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四章
49.脅し
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「地下アイドルが記者会見して、記者って集まるの?」
思わず疑問が口をついた俺に、マコトは上機嫌で答える。
「プロテインのアンバサダー就任ライブにもメディアが入ってたじゃん。あんな終わり方して、気になってると思うんだよね?その辺りに声かけて、あと、オンライン配信すれば、見てくれる人も増えると思う」
「でも、証拠は…?今のままだと…」
証拠がない、ってなると…。一方的に告発したとなると、逆に名誉毀損ってことにならないか?
「証拠はギリギリまで考える。響も考えてよ。頼りにしてる。あとは…」
「あとは?!」
「演技力で押す…!」
「演技力?!」
黒のスーツを買わなくちゃ、とマコトは楽しそうだ。記者会見って、楽しくないよね?絶対…!
「ところで、場所はどーするの?ここ、は無理だよね?」
「うーん、どうしよう?『記者会見、場所』…っ、と…」
「「「「……」」」」
ネットで場所を検索し始めたマコトを見た俺たちは、顔を見合わせた。コイツ、本気だ…!俺たちは今まで、マコトの本気を止められたことが一度もない。
全員、覚悟を決めたのだが…。
「記者会見は、俺一人でやる」
「でも…!」
一人でやる、とマコトは宣言した。
いくら何でもそんな矢面に、マコトだけ立たせる訳にはいかない…!と、食い下がろうとしたのだが、ソウマは俺の肩に腕を回して、引き止めた。
「響、記者会見はマコトに任せようぜ。告発タイムで失敗しまくりの俺とかいたらさ、マコトもフォローしきれないじゃん…」
「ソウマ…」
「マコトを信じようぜ」
ソウマは照れたようで、誤魔化すように俺から離れると、カナタにプロレス技を掛けている。
それで俺は、もう出るとは言えなくなってしまった。
騒いでいる二人を無視してマコトは少し真剣な顔をして、俺を見つめた。
「響、俺を信じてよ」
「うん…」
よし、とマコトは勢いよくカナタとソウマの方へ振り向いた。
「カナタ、ここの会場予約しといて。SNS告知は俺やるから。当日の配信準備よろしく。じゃ、俺スーツ買いに行ってくる」
マコトは指示を出すと、一人で出掛けて行ってしまった。本当に、やる気だ…。
記者会見に向けて、マコトの武器になる物を、何か渡したいけど…。
自分で出来ることは、今まであったことを振り返ってネットで調べるくらいしかない。さっきうるさいから切った電源をもう一度、立ち上げた。
立ち上げたと同時に、留守電のメッセージが表示される。通話アプリだけじゃなく、電話番号自体を着信拒否設定しておくんだった…。
留守電の文字起こし機能によって『寮まで迎えに行く』と母からメッセージが入っていることを知り、かなり慌てた。
「ちょっと出てくる…!」
「響…?」
ここに、母に入られるのは嫌だった。自分のやっと見つけた居場所を、あの人に荒らされたくない。
『駅に行く』
とメールして、寮を出た。
最寄駅に行く途中、ショートカットして公園を通った。いつも皆んなで練習している公園…。
もう夕方とは言え、まだまだ暑いし、明日は月曜ということもあって、人影はまばらだ。しかしその中に、見知った人がいた。
「シオン……」
シオンはこの暑い中、練習していたのだろうか。汗でTシャツが濡れている。
俺の呼びかけに気がつくと、逃げ出そうとした。
「待てよ…!」
先回りして道を塞ぐと、観念したのか、俺を睨みつける。
「シオンあのさ、この間の『告発タイム』の、マコトへの告発なんだけど…、あれ書いたの、シオンだよね?」
「はあ…?」
「それだけじゃ無い。前から俺に、脅迫みたいなの送ってたのも、シオンだろ?」
「……どこにそんな証拠があるんだよ?」
シオンは『何だよそれ!』と怒ったりはしなかった。それってもう、肯定と同じだと思うけど…。
「シオンから来た最後のメール、ネットスラング使ってた。他の、画像共有でも使われてて。同じだなって」
「そんなのは、誰でも使うじゃん」
「そうだけど、二回目の脅迫の時は、周りにYBIのメンバーしかいなかった。それと同じってことは…」
「すごい自信…。俺以外の他のメンバーには、嫌われてないと思ってるわけ?」
「確かに、その線も考えた。でも、東京ドームの駅の嫌がらせ…あれは間違いなくシオンだろ?マコトがトイレで犯人とすれ違ってる。女子だから、YBI警察だと思ってたけど…あれもシオンだ」
「女なんかいっぱいいる」
「うん、だから、あの時の防犯カメラを確認すれば分かると思う。今から被害届を出して……」
「………」
シオンは黙って、逃げようとした。俺は、シオンの腕を掴んで引き止める。
「離せ…!」
「シオン、今までのこと、全部許す。だから、この間の告発のことだけは嘘だって証言してくれよ!」
「そんな事くらいで、、俺を脅す気?」
脅し…。そうとられても、構わない。YBIがなくなるくらいなら…。
「そうだよ。証言しないなら、逆にこのことを暴露する。『氏ネ』って書いてあるの、結構やばいんじゃ無いの?」
「くそっ!変に賢いから嫌だったんだ…!お前は!!」
シオンは俺から逃れようと、めちゃくちゃに暴れ出した。最近、運動をしていたからか、シオンが女の子だからか…。案外、平気だった。
シオンが暴れるのを、どうしたものかと堪えていると、背後から声をかけられた。
「響、何してるの…?!」
声を聞いた途端、ぴくりと身体が震える。この声…!
「……母さん…」
「響、迎えに来たの。帰りましょう?」
思わず疑問が口をついた俺に、マコトは上機嫌で答える。
「プロテインのアンバサダー就任ライブにもメディアが入ってたじゃん。あんな終わり方して、気になってると思うんだよね?その辺りに声かけて、あと、オンライン配信すれば、見てくれる人も増えると思う」
「でも、証拠は…?今のままだと…」
証拠がない、ってなると…。一方的に告発したとなると、逆に名誉毀損ってことにならないか?
「証拠はギリギリまで考える。響も考えてよ。頼りにしてる。あとは…」
「あとは?!」
「演技力で押す…!」
「演技力?!」
黒のスーツを買わなくちゃ、とマコトは楽しそうだ。記者会見って、楽しくないよね?絶対…!
「ところで、場所はどーするの?ここ、は無理だよね?」
「うーん、どうしよう?『記者会見、場所』…っ、と…」
「「「「……」」」」
ネットで場所を検索し始めたマコトを見た俺たちは、顔を見合わせた。コイツ、本気だ…!俺たちは今まで、マコトの本気を止められたことが一度もない。
全員、覚悟を決めたのだが…。
「記者会見は、俺一人でやる」
「でも…!」
一人でやる、とマコトは宣言した。
いくら何でもそんな矢面に、マコトだけ立たせる訳にはいかない…!と、食い下がろうとしたのだが、ソウマは俺の肩に腕を回して、引き止めた。
「響、記者会見はマコトに任せようぜ。告発タイムで失敗しまくりの俺とかいたらさ、マコトもフォローしきれないじゃん…」
「ソウマ…」
「マコトを信じようぜ」
ソウマは照れたようで、誤魔化すように俺から離れると、カナタにプロレス技を掛けている。
それで俺は、もう出るとは言えなくなってしまった。
騒いでいる二人を無視してマコトは少し真剣な顔をして、俺を見つめた。
「響、俺を信じてよ」
「うん…」
よし、とマコトは勢いよくカナタとソウマの方へ振り向いた。
「カナタ、ここの会場予約しといて。SNS告知は俺やるから。当日の配信準備よろしく。じゃ、俺スーツ買いに行ってくる」
マコトは指示を出すと、一人で出掛けて行ってしまった。本当に、やる気だ…。
記者会見に向けて、マコトの武器になる物を、何か渡したいけど…。
自分で出来ることは、今まであったことを振り返ってネットで調べるくらいしかない。さっきうるさいから切った電源をもう一度、立ち上げた。
立ち上げたと同時に、留守電のメッセージが表示される。通話アプリだけじゃなく、電話番号自体を着信拒否設定しておくんだった…。
留守電の文字起こし機能によって『寮まで迎えに行く』と母からメッセージが入っていることを知り、かなり慌てた。
「ちょっと出てくる…!」
「響…?」
ここに、母に入られるのは嫌だった。自分のやっと見つけた居場所を、あの人に荒らされたくない。
『駅に行く』
とメールして、寮を出た。
最寄駅に行く途中、ショートカットして公園を通った。いつも皆んなで練習している公園…。
もう夕方とは言え、まだまだ暑いし、明日は月曜ということもあって、人影はまばらだ。しかしその中に、見知った人がいた。
「シオン……」
シオンはこの暑い中、練習していたのだろうか。汗でTシャツが濡れている。
俺の呼びかけに気がつくと、逃げ出そうとした。
「待てよ…!」
先回りして道を塞ぐと、観念したのか、俺を睨みつける。
「シオンあのさ、この間の『告発タイム』の、マコトへの告発なんだけど…、あれ書いたの、シオンだよね?」
「はあ…?」
「それだけじゃ無い。前から俺に、脅迫みたいなの送ってたのも、シオンだろ?」
「……どこにそんな証拠があるんだよ?」
シオンは『何だよそれ!』と怒ったりはしなかった。それってもう、肯定と同じだと思うけど…。
「シオンから来た最後のメール、ネットスラング使ってた。他の、画像共有でも使われてて。同じだなって」
「そんなのは、誰でも使うじゃん」
「そうだけど、二回目の脅迫の時は、周りにYBIのメンバーしかいなかった。それと同じってことは…」
「すごい自信…。俺以外の他のメンバーには、嫌われてないと思ってるわけ?」
「確かに、その線も考えた。でも、東京ドームの駅の嫌がらせ…あれは間違いなくシオンだろ?マコトがトイレで犯人とすれ違ってる。女子だから、YBI警察だと思ってたけど…あれもシオンだ」
「女なんかいっぱいいる」
「うん、だから、あの時の防犯カメラを確認すれば分かると思う。今から被害届を出して……」
「………」
シオンは黙って、逃げようとした。俺は、シオンの腕を掴んで引き止める。
「離せ…!」
「シオン、今までのこと、全部許す。だから、この間の告発のことだけは嘘だって証言してくれよ!」
「そんな事くらいで、、俺を脅す気?」
脅し…。そうとられても、構わない。YBIがなくなるくらいなら…。
「そうだよ。証言しないなら、逆にこのことを暴露する。『氏ネ』って書いてあるの、結構やばいんじゃ無いの?」
「くそっ!変に賢いから嫌だったんだ…!お前は!!」
シオンは俺から逃れようと、めちゃくちゃに暴れ出した。最近、運動をしていたからか、シオンが女の子だからか…。案外、平気だった。
シオンが暴れるのを、どうしたものかと堪えていると、背後から声をかけられた。
「響、何してるの…?!」
声を聞いた途端、ぴくりと身体が震える。この声…!
「……母さん…」
「響、迎えに来たの。帰りましょう?」
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