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神との闘い編
43 友情パワー
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「んッ、う~ん……うぅん……」
塞がれたミントの唇の奥からくぐもった喘ぎが洩れた。
「あぁ……あぁあああ~」
内腿を無遠慮に這いまわる指先が、異様な快感を生み出す。か細い羞恥の声が食いしばった唇からほとばしった。下肢をわななかせ、イヤイヤと首を振りたてる。
「恐れることはない。君も私のコレクションに加えてあげるとしよう♡」
と、神様が満足げに微笑んだ、その時――!
「――調子に乗ってんじゃねえッ!」
叫び声とともに、窓の外から白い光が飛び込み、神様の背中に突き刺さった。次いで鋼色の飛影が数条、疾る。
神様の背中に、白木の杭と鋼鉄の矢がいく本も突き立った。
ミントの身体が神様の腕から滑り落ちた。
「俺の仲間に手を出すたぁ、感心しねぇな。神様よ……」
服はズタボロ、体のあちこちに太い斬り痕が何本も刻まれている。しかし、その凛然たるイケメンっぷりは紛うことなきヒビキであった。ヒビキの背後にはゼノンもいる。
「へぇ~、ヒビキくん生きてたんだ♡」
「愛する家族を残して死ぬわけにはいかないからなぁ。まったく、あんたのせいで動けるようになるまで時間がかかっちまったぜ」
不敵な笑みを浮かべながらヒビキは顎を撫でた。
神様に谷底に落とされたヒビキだったが、間一髪突き出した枝につかまり、なんとか転落死を免れた。
その後、谷底で見つけた洞穴に身をひそめて傷を癒していたのだ。
「昔ゼノンと2人で旅してた頃を思い出したぜ――薬草で手当して、ロクに動かねえ体で食いモン探したりとかな……殺される覚悟は出来てるよなぁ~、神様」
「殺される覚悟? その覚悟をしておく必要があるのはヒビキくんの方じゃないかなぁ~♡」
神様と対峙したヒビキは激しい闘志を剥き出しにした。2人の間で、目に見えない炎がぶつかり合い、渦巻く。
ゼノンは床に倒れていた僕とナギサに気がついた。
「おい、テメエッ! ミライたちに何をした~ッ⁉︎」
ゼノンの表情がたちまち怒りに染まった。殺気がオーラとなってゼノンの身体から噴きあがる。
筋肉が膨張して、ゼノンの体は普段の倍ほどにふくれあがった。ヒビキすらも一目置く超パワーは、岩は砕き、大木を粉砕する――まさに破壊と殺戮の化身だった。
「おい、ゼノン待てッ! 落ち着くんだ!」
ヒビキの制止を無視したゼノンが跳ぶよりも早く、神様が指パッチンすると、うなりをあげた白炎がほとばしり、2人の体を打ち払った。
「ぐがあぁッ!!!」
ヒビキとゼノンはまともに攻撃を喰らい、反対側の壁まで吹き飛ばされた。
轟音をあげて叩きつけられた2人は床にくずれ落ち、壁の破片に埋まった。
「ミライくんたちは私の城に連れて帰って、じっくり貪り尽くすとしよう♡ まだミライくんたちを取り返したいなどと夢見ているのなら私の城まで来るがいい。まあ、君たちが来れるとは到底思えないけどね~」
「……ま、待てぇ~ッ!」
急いでヒビキは窓辺に駆け寄ったが、夜空にはただ風が渦巻くばかりだった。
ーーー
「さて、これからが大問題だ。どうする……」
のほほんとした声でヒビキはつぶやく。あたかも目の前のパズルを、どう解くかと考えているような表情である。
だが、飄々とした顔つきとは裏腹に、胸の内はかなり深刻だ。
激しい焦燥感に駆られて飛び出したものの、相手は恐るべき力を持つ神様。
冷静に考えれば不安ばかり湧き起こってくるはずだが、ヒビキは不敵に微笑む。
重傷の身とは思えないスピードでヒビキとゼノンの残映が駆け抜けていく。
ヒビキとゼノンは、城を囲む巨大な鉄壁に挑んでいた。
2人は両手に装着した登攀用の鉤爪で壁面に張りつき、手慣れた様子でよじ登っていく。
登りはじめて数分後、早くもそそり立った城壁の頂きが見えるところまできた。急峻だが、ケタはずれのスケールを別にすれば、彼らにとって、どうということのない障害だ。
「さて……あと、ざっと20メートルって、ところか――」
上端まで目測し、ヒビキは腰にさげたロープを放った。先端に金属製のフックをつけた特製の細く強靭なロープは楽々と上まで届き、軽く引くと鋭い鉤がどこかに引っかかった手応えがかえってくる。ロープの端をハーケンで固定し、スルスルと伝って城壁を這いあがっていった。
ひと足先に頂きへ着いていたゼノンの傍らに立ち、ヒビキは城壁の内側を一望する。
「――ヒビキ、本当に大丈夫なのか?」
「ああ、なんとかな――神を倒すくらいまでなら保つだろう」
心配するゼノンへヒビキは静かな、しかし確固たる意志を秘めた声で応える。
「俺たちなら出来るさ。たとえ相手が世界を滅ぼせるだけの力を持った神だろうとな」
「ああ、オレたちにだって世界を滅ぼすことが出来るだけの力があるんだ。神だろうが恐れる必要はないぜ!」
ニッと不敵に笑うゼノンへ、ヒビキはうなずきかえす。お互いを信じ合っているからこそ、2人は神を相手に闘志を燃やすことが出来るのだ。
ゼノンは寄り添うように立つヒビキを見つめた。瞳に力強い光が蘇っていた。
「ここに神がいるのか――それにしても馬鹿デカい塔だな」
「だな――さて、さっさと片付けるとしようぜ、ヒビキ」
ゼノンの頼もしい言葉に友情パワーを感じたヒビキは、もはや誰にも負ける気がしなかった。
塞がれたミントの唇の奥からくぐもった喘ぎが洩れた。
「あぁ……あぁあああ~」
内腿を無遠慮に這いまわる指先が、異様な快感を生み出す。か細い羞恥の声が食いしばった唇からほとばしった。下肢をわななかせ、イヤイヤと首を振りたてる。
「恐れることはない。君も私のコレクションに加えてあげるとしよう♡」
と、神様が満足げに微笑んだ、その時――!
「――調子に乗ってんじゃねえッ!」
叫び声とともに、窓の外から白い光が飛び込み、神様の背中に突き刺さった。次いで鋼色の飛影が数条、疾る。
神様の背中に、白木の杭と鋼鉄の矢がいく本も突き立った。
ミントの身体が神様の腕から滑り落ちた。
「俺の仲間に手を出すたぁ、感心しねぇな。神様よ……」
服はズタボロ、体のあちこちに太い斬り痕が何本も刻まれている。しかし、その凛然たるイケメンっぷりは紛うことなきヒビキであった。ヒビキの背後にはゼノンもいる。
「へぇ~、ヒビキくん生きてたんだ♡」
「愛する家族を残して死ぬわけにはいかないからなぁ。まったく、あんたのせいで動けるようになるまで時間がかかっちまったぜ」
不敵な笑みを浮かべながらヒビキは顎を撫でた。
神様に谷底に落とされたヒビキだったが、間一髪突き出した枝につかまり、なんとか転落死を免れた。
その後、谷底で見つけた洞穴に身をひそめて傷を癒していたのだ。
「昔ゼノンと2人で旅してた頃を思い出したぜ――薬草で手当して、ロクに動かねえ体で食いモン探したりとかな……殺される覚悟は出来てるよなぁ~、神様」
「殺される覚悟? その覚悟をしておく必要があるのはヒビキくんの方じゃないかなぁ~♡」
神様と対峙したヒビキは激しい闘志を剥き出しにした。2人の間で、目に見えない炎がぶつかり合い、渦巻く。
ゼノンは床に倒れていた僕とナギサに気がついた。
「おい、テメエッ! ミライたちに何をした~ッ⁉︎」
ゼノンの表情がたちまち怒りに染まった。殺気がオーラとなってゼノンの身体から噴きあがる。
筋肉が膨張して、ゼノンの体は普段の倍ほどにふくれあがった。ヒビキすらも一目置く超パワーは、岩は砕き、大木を粉砕する――まさに破壊と殺戮の化身だった。
「おい、ゼノン待てッ! 落ち着くんだ!」
ヒビキの制止を無視したゼノンが跳ぶよりも早く、神様が指パッチンすると、うなりをあげた白炎がほとばしり、2人の体を打ち払った。
「ぐがあぁッ!!!」
ヒビキとゼノンはまともに攻撃を喰らい、反対側の壁まで吹き飛ばされた。
轟音をあげて叩きつけられた2人は床にくずれ落ち、壁の破片に埋まった。
「ミライくんたちは私の城に連れて帰って、じっくり貪り尽くすとしよう♡ まだミライくんたちを取り返したいなどと夢見ているのなら私の城まで来るがいい。まあ、君たちが来れるとは到底思えないけどね~」
「……ま、待てぇ~ッ!」
急いでヒビキは窓辺に駆け寄ったが、夜空にはただ風が渦巻くばかりだった。
ーーー
「さて、これからが大問題だ。どうする……」
のほほんとした声でヒビキはつぶやく。あたかも目の前のパズルを、どう解くかと考えているような表情である。
だが、飄々とした顔つきとは裏腹に、胸の内はかなり深刻だ。
激しい焦燥感に駆られて飛び出したものの、相手は恐るべき力を持つ神様。
冷静に考えれば不安ばかり湧き起こってくるはずだが、ヒビキは不敵に微笑む。
重傷の身とは思えないスピードでヒビキとゼノンの残映が駆け抜けていく。
ヒビキとゼノンは、城を囲む巨大な鉄壁に挑んでいた。
2人は両手に装着した登攀用の鉤爪で壁面に張りつき、手慣れた様子でよじ登っていく。
登りはじめて数分後、早くもそそり立った城壁の頂きが見えるところまできた。急峻だが、ケタはずれのスケールを別にすれば、彼らにとって、どうということのない障害だ。
「さて……あと、ざっと20メートルって、ところか――」
上端まで目測し、ヒビキは腰にさげたロープを放った。先端に金属製のフックをつけた特製の細く強靭なロープは楽々と上まで届き、軽く引くと鋭い鉤がどこかに引っかかった手応えがかえってくる。ロープの端をハーケンで固定し、スルスルと伝って城壁を這いあがっていった。
ひと足先に頂きへ着いていたゼノンの傍らに立ち、ヒビキは城壁の内側を一望する。
「――ヒビキ、本当に大丈夫なのか?」
「ああ、なんとかな――神を倒すくらいまでなら保つだろう」
心配するゼノンへヒビキは静かな、しかし確固たる意志を秘めた声で応える。
「俺たちなら出来るさ。たとえ相手が世界を滅ぼせるだけの力を持った神だろうとな」
「ああ、オレたちにだって世界を滅ぼすことが出来るだけの力があるんだ。神だろうが恐れる必要はないぜ!」
ニッと不敵に笑うゼノンへ、ヒビキはうなずきかえす。お互いを信じ合っているからこそ、2人は神を相手に闘志を燃やすことが出来るのだ。
ゼノンは寄り添うように立つヒビキを見つめた。瞳に力強い光が蘇っていた。
「ここに神がいるのか――それにしても馬鹿デカい塔だな」
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