哀歌-miele-【R-18】

鷹山みわ

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プール

プール-1-

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ショッピングモールは夏休みが明けて落ち着きを取り戻しつつある。平日は人がまばらになっていた。
ファッションはまだ暑い日が続いているのに、秋の特集コーナーとしてブラウンやベージュといった温かみのある服が陳列していた。そんな中で、隅に追いやられた夏物がある場所に胡桃と美歩はいる。在庫が少なくなった浴衣や日焼け対策のグッズ、そして今日の目的でもあった……


「どっちが良いと思う?」


美歩が二つの水着を持って聞いてきた。
右手にはヒョウ柄で赤いワンピースのもの、左手には縞模様の青いオフショルダーのビキニ。
対象的だが、柄はどうしても入れたいらしい。
自分が着ないもので胡桃は迷ったが、左手の水着を指す。


「ヒョウ柄は狙ってる感じになるかな。こっちの青い方が美歩ちゃんの大人な雰囲気が出る気がするなあ」
「んー、なるほどね。じゃあ胡桃推しのこれにするか」


何度か頷いて買い物カゴに青いビキニを入れる。胡桃のカゴには既に美歩と選んだ黄色いフリルが付いたスカートの水着が入っている。未だに似合うか不安だが、美歩のセンスは信頼しているので買う覚悟はできている。


週末にプールに行く約束をした。
夏休み真っ最中では人混みで楽しめないから、と二人で計画を立てて時期をずらして大型施設の屋外プールに行く。大学生はありがたい事に休みが長い。来年からは卒論も始まるし、今のうちに楽しんでおこうという魂胆である。
胡桃は体育の授業以来に水着を買った。誰かに見せるなんて考えた事もなくて、海に行った時も私服のままだった。


「コスメのセールだけ見てくるね」と美歩は手を振って離れた。会計をするために胡桃はレジへ向かおうとした。
ふと、セールの中に50%オフと赤札で貼られた水着があった。無造作に散らばっている中で、吸いこまれるように一つを手に取った。


――剛史の顔が脳裏に浮かぶ。
頬を吊り上げて自分を見つめる目。この水着になった自分をねっとりと眺めて……「欲しい」と呟く声。


明らかに男を惑わせるような形と色だった。
胡桃は黄色の水着の下にそれを隠して一緒にレジへ持っていく。
ほんの少し前まで自分がこんな行動をするなんて考えられなかった。


あの人は、潜んでいた私の内面をどんどん浮き彫りにしていく。


嫌ではなかった。彼に染められる自分は、嫌いではなかった。


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