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はじまり
4話 新しい生活
しおりを挟む俺は今、しっぽ亭というテイルズさんの食堂を手伝っている。しっぽ亭はリベルダージという港町にあって、あの浮かぶ城のある王都ジャルジンまで船で1時間もあれば着く場所だ。
王都は海に囲まれているが出入り出来る港は少なく、防衛のため船も多く着けることが出来ないらしい。でもそのお陰で、リベルダージは王都の船着場に空きが出るまで待機する船で賑わっている。
そんな港町にある店ということもあって、色々な人種がこの店にやってくる。商人や王都で働く人々が殆どだが、殆どの人族は昼にうちの店に来る。夜は仕事を終えた獣人の傭兵がうちの店に来るからだ。
この国は、獣人への差別がある。まだ若かった前王が、獣人は呪われた種族であるから全ての地位を剥奪しろと命令し、辺境伯を含む貴族達さえ地位を剥奪したのだ。
3年後、隣国である魔族が治める国オーロスが攻めて来た。長い戦いの末に前辺境伯が指揮をとった獣人と人族の傭兵達が隣国を退けたのだ。そして英雄として名を上げた者達の中に獣人達がいたのだ。前王は獣人に対する地位剥奪の命令を撤回し、獣人に対する差別を禁止した。そして獣人差別の責をとって7年前に王位を娘に譲ったのだ。
だけど、今だに獣人達に対する差別意識は強く残っている。貴族地位にまだ獣人はおらず、王都内では獣人は奴隷以外見ないと言っていいほどらしい。そんな中、しっぽ亭は獣人差別はしてないので、夜は獣人の傭兵達でいっぱいになるのだ。
「いらっしゃいませ!お好きな席にどうぞ!」
お昼のピークを過ぎた頃、ドワーフの親方がお昼を食べに来た。
「お仕事お疲れ様です。今日はいつもより遅いお昼ですね?お仕事忙しかったんですか?」
「あぁ、ちょっと急な仕事頼まれちまってよ。時間がないが良いもの作ってやりたくてな。」
「さすが親方ですね!そういえばこの間きてた方が、親方が作った剣を凄い自慢してましたよ。
親方はやっぱり凄いですね!僕も強くなったら親方に剣を作ってもらうのが夢です!」
「ガハッハッハッ!ナートの為なら凄い剣を何本でも作ってやるよ!
それにしてもナートは接客が丁寧でえらいな!ラウラとは大違いだ!ガハッハッ!」
ドンッ!
「そりゃあ悪かったね!あんたー!親方が特製激辛スープ定食をご注文だよ!」
「あいよー!!」
「ちょっ!頼んでないよ!!俺が辛いの苦手だって知ってんだろぉ...」
「クスクスッ...でも僕に接客を教えてくれてるのはラウラさんですよ。だから僕が褒めてもらえるのはラウラさんのお陰なんです!」
「本当にナートは良い子だろ?もうここに来て3ヶ月だけど、今じゃうちの看板息子だよ!
こんな店に最近じゃ若い娘さん達もナートを目当てで来てるんだ。ここいらじゃ、ガサツな男ばっかりだからね。まだ子供のナートだけど、その丁寧な接客がまるで自分がお嬢様になったような気になるんだとよ。」
食堂の仕事は基本は問題なかった。日本では喫茶店で働いてたし、11歳の頃からマスターの側で見て覚えてきたからだ。ただ老紳士と呼ばれていたマスターの教えが身に付いてるせいか、少し丁寧過ぎてしまってるみたいだけど。
魔法はまだ習っている最中なので、混んでいる時間帯にラウラさんがしているような魔法で沢山の料理を運ぶという事はできない。料理を運ぶ際はブレスレットの魔道具を使う。それを使って沢山の料理を宙に浮かべながらお客さんの元に運ぶ光景は、今だにワクワクする。
本当は料理もしたいけど、まだそのチャンスは巡ってこない。まだ子供だし、魔法を使って料理をしているので魔法が出来ないと厨房に立たせて貰えないのだ。
因みにこの世界の食べ物は基本、塩か素材の味といった感じだ。日本みたいにケチャップやマヨネーズ、味噌、醤油、ソースと言った調味料は見た事がない。甘味はきび砂糖と蜂蜜が使われている。意外と普及しているが、ケーキやクッキーと言った類のお菓子は見た事がない。基本は紅茶に入れたり、酸っぱい果物に掛けたりジャムを作ったりするぐらいである。
あとはパンが硬い!あんな硬いパンしか無いのだから、ケーキなんて夢のまた夢だろう...俺は日本でマスターに、喫茶店で出すお菓子を教えてもらっていたが、食べるのも大好きなスイーツ男子だったのだ。はぁ~、美味しい甘い物食べたい。
「ナート!親方に激辛スープを持ってっとくれ!」
「はい!お待たせしました。激辛スープ定食です。」
「お、おぅ。ありがとうよ...」
親方はすでに涙目ですこし可哀想だったが、ドワーフの親方が涙目で辛いスープをちびちびと食べてる姿はちょっと可愛い。
「ナート!そろそろ先生のところに行く時間だろ?行っといで。」
「あっ、はい!ありがとうございます!」
俺はしっぽ亭で手伝いをしながら、街の皆に先生と呼ばれているレイバン・アケーリ先生に魔法と文字を教わっている。
レイバン先生は凄い魔法使いだった。王都の魔法学院で学院長をしていたが、引退してこの街に移住してきた。本当はもっと田舎に行きたかったらしいが、魔法使いで1、2を争う者が王都から遠く離れてしまっては困ると国から言われ、ここに落ち着いたらしい。
そういえば初めて魔法の授業は上手くいかなかったな...
「いいかの、魔法というのはどうやって水や風、火、雷、光が起こるのかを知らないと上手く使う事ができん。さらに思い描く力も必要なのじゃ。まずは簡単に水を生成するところから初めようかの。
我々の周りには水の元というのが存在する。
目には見ることが出来ないくらい小さいが、存在しているのじゃよ。その水の元が集まり大きくなると水となる。
ではどうやって集めるかだが、我々には自分の周りに魔力を纏っておる。その魔力を動かして、水の元を集めたりするじゃ。
しかし魔力を動かす為に集中するのは大変での。それを補う為に杖と、魔法の言葉というのがあるのじゃ。
杖に魔力を集めて、その杖が魔力を大きくし、集めたい水の元をかき集めるように杖で円を描きながら水の元を集めていくと、段々雲のような白い渦が出来てくる。そこで水を思い浮かべながら、魔法の言葉を唱えるのじゃ。
水を出す場合は<アグア>じゃ。<アグア>と唱えると白い渦が一ヶ所に集まり水の球となった水が出来る。これが水を生成する魔法じゃ。さぁ、さっそくチャレンジじゃ!」
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