が形成されていくよう。剛史といる時だけ、本来の体が出来上がるのかもしれない。呼応するように動く。何度も何度も突かれて甘美が巡っていった。

上下左右に滅茶苦茶に絡み合って、どこかの骨が鳴る音もした。ベッドの中で踊り狂う二人。
男臭いもの、女の芳香、汗と薔薇のむさ苦しい匂いが溶け合って発酵する。
剛史と胡桃という人間の概念がバラバラに分解されて一つに融合していくみたい。
その接合部は香水だった。



互いの絶頂を伝える間もなく、強く締め付けて、上り詰めて……
やがて、ゆっくりと息を吐いた。
緩やかになる鼓動と呼吸する体は目の前の恋人を見つめる。
爛々と輝く瞳は既に濡れていた唇を捉えて、引き寄せられた。重ねた後にもう一度目を合わせた。
体は動かない。互いが自分の一部であると刻まれる。腕も足も解きたくなくて胡桃は無我夢中でしがみついている。


「……すごく乱れてたな……俺達」
「あんな剛史さん、はじめて見た……」
「俺も、胡桃があんなに悶えるの、初めて見たよ」


秘密を共有したようで嬉しくなって笑う。互いしか知らない“欲望”の形だった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています

紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、 ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。 「もう君は、僕の管理下だよ」 退院と同時に退職手続きは完了。 住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。 外出制限、健康管理、過保護な独占欲。 甘くて危険な“保護生活”の中で、 私は少しずつ彼に心を奪われていく――。 元社畜OL×執着気味の溺愛社長 囲い込み同棲ラブストーリー。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...