Your Best idol〜夏休みに、高校生やめてアイドルになる。失敗続きの俺があなたの最高になるまで〜

あさ田ぱん

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三章

33.希望の家

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「『シンデレラフィット、YBIの朝ごはん』は、抽選でファンの子の家に行って、朝ごはん作って食べたら、履けなかったズボンが入るって企画なんだろ?何で食べたのに、ズボンが入るんだよ?」
「前日ソウマが行ってダイエットして、翌朝すごい痩せてんの。だから響が朝ごはんつくっても、着れなかった服がシンデレラフィットしちゃうんだよ!」
「へ~、つまりソウマと響の対決企画なんだ~?」
「でも、響が朝ご飯を作るだけでもいいかなって」
「え?それはフツーすぎないか?」

   お前の企画にしては…、と、マコトの話を聞いたソウマは怪訝な顔をする。

「響が作るから大丈夫」
「ははーん、罰ゲームってこと?」
「そうそう、ファンの子入れて、誰が食べるかロシアンルーレット的にわいわいするのも楽しいかなって」
「おい、二人とも…!」

 俺は我慢できなくなって、マコトとソウマに言い返した。

「一生懸命つくったのに、酷いんだけど」
「うんうん、ひどいひどい!ソウマ、酷いぞ!」
「俺は全部食べてる。酷いのは食べなかったマコトだよ!」
「うん、酷いのはマコト…。マコトお前、『シンデレラフィット』って言いたいだけだろ!」

   俺に言い返されたマコトはうーん、と顎を指でトントンと触りながら何か考えている。

「閃いた……!シオンの家に、アポ無しで行って響がご飯を作る!」
「え、それってなんか、普通じゃね?」
「冷蔵庫の中にある物だけでつくるんだそ?誰が食べるかゲームで決めたりして、楽しいだろ?」
「それで何で登録者が増えるんだよ?」
「前の配信のとき、シオンの部屋みたいってリクエストあったし…。その動画は登録者限定配信にする」

 マコトは自信満々かつ楽しそうだ。もう完全に行く気になっている。

「でもさー、社長に許可取らないとまずいんじゃね?」
「うーん。そっか。じゃあ聞いてみる…」

   ソウマにまずいと言われて、マコトは早速、社長に電話をした。散々揉めているのに、電話できる関係ってすごい。俺は母さんに連絡なんかできないから、イマイチ、社長とマコト達の関係が理解できない。

「オッケーだって!」
「「いいの?!」」
「じゃあ、さっそく行こうぜ!」
「今、昼ごはん食べたところだけどぉ?!」

  ソウマはマコトに『朝ごはんじゃねーじゃん』と抗議したが、聞き入れられなかった。マコトはすぐに準備を開始する。

   念の為、フライパンなどの調理器具を持っていこうとなり、俺だけがマコトがいつもつけているエプロンを着用した。

 準備を開始して、少ししたところで外が何だかうるさい事に気がついた。何だろうと言いながら窓をあけたソウマが、口をぱくぱくさせてマコトのところに飛んで来る。

「ちょ、、っ!そとぉー!外見て!」
「…え…?」

   ソウマに引っ張られて窓の近くまで行って、驚いた。窓の外に、人がたくさんいる……!

   しかも、窓の側にマコトが立つと、外からは歓声が上がった。外にいる女の子の殆どが「マコトー!」と、名前を呼んでいる。

「前々から付けられたり待ち伏せはあったけど、ここまで集まって数が多いのは初だよね?まさか、恋愛ガチ勢の暴走…?!」

  カナタの呟きが聞こえているのかいないのか…。マコトは驚いて固まっている。

 一体、何でこうなった…?

 戸惑っていると、玄関のインターフォンがピンポンピンポンと連続で鳴った。室内モニターで応答すると、画面いっぱい、先日もやって来た大家のおばあちゃんが写っている。

「ちょっとー!あんた達!家賃払わない上にこの騒ぎは一体なんなの!?苦情がすごいんだけど!」
「す、、すみません!!」

 マコトは慌てて玄関に走った。俺と、カナタ、ソウマも後に続く。

「直ぐに帰ってもらうようにいいます!」
「当たり前…!」

   大家さんの隣を通り過ぎて、外に向かって廊下を走る。玄関ホールを出るやいなや、ファンの女の子に囲まれた。

「ちょ、、ちょっとみんな…!困るよ!俺たち以外にも、他に住んでる人、沢山いるから!」

 マコトは声を荒げるでもなく、むしろ、ファンの女の子達を落ち着かせるため、できるだけ落ち着いた口調で話をした。

「えー、でもマコトくん、ビンボーなんでしょ?」
「親も頼る人もいない、孤児だって!」
「だから私たち差し入れ持ってきたの…!」
「はい?!」

   何故か、俺たちがビンボーだって事がバレている。彼女達はそれを心配して、わざわざ寮まで来てくれたらしい。中には米袋を持っている子までいる。

「そ、そんな心配いらないよ!大丈夫だから」
「でも、こんな汚いところに住んでるし…」
「服もいつも古着だし、みんな痩せてるし…」

   いやそれは、とマコトは口籠る。視線をキョロキョロと動かすと、やがて一点で止まった。どうやら、誰かを見つけたらしい。

「あの、何でそんな噂になってるか教えてくれない?」
「あ~、あれだよー、掲示板!」
「そうそう、それ!それに、YBI警察から書き込みあって!」
「マコトくんの昔の写真アップされた後、ビンボーなのに整形なんか出来るわけないって…」
「え……」

   呆然と一点を見つめるマコトの視線の先を追うと、そこには笑顔の花音ちゃんがいた。

 マコトは真面目な顔をすると、集まったファンの女の子達に頭を下げる。

「色々、心配かけてごめんなさい。でも本当に大丈夫だから。いつも応援してもらってるのに、その上、個人的に色々プレゼントをもらうことは、事務所に禁止されているので受け取れません。でも、心配してくれたことは嬉しい。ありがとう」

  マコトはそこまで一気に言うと、更に頭を下げた。

「他の住人の方に迷惑をかけると、ここにいられなくなる可能性もあります。だからここには来ないで欲しい。お願いします」

 マコトは言い終わると、顔を上げた。少し柔和な表情になると、口元に人差し指を立てる。『静かに』のサインだ。
  
「今度はちゃんと、こんな服じゃなくて、ステージで会おう!」

   『バイバイ』は口パクで言って、マコトは手を振った。何人かの女の子は、感極まったのか泣きながら手を振っている。

 俺たちは玄関の前で、全員が帰って行くのを手を振って見送った。

「いっちゃったね…」
「ああ…」
「米はもらっても良かったんじゃねーか?」
「そうだよね。粉もんはもう飽きたもんね…」

 全員見送った…。
 俺たちは安心して、事務所へ戻るためマンションの玄関へ向かう。

 古びたマンションの扉を開けると、なんと玄関ホールに花音ちゃんがいた。


「……あのさぁ、どういうつもり?」
「マコトくん、そんなに睨まないでよ。こわ~い!」

   マコトは花音ちゃんを睨みつけている。

「お前しかいねーだろ。タクミに何聞いたか知らねーけど、これ以上何かやるなら出禁にする」
「マンションの写真貼ったのは私だけど、それ以外私、何も知らないよ?マコトくんの昔の写真貼ったのは私じゃない。勘違いだよ」
「写真…?」
「見てないの?超かわいいかった。それだけ…!」

   花音ちゃんは手を振ると笑顔で帰って行った。
 俺たちは階段を駆け上がって、急いで事務所へ戻る。大家のおばあちゃんにみんなで頭を下げてから部屋に入り、掲示板を確認した。

「この写真…」
「……かわいい」

 『マコトは昔から顔同じだよ』との書き込みに合わせて貼られたその写真には今と同じ顔の、でも確実に小さいマコトと数人の子供が、『希望の家』と書かれた看板の前で写真に収まっている。『希望の家』を検索した人が、児童養護施設であると書き込みをしたらしい。
 更に、事務所の写真が貼られ、『こんなビンボーなのに、整形のお金なんかない』との投稿がされている。

 一連の投稿は、『YBI警察が言ってるから間違いない』と話題になり、『マコトを助けよう!』と、女の子達は今日、集まったようだ。
 
 投稿を見たマコトは、黙り込んでしまった。

「…やっぱ、シオンの家に行くのは明日にしよう」
「…そうだな」

   マコトは下を向いたまま、玄関の方へ向かった。

 マコトは以前、親のせいで何度も姓が変わった、親はいないと発言していた。詳しく聞いたわけでは無い。本人も言いたく無いんだろう。
 マコトの表情は見えないけど、触れられたくない過去に触れられて、揺れる気持ち…、何となく分かった。

 俺はリュックをつかんで、玄関までマコトを追いかけた。

「マコト…!えっと、何か買って来て。これ、、財布…。俺の全財産!」

   リュックを押し付けられたマコトは、目をぱちぱちさせて俺を見た。

 俺は必死だった。さっき小さい子供のマコトを見たからか、幼い子供みたいなマコトがちゃんとここに帰って来られるか、すごく心配になってしまったのだ。

   マコトはリュックを受け取ると、笑顔になった。

「じゃあさ、一緒に買いに行こ」


 俺は機械人形みたいに何度も頷いて、マコトと寮を出た。スーパーに向かって、午後の灼熱の道を二人、無言で歩いて行く。

 スーパーについたら、話し合ってはいなかったけど、精肉コーナーに直行した。
 
「今日は肉、食べたい!」
「俺も!あと、米…!」
「買っちゃおーぜ、響のお金で…♡」
「いいよ。また、マコトに貸しが増えた」

   俺を見たマコトは、目をまん丸にして、瞼をぱちぱちさせる。

「えーと、貸しがふえたから…、ちゃんと帰って来てよ」
「はは、帰って来てもなにも、今、響が一緒じゃん」

   迷子になりようないし、と言って、マコトは笑う。

「俺の家はYBIだ。YBIがあるとこが俺の家。だからそのうち、場所はタワマンになるかもだけど…ちゃんと帰るよ」
「タワマン?でも俺、高所恐怖症…!」
「じゃあ低層階にしてやるよ、しょーがねえな」
 

   俺たちは沢山買い物をして、低層階の、ボロマンションへ帰った。でもそこは間違いなく、今の俺たちの家。唯一無二、俺の居場所。ファンに心配されるほどボロいけど、希望だらけ。
  
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