3 / 3
第1章 猫がいなくなった
3 犯人はどこへ?
しおりを挟む
理科の時間のノート
6月29日
【月は、どのような特徴がある?】
・裏側が見えない。
・日にちによって月の見え方が違う。
・一周するのに28.5日
・月は自分では光らない。太陽光を受けて光っているように見える。
伊野村は緊張していた。
計画がバレないか、である。
もし、猫は、誰かが故意に持ち去ったのなら。
そして、それが——。(少年たちの探偵が活動した、と知ったなら。)
それは考えたくなかった。
でも考えなくちゃいけない。
考えられるパターンは三つで、まず二つに分けてみる。
『犯人が動揺するか否か』である。
そのことは団長も話していた。団長はうまくまとめていたので、書記の伊野村は焚き火にあたりながらノートをめくった。
「団長:これは、『所詮子供だ』と思って、みくびるか、否か。そんな意味だ。
みくびったらおしまいだぜ。」
とはいえ、先の、事件の怖い子供たちは、「見くびってくれ。どうか、見くびってくれ」と頼んでいた。みくびってくれれば、自分より運動神経と度胸の満点な少年たちはいくらでもいるのだ。
そんな卑怯なことを考えていた。
あるいは、みくびらなくてもよかった。
そうなれば、多分猫は見つからない。
谷津仁には申し訳ないが、探偵の仕事に傷がつく。
そうなれば、上手く流れに乗って、『退団届』なるものを、出せやしないだろうか。
そんなことを考えていたのだ。
その時。足音が聞こえた。
団長は焚き火の火を消し、近くの落とし穴の中に入るものや、木の後ろに伏せるものなどがいた。
完全にはわからなかったが話の断片は聞き取れた。
『——ボス、張り紙ですぜ』
『ああ、そうだな。…………こどもらしい。下手くそな絵と文だ」
これには内心、伊野村はムッとしたが、続きの言葉に愕然とした。
「まあ当然、あっしらには関係のないことですぜ」
(え——?)
「ところでボス、あっしは犯人を知ってますぜ」
「ほう、それは誰だ?」
「伊野村っていうガキでっせ。この前、見ました」
伊野村は息を飲んだ。
ああ、ばれてしまったのである!
振り返ると、谷津仁が悔しさで顔を真っ赤にしていた。
第四回会合。
団長が伊野村を慰めていた。
怖いくらい優しい声だった。
「なぁ」
「……?」
「哲学者たちが色々あがいても、『人生の真理』なるものが見つからない理由、知ってるか?」
「……え?」
「月ってさ、裏側見えないだろ?」
「……あ」
それはこの前の理科で習っていた。
「それみたいに、哲学者たちは、一部分しかそれが見えない。なんなら全部人生の真理なんだよ。なんだってそうだ。でもね、それを360ピース集めないと人生は完成しないし、それは、」
団長が伊野村をまっすぐに見つめていた。
「なんだかロマンスを壊すみたいで、悔しく、空しくだってあるじゃないか」
6月29日
【月は、どのような特徴がある?】
・裏側が見えない。
・日にちによって月の見え方が違う。
・一周するのに28.5日
・月は自分では光らない。太陽光を受けて光っているように見える。
伊野村は緊張していた。
計画がバレないか、である。
もし、猫は、誰かが故意に持ち去ったのなら。
そして、それが——。(少年たちの探偵が活動した、と知ったなら。)
それは考えたくなかった。
でも考えなくちゃいけない。
考えられるパターンは三つで、まず二つに分けてみる。
『犯人が動揺するか否か』である。
そのことは団長も話していた。団長はうまくまとめていたので、書記の伊野村は焚き火にあたりながらノートをめくった。
「団長:これは、『所詮子供だ』と思って、みくびるか、否か。そんな意味だ。
みくびったらおしまいだぜ。」
とはいえ、先の、事件の怖い子供たちは、「見くびってくれ。どうか、見くびってくれ」と頼んでいた。みくびってくれれば、自分より運動神経と度胸の満点な少年たちはいくらでもいるのだ。
そんな卑怯なことを考えていた。
あるいは、みくびらなくてもよかった。
そうなれば、多分猫は見つからない。
谷津仁には申し訳ないが、探偵の仕事に傷がつく。
そうなれば、上手く流れに乗って、『退団届』なるものを、出せやしないだろうか。
そんなことを考えていたのだ。
その時。足音が聞こえた。
団長は焚き火の火を消し、近くの落とし穴の中に入るものや、木の後ろに伏せるものなどがいた。
完全にはわからなかったが話の断片は聞き取れた。
『——ボス、張り紙ですぜ』
『ああ、そうだな。…………こどもらしい。下手くそな絵と文だ」
これには内心、伊野村はムッとしたが、続きの言葉に愕然とした。
「まあ当然、あっしらには関係のないことですぜ」
(え——?)
「ところでボス、あっしは犯人を知ってますぜ」
「ほう、それは誰だ?」
「伊野村っていうガキでっせ。この前、見ました」
伊野村は息を飲んだ。
ああ、ばれてしまったのである!
振り返ると、谷津仁が悔しさで顔を真っ赤にしていた。
第四回会合。
団長が伊野村を慰めていた。
怖いくらい優しい声だった。
「なぁ」
「……?」
「哲学者たちが色々あがいても、『人生の真理』なるものが見つからない理由、知ってるか?」
「……え?」
「月ってさ、裏側見えないだろ?」
「……あ」
それはこの前の理科で習っていた。
「それみたいに、哲学者たちは、一部分しかそれが見えない。なんなら全部人生の真理なんだよ。なんだってそうだ。でもね、それを360ピース集めないと人生は完成しないし、それは、」
団長が伊野村をまっすぐに見つめていた。
「なんだかロマンスを壊すみたいで、悔しく、空しくだってあるじゃないか」
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!
ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」
それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。
挙げ句の果てに、
「用が済んだなら早く帰れっ!」
と追い返されてしまいました。
そして夜、屋敷に戻って来た夫は───
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
あんなにわかりやすく魅了にかかってる人初めて見た
しがついつか
恋愛
ミクシー・ラヴィ―が学園に入学してからたった一か月で、彼女の周囲には常に男子生徒が侍るようになっていた。
学年問わず、多くの男子生徒が彼女の虜となっていた。
彼女の周りを男子生徒が侍ることも、女子生徒達が冷ややかな目で遠巻きに見ていることも、最近では日常の風景となっていた。
そんな中、ナンシーの恋人であるレオナルドが、2か月の短期留学を終えて帰ってきた。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる