異世界に渡ったら獣人だった!

小猫田猫助

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はじまり

6話 試験と覚悟

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「さて、今日はこの間話した通り試験じゃ。これから隣町へ向かう道の途中に広がっておるカンポスという平原の奥の森で、一角ウサギを狩ってもらうぞ。
 いいかの?一角ウサギは初心者が狩れるような魔物だが素早くて角は鋭い。油断して大怪我をする者も多くおる。決して侮るで無いぞ!」
「はい!気をつけます!」
「ではカンポスまで身体強化して走るぞ。ついて来れるかの?」

 先生が身体強化して走ると、まるで馬が全速力で駆けてるような速さになる。

「先生。街道を走って行くんですか?」
「そうじゃ!一本道で飛ばしやすいしの。」
「無理です。街道は人の往来が多いですから、先生は避けられますが、僕は先生について行こうとすると、人を避ける余裕はありません。」
「む...それはそうじゃの...。というか自信満々に出来ぬと言うでない!
 まぁでもお主の言う通りじゃ、飛んで行くことにしようかの。風魔法の制御がまだまだだから、訓練にちょうどいいの。魔力の消費を節約していくんじゃぞ!向こうについて、狩れなくなっては困るからの。」

 うっ...試験前にそんな魔力の消費が激しい事をさせるなんて、悪魔の指導者め!
 しっぽ亭の常連客に、レイバン先生に教えて貰える事になったと話した事がある。

「悪魔の指導者に!?い、いやレイバン先生に教えて貰えるなんて凄い事だよ!
 ただ俺には無理だ!くじけるなよ!頑張れ!」

 って言って励まされたな...悪魔の指導者と陰で呼ばれるほど、先生の教えはキツイ事で有名らしい。笑顔で無理を言ってきて苦しんでる姿(レイバンとしては頑張ってる姿)を見ては喜んでいる様は悪魔のようで、悪魔の指導者というあだ名はピッタリだ。

「ほれ、行くぞ!<ヴェント>」

 先生はそう言うといつの間にか、飛ぶための柄の長い傘の様な道具を出して飛んでいた。
 飛ぶための道具は色々あるが、どれも風を受けやすい物が主流だ。さらに道具には魔石が付いていて、飛ぶ道具の魔石は重力を軽減する魔石が付いているらしい。
 傘型は傘としても使えるし、柄を長くして足を掛けられる様にもなっている。傘に強化魔法を掛ければ、盾としても使えて便利な道具だ。
 背中に背負う翼型のものは、飛びやすく速く移動できる。長距離や戦いの時ならば、このタイプが使いやすい。
 荷物を運ぶのはそり型だ。いわゆるサンタクロースが使ってるようなタイプだ。ただ荷物が重く魔力を多く使うので、大概は翼のある動物に引かせる。
ヤンイーという、翼が4枚ある大型の鳥などである。日本の世界だと恐竜時代の鳥のイメージだ。
 俺はもちろん便利で安い、傘型の道具を使っている。杖と傘を出し傘に足を掛けたら、自分の周りに風が起こる様に杖を振り呪文を唱える。

「<ヴェント>」

 フワリと浮かび上がった。そこからは、ひたすら風をコントロールして傘で風を受け飛んで行くが、コントロールが難しい。魔力をなるべく消費しないように、吹いている風を利用しながらカンポスまでたどり着いた。

「うむ、なかなか風を掴むのも上手くなったの。もっと魔力を消費して疲れているかと思ったが、つまらんの。」
「先生、つまらなくないです。」
「さて、あの奥の森の中に魔獣がおる。一角ウサギを少なくとも3頭狩ってくるのじゃ。そのウサギによって角の質も違うからの、良い角を持ったウサギを見つけるんじゃよ。
 時刻は5つの陽の刻までじゃ。わしは茶でもしながら此処で待っておるからの。強い魔獣もおるから、なにか問題が起こったらこれを飛ばしなさい。
 ...覚悟は決まっておるか?」
「はい!大丈夫です!行ってきます!」

 そう言って先生から銀色の伝書カラクリ鳥を受け取り平原の奥に進んだ。
 平原の奥にある森の入り口に早速一匹の小さな一角ウサギが現れた。ウサギは逃げる事もせずこちらを威嚇してくる。しかし小さすぎる...これでは杖にはならない。小さな一角ウサギを観察していたら、大きな一角ウサギが現れた。こちらをやはり威嚇している。これは親子だよな?ちょっとこの子達は倒したくないな...他を探すことにした。
 次に見つけたのは、珍しい黒い角の一角ウサギだった。どうやって倒そうか?火の魔法じゃ角が傷つく、水で窒息させるのはなんだか酷だし、風魔法でカマイタチみたいに攻撃するのが一番かな。杖を構え風で切る様に杖を振る

「<コルタドール>!」

 思い切り外してしまった。いや...本当はわざと外したのだ。さっき倒さなかったのは親子で同情したからだと思う、でも今回は...。
 俺は今まで魔法を習ってきたが、何処かゲームの様な感覚だったのだと気がついた。しかし今、初めて命を奪うという事に直面して躊躇した。この世界を現実として実感し、俺は怖くなったのだ。
 む、無理だ...そう思った瞬間、一角ウサギは素早い動きで俺の脚に突き刺さってきた。

「いっ痛い"っ!!あ"ぁぐあぁ!!あっ脚がぁ!!」

 慌てて刺さっている一角ウサギを抜こうとした矢先、ウサギは俺の脚を蹴って角を引き抜き、また攻撃態勢を整えた。

 まずい!このままじゃまた刺される!!

 ウサギが飛びかかってきた瞬間、俺はウサギに向かって攻撃した!

「<コルタード>!!」

 黒い角の一角ウサギは目を開けたまま痙攣し、血を流し絶命した。
 俺が...俺が殺したんだ...脚の痛みも忘れウサギを眺めていた。そうだ...角を外さなきゃ...血抜きもして...肉を異次元ポケットに入れなきゃ...俺は自分の脚に治癒を掛けるのも忘れ脚を引きずりながら、持っていた短剣で教わった通りにウサギを解体する。終わった...俺の顔は涙とウサギの血で汚れていた。

「痛っ!!やばいな...結構深く刺さった所為で色々なところまで傷ついてる...俺では治せないな...」

 すると先生がいつの間にか側に来ていた。

「せ、先生、あの...」
「話は後じゃ、今は治すことが優先じゃ。」

 先生の杖が光り、温かい光が傷を包み傷が中から徐々に治っていく。

「どうじゃ?動かしてみなさい。」
「何処も痛くないです。ありがとうございます。」
「今日の試験は一先ずここまでじゃ。なぜ怪我をしたのかわかっておるな?」
「はい...俺の覚悟が出来ていなかったからです。」

 そう、先生は覚悟が出来ているか聞いていた。俺はその覚悟が、危険のある森へ入る覚悟だと思っていたが、実際は命を奪う事に対する覚悟だったと今気がついたのだ。
 問われていた意味さえわからないくらい、命を奪う事を現実として考えていなかった自分が恥ずかしかった。
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