きみと出逢いし、落ちこぼれ。

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第1章 猫がいなくなった

3 犯人はどこへ?

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 理科の時間のノート
6月29日
【月は、どのような特徴がある?】

・裏側が見えない。
・日にちによって月の見え方が違う。
・一周するのに28.5日
・月は自分では光らない。太陽光を受けて光っているように見える。

 伊野村は緊張していた。
 計画がバレないか、である。
 もし、猫は、誰かが故意に持ち去ったのなら。
 そして、それが——。(少年たちの探偵が活動した、と知ったなら。)
 それは考えたくなかった。
 でも考えなくちゃいけない。
 考えられるパターンは三つで、まず二つに分けてみる。
『犯人が動揺するか否か』である。
 そのことは団長も話していた。団長はうまくまとめていたので、書記の伊野村は焚き火にあたりながらノートをめくった。

「団長:これは、『所詮子供だ』と思って、みくびるか、否か。そんな意味だ。
 みくびったらおしまいだぜ。」

 とはいえ、先の、事件の怖い子供たちは、「見くびってくれ。どうか、見くびってくれ」と頼んでいた。みくびってくれれば、自分より運動神経と度胸の満点な少年たちはいくらでもいるのだ。
 そんな卑怯なことを考えていた。
 あるいは、みくびらなくてもよかった。
 そうなれば、多分猫は見つからない。
 谷津仁には申し訳ないが、探偵の仕事に傷がつく。
 そうなれば、上手く流れに乗って、『退団届』なるものを、出せやしないだろうか。
 そんなことを考えていたのだ。
 その時。足音が聞こえた。
 団長は焚き火の火を消し、近くの落とし穴の中に入るものや、木の後ろに伏せるものなどがいた。
 完全にはわからなかったが話の断片は聞き取れた。

『——ボス、張り紙ですぜ』
『ああ、そうだな。…………こどもらしい。下手くそな絵と文だ」
 
 これには内心、伊野村はムッとしたが、続きの言葉に愕然とした。

「まあ当然、あっしらには関係のないことですぜ」

(え——?)

「ところでボス、あっしは犯人を知ってますぜ」
「ほう、それは誰だ?」
「伊野村っていうガキでっせ。この前、見ました」

 伊野村は息を飲んだ。
 ああ、ばれてしまったのである!
 振り返ると、谷津仁が悔しさで顔を真っ赤にしていた。
 
 第四回会合。
 団長が伊野村を慰めていた。
 怖いくらい優しい声だった。
「なぁ」
「……?」
「哲学者たちが色々あがいても、『人生の真理』なるものが見つからない理由、知ってるか?」
「……え?」
「月ってさ、裏側見えないだろ?」
「……あ」
 それはこの前の理科で習っていた。
「それみたいに、哲学者たちは、一部分しかそれが見えない。なんなら全部人生の真理なんだよ。なんだってそうだ。でもね、それを360ピース集めないと人生は完成しないし、それは、」 
 団長が伊野村をまっすぐに見つめていた。
「なんだかロマンスを壊すみたいで、悔しく、空しくだってあるじゃないか」
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