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ガタンゴトンガタンゴトン
「…あれ」
全体に靄がかかったような雰囲気、ふわふわした心地。
(あれ、私何してるんだっけ)
着慣れたセーラー服、膝の上には紺のスクールバッグ。
「あ」
7:14発急行電車、1号車2番ドア左から4番目の席に、彼はいつも座っていた。
立ち上がると175cmくらいだろうか、清潔感のある黒髪が、車内に差し込む朝の日差しに少し揺れている。
奏が彼に気付いたのは、高校1年生の6月のことだった。
奏は通勤ラッシュを避け、少し早い時間のこの電車に毎日乗っていた。
彼もいつも同じ電車の同じ位置に乗っていることに気付いてから、毎日彼に心の中で挨拶をして、今日の彼を観察するのが奏の日課になった。
今日は、英単語帳を開いていた。
奏の高校で配られたものより少しレベルが高い英単語帳。
帰りは本屋で同じものを買って帰った。
今日は、携帯を開いてはメールを打っていた。
彼女かな?あ、左手で打ってる。
左利きなのかな。
何回か左手でメールを打ってみて、面倒臭くなってすぐにやめた。
今日は、目を閉じて少し揺れながら眠っている。
今試験期間なのかな?私も一緒だよ。
普段の試験より、少し頑張れた。
今日は、何もせずぼーっと座っていた。
気付かれないように、様子を伺いながら観察する。
あ、右目はぱっちり二重だけど、左目は少し奥二重なんだ。ちょっと可愛い。
彼が着ている制服から高校はすぐに分かった。
知り合いを辿れば、きっと彼の名前や連絡先を手に入れることもできただろう。
しかし、奏にとっては毎朝、同じ空間を共にする約20分間が、毎日の宝物だった。
お互いの名前も知らない、言葉を交わすこともない、目も合わないように、気付かれないように彼を観察する毎日。
奏の初恋は、毎日毎日積もって行った。
「…あれ」
全体に靄がかかったような雰囲気、ふわふわした心地。
(あれ、私何してるんだっけ)
着慣れたセーラー服、膝の上には紺のスクールバッグ。
「あ」
7:14発急行電車、1号車2番ドア左から4番目の席に、彼はいつも座っていた。
立ち上がると175cmくらいだろうか、清潔感のある黒髪が、車内に差し込む朝の日差しに少し揺れている。
奏が彼に気付いたのは、高校1年生の6月のことだった。
奏は通勤ラッシュを避け、少し早い時間のこの電車に毎日乗っていた。
彼もいつも同じ電車の同じ位置に乗っていることに気付いてから、毎日彼に心の中で挨拶をして、今日の彼を観察するのが奏の日課になった。
今日は、英単語帳を開いていた。
奏の高校で配られたものより少しレベルが高い英単語帳。
帰りは本屋で同じものを買って帰った。
今日は、携帯を開いてはメールを打っていた。
彼女かな?あ、左手で打ってる。
左利きなのかな。
何回か左手でメールを打ってみて、面倒臭くなってすぐにやめた。
今日は、目を閉じて少し揺れながら眠っている。
今試験期間なのかな?私も一緒だよ。
普段の試験より、少し頑張れた。
今日は、何もせずぼーっと座っていた。
気付かれないように、様子を伺いながら観察する。
あ、右目はぱっちり二重だけど、左目は少し奥二重なんだ。ちょっと可愛い。
彼が着ている制服から高校はすぐに分かった。
知り合いを辿れば、きっと彼の名前や連絡先を手に入れることもできただろう。
しかし、奏にとっては毎朝、同じ空間を共にする約20分間が、毎日の宝物だった。
お互いの名前も知らない、言葉を交わすこともない、目も合わないように、気付かれないように彼を観察する毎日。
奏の初恋は、毎日毎日積もって行った。
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