男の子たちの変態的な日常

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89 変態盗撮〜後編〜

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 お尻丸出しの、しかもウ◯チをしてる写真を撮られるだなんて……。
 せっかくのクリスマスだというのに僕はそのことで頭がいっぱいになっていた。
 変質者は近いうちに電話をしてくると言っていた。今は丁度冬休みだから、普段学校の授業があるときより、電話をするタイミングが計りやすいだろう。
 いつ電話がかかってくるのかと思うと恐い。変質者なんかと話したくない。でも、変質者は僕の恥ずかしい写真を持っている……。
 僕は1人、ぶるっと身体に悪寒が走るのを覚えた。
 あのとき、力を入れて締めようとしてもできなかった僕のアナルが心理的な影響でキュッと締まった。あれからずっとお尻や股間の羞恥部分を意識しつづけている。
 僕は朝からずっと自分の部屋にいた。
 もしかしたらそろそろ電話があるのではないかと、不安になり始めたまさにその時、僕のスマホに着信があった。
 恐る恐る、スマホを耳に当てた。

「もしもしですぞwwwアキラ殿でござるかwww」

 嫌な響きの声が鼓膜を打つ。あの変質者だ。

「お願いだから、あの画像を消してぇ……」

 スマホで聞く声は闇から響いてくるような独特の恐怖を感じた。

「デュフフwwwまあまあ、そんなことより今日のクリスマスを拙者と過ごすでござるよwww」
「なんでアイドルの僕がお前みたいな変質者と過ごさないといけないんだよッ!」

 自分の脱糞写真を撮ったいやらしい悪辣な変質者とクリスマスを過ごすだなんて到底耐えられない。

「つれないでござるなぁwww拙者のようなクリスマスの夜を独りぼっちで過ごす哀れなキモオタには慈悲をかけてほしいものですぞwww」
「お前みたいな気持ち悪い性犯罪者に慈悲なんて必要ないもんねぇ~だッ! 独りでシコリながらネットでリア充に怨念でもぶつけてろ!」
「そう言わずに会うでござるよwwwクリスマスの夜を一緒に過ごしたら恥ずかしい画像は消すと約束しますぞwww」
「本当ぉ⁉︎ ちゃんと消してくれるの⁉︎」

 画像を消すという言葉はすぐには信じられないが、少しでも可能性があるならばと期待してしまう。

「もちろんですぞwww拙者は変態紳士であるからして、約束を破ったことは一度もないでござるよwww」
「紳士なら、そもそも盗撮なんてしないよ……」

 僕は不信感を露に抵抗する。排泄画像で脅し、大胆に電話してくるような変質者の言うことなんて、簡単に信じられるはずがなかった。

「拙者はただ独りぼっちでクリスマスの夜を過ごすのが嫌なだけでござるよwwwこうでもしないと拙者のようなモテない変態紳士は誰にも相手にされないゆえ仕方なかったのですぞwww」
「そんなこと言って、僕にエッチなことする気なんでしょ?」
「ドプフォwwwそんなエッチなことなんて変態紳士である拙者がするわけないですぞwww性欲はエロ同人で十分満たしているでござるwww」
「嘘だッ、僕にエロ同人みたいなことする気なんでしょ⁉︎」
「オウフwwwストレートな質問キタコレですねwwwおっとっとwww拙者『キタコレ』などとついネット用語がwwwいや失敬失敬wwwフォカヌポウwww拙者これではまるでオタクみたいwww拙者はオタクではござらんのでwwwコポォ」 
「いや、どっからどう見てもキモオタなんですが……」

 僕はもう、ぐすんとしゃくりあげそうになるくらい、つぶらな瞳に涙を溜めている。あうぅと、嘆くような溜め息までついた。変質者を信じることは出来ない。
 電話の最後に、僕は一方的に待ち合わせ場所を指定されて、そこに来いと強要された。
 僕は弱々しくどこか諦めたように、ゆっくり立った。


ーーー


 指定された待ち合わせ場所は秋葉原だった。自宅からはかなり距離があり、わざわざ電車に乗って来た。しかも指定されたのは目立たないようにショップの前などではなくて、電気街の入り口に当たるあまり広くない道路の交差点だった。
 僕は電車に乗って揺られるうち、途中で何度も引き返してしまいたい衝動に駆られた。だが、僕の羞恥心など屁とも思わないような変質者のことを思うと、恐くて仕方がなかった。気づいたら、秋葉原まで来ていた。
 僕は急に胸がドキドキし始めた。
 電気街の通りに差しかかると、すぐ変質者の姿に気づいた。変質者はすでに交差点に来て待っていた。
 横断歩道の向こうから手招きされた。
 僕が恐る恐る近づいていくと、笑いを含んだ眼でじっと見つめられた。
 ちょっと上目遣いに変質者を見てしまって、歩みがのろくなる。少したじろいでしまう。

「我が庭へ、ようこそでござるwww」

 変質者は手をつなごうとした。変質者の家に連れていかれそうな気がして恐い。

「画像を消してぇ~」
「心配無用ですぞwww安心するでござるwww」

 電話でも画像のことで泣きついたが、また哀願すると、変質者は笑って頷いた。
 僕の二の腕を「美味しそうでござるwww」と言って指でさすり、そして手を握った。
 嫌がってちょっとその手を引いてしまうが、離してくれない。手を振り払う勇気はなかった。
 変質者は手をつないで歩いていく。僕はおどおどして、視線は落ち着きなく揺れた。
 互いに沈黙すると、変質者も間が持てないのか、

「赤い糸で結ばれた運命の2人は性なる夜に1つとなるでござるwww」

 急に不気味なことを言い出した。変質者が言うと、『聖なる夜』が『性なる夜』に聞こえるから不思議だ。
 僕は何とかしたいという焦る気持ちと、排泄画像を握られているというアイドルとして致命的な弱みの狭間で悩み、悶えている。
 あの異常な恥ずかしい画像を見られたくない……。逃げ出したい気持ちよりも、その羞恥心の方が勝ってしまう。

「あッ」

 握った手の小指と薬指を伸ばして、太腿に触られた。手を狭い幅だが振るたび触ってくる。
 僕は前を見つめ、変質者の指の感触を味わってしまう。
 来たことのない電気街を不安なまま歩かされ、やがて狭い路地の方に折れていった。

「拙者はあそこに住んでるんですぞwww」

 変質者が急にそう言って、ボロアパートを指差した。
 まもなくそのボロアパートの前まで来た。
 小汚いボロなエレベーターに乗って3階で降りると、そのすぐ手前が変質者の部屋だった。

「僕は絶対入らないからね。エッチなことされるのは嫌だから」

 いざ変質者の部屋に入るとなると、さらに恐くなった。話をするだけで画像を消してくれて何もされないなんて、やっぱり信じられない。

「デュフフwww大丈夫ですぞwww」

 変質者は誤魔化そうとするように懸命に言い、ドアの鍵をガチャガチャと音を立てて開けた。
 肩に手を回された僕は「らめぇ」とむずかって、ドアに背を向けた。
 ドアを開けた変質者に正面に立たれて両肩をつかまれたので、また「らめぇ」と小さく悲鳴をあげて肩をすくめる。そのままくるりと前を向かされて強引に中に入れられた。
 ワンルームの部屋に入った僕は、背中を押されて椅子に座らされ、ノートパソコンで画像を見せられた。

「いやぁッ、消してぇ!」

 モニターを睨んで悲鳴をあげた。

「焦らないでほしいですぞwwwちゃんと消すでござるwww」

 変質者はマウスを握る僕の手を上から握って、画像をスライドショーで次々に見せていった。どの画像も眼を覆いたくなるような恥ずかしいシーンばかりで、僕は泣き顔で首を振りたくり、「消して、消して」と哀願を繰り返した。
 変質者はお気に入りフォルダをクリックして、さらにストリップ動画のフォルダを開いた。
 見せられたのはストリップのゲイビデオで、ピンクの照明に照らされた男の子が円形のステージで踊り出した。見たこともない腰を振る卑猥なダンスだった。

「服を一枚一枚脱いでいきますぞwwwアキラ殿にもやってほしいでござるwww」
「いやぁ、そんなことやりたいないよぉ~」

 男の子が妖しいムードの音楽に合わせてベリーダンスを踊っている。派手な衣装を上から脱いでいく。

「せっかく撮った最高の写真を消しちゃうんだから、何か交換条件がないと困りますぞwww」

 こんな恥ずかしいストリップが交換条件なんてありえない。

「一緒にクリスマスを過ごすだけで消すって言ったじゃんか。約束が違うよ!」
「だから、アキラ殿がストリップをしながら拙者とクリスマスを過ごすわけですぞwww拙者がアキラ殿にエッチなことをするわけではないゆえ約束通りでござるwww」
「そんなのただの屁理屈だよ、嘘つきぃッ!」

 ストリップの映像を見せられ、それを要求されて、恥ずかしさと騙された悔しさで涙が溢れそうになる。だが、変質者に両肩をつかまれて椅子から立たされた、

「ストリップして、ウ◯チ画像削除でござるwwwそれで、めでたし、めでたしですぞwww」
「いやぁん」
「アキラ殿が約束を破るなら、拙者も約束を破るでござるwww」

 服の上から胸を触ってきた。僕は「イヤ~」と身をよじるが、変質者はボタンを1つ外して手を侵入させた。

「らめぇ、イヤ~ッ!」

 肩を抱かれて、乳首をいじられた。

「さあ、脱ぐですぞwww」
「うわぁ」

 僕は口を開いたまま視線がか弱く揺れた。聞き慣れない淫らな音楽にも心を乱される。今にも脚から崩れてうずくまってしまいそうになった。
 音楽に合わせて服を脱ぐなんて、恥ずかしくてできない。急かす変質者と眼が合って、イヤイヤと首を振る。
 変質者がちょっと離れたかと思ったら、形がビデオカメラに似た小さなデジカメを持っていた。

「イヤ~、撮らないでぇ」

 カメラを向けられると、それだけで眉をひそめ、泣きそうな顔になった。排泄写真を撮られたことがトラウマになっている。
 変質者はデジカメの液晶モニターを横に開いて見ている。動画撮影されながら、音楽に合わせて自分で服を脱ぐなんて恥ずかしくてとてもできない。その場で身体が凍りついている。

「さっさと脱ぐでござるwwwさもないと……デュフフwww」
「ああう……」

 僕はとうとう気がくじけてしまい、服のボタンに指をかけた。
 恐る恐るボタンを1つだけ外したが、そこで指が止まった。

「さあ、早く脱いで拙者にアキラ殿の全てを見せるのですぞwww」

 急かされて、僕は泣きそうな顔になる。
 変質者が余裕の笑みを浮かべた瞬間、バンッと部屋のドアが開いた。

「ファッ⁉︎ お前はあの時の!!!」

 変質者の叫び声が部屋中に響くと、僕もドアの方を見やる。
 目をこらすと、視線の先にリョウとカスケがいた。

「やっぱり、ぼくの予知能力に狂いはなかったよ」
「久しぶりにカスケの超能力が役に立ったなぁ。今日のところは褒めとくぜ」

 デジカメをしまおうとしている変質者に向かってリョウが走る。

「あの時の借りを返す時がきたでござるwww」

 変質者はリョウに殴りかかっていった。
 リョウは顔面をかばいながら、左足で変質者の勃起しっぱなしの股間を蹴りあげた。

「ひでぶッ!」

 変質者は股間を押さえて身をかがめた。
 リョウは変質者のさがった頭をつかんで、その顔面に、ごっすと膝を叩き込んだ。変質者は1発で、ぐらりと倒れてしまった。失神したのか、そのままピクリとも動かない。

「リョウ、今日はアキラを家まで送ってく役は譲ってあげるよ。ぼくはコイツのパソコンを初期化しておくからさ」
「サンキュー、カスケ。アキラ、今日は2人っきりでクリスマスを過ごそうぜ♡」
「2人ともホントにありがとう……」

 僕はギュッとリョウに抱きついた。
 クリスマスの性なる夜はリョウに身も心も捧げた。
 リョウにとって1番のクリスマスプレゼントは僕自身だ。
 男の子の変態的な日常を楽しんでくれている全ての人へ心からの感謝を込めて僕から平成最後のメリークリスマス♡
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