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25hourのときめき 杏奈
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「もう1時間だけ、時間があったらな」
私は呟き、悔し涙を流した。
*
「ねえ、杏奈、いつ告白するの?」
やっとの思いでたどりついたアパート。
スマホを抱えて倒れこむ。
――ピロリン
また、メールが来た。
でも、私はメールの中身は確認しない。だって、余計なお世話なだけだから。
遥場由子。
由子はモテない。もともとそういう体形で、そういう性格だからだ。
由子の誕生日は3月21日で、私らのよくつるむ仲間では一番遅い。
由子が二十になった日、高校の同窓会が開かれた。非公式の同窓会。参加者は五人いなかった。
場所は焼き鳥屋だった。主役は、自然と由子になった。
由子は、酒をあおりながら、
「私はモテないから、あなただけでもがんばってね♡」と私の恋を応援する側にまわることを表明した。
……それなのに。
二十二になって、由子は、急に態度が変わった。私も恋がどへたであるということがわかったからだ。
「あなたは体だけはきれいなんだから、私にあやつらせてよ」と、意味のわからないことをいいだしたのである。
ちょうどそのころ、わたしに友達ができた。
村川伸介。
友達になってから半年で、交際がはじまった。伸介と旅行へ行くとき、名古屋駅を発った新幹線で、一言ボソリと「付き合わないか」といったのだ。
伸介は、まあ、もとからそういう男だったが、私はべつに悪い気はせず、こうしてカップルが誕生したわけだ。でも――
「もう、交際歴4年か……」
ゼク〇ィとか見ても、「交際3年を超したらそろそろ告白? Rさんの体験談」みたいな感じで。
それを見ると、さらにヤバイって感じて。
もう、堂々巡り。
交際歴が3年を超えてから、毎晩、由子が携帯にメールを送る。
最近、わたしは由子のメルアドを「迷惑メールに入れる」という設定にした。
一週間ほどは効果があったのだが、由子からLine。
「同窓会のとき、勢いで友だちになったじゃない? 同窓会の連絡ぐらいしか使ってなかったけど、これからメールはこっちに変えることにしようと思って」
ああ、うるさい。
ブロックしようかな。
でも、そしたら仲間外れにされる。
同窓会の日程が、わからなくなる――。
今日。
伸介とアパートの近くを散歩。
告白は、できなかった。
コンビニに立ち寄って、牛乳を買って、はちみつも買って、交ぜて――
お母さんの味を思い出すなぁ。
伸介の家と私の家の分岐点。
伸介に手を振って、私は曲がり角を曲がった。
「あれ? ……こんな路地裏、あったっけ?」
気になって、わたしは路地裏へ入っていった。
「25時間営業 コンビニエンスストア 〈タイムプラス〉」という文字が目に飛び込んでくる。
「25時間営業……? 〈タイムプラス〉?」
看板に書かれてある文字を、私は反芻した。
「あと、1時間あれば、告白ができたのにって、確かに言ったけど……」
意味深なそのコンビニに、杏奈は吸い込まれていった。
タイムプラスは、基本的には普通のコンビニだったが、なぜか時計が中心にあった。
そして、それが、22時45分のまま、動かなかった。
「……? 22時45分って、私が自動ドアをくぐった時間よね」
はちみつの棚と牛乳の棚から、安さだけをたよりに手にとった。
2分くらいは経過しているはずなのだが……
タイムプラスの経営理念とかいうのが、セルフレジの奥のスペースに小さく見えた。
「お客様の時間を、1時間だけプラス。1日の新定義。タイムプラス」
「1日が、1時間だけ、伸びる……?」
牛乳と蜂蜜をかかえながら、私は自動ドアをくぐった。
そして、決意した。今度のデートで、タイムプラスに寄って、そして、伸介に告白しよう。
意気揚々と足を踏み出して、でも、なんだか怖くて、振り返った。
「……あれ?」
タイムプラスはもう、そこにはなかった。
私は呟き、悔し涙を流した。
*
「ねえ、杏奈、いつ告白するの?」
やっとの思いでたどりついたアパート。
スマホを抱えて倒れこむ。
――ピロリン
また、メールが来た。
でも、私はメールの中身は確認しない。だって、余計なお世話なだけだから。
遥場由子。
由子はモテない。もともとそういう体形で、そういう性格だからだ。
由子の誕生日は3月21日で、私らのよくつるむ仲間では一番遅い。
由子が二十になった日、高校の同窓会が開かれた。非公式の同窓会。参加者は五人いなかった。
場所は焼き鳥屋だった。主役は、自然と由子になった。
由子は、酒をあおりながら、
「私はモテないから、あなただけでもがんばってね♡」と私の恋を応援する側にまわることを表明した。
……それなのに。
二十二になって、由子は、急に態度が変わった。私も恋がどへたであるということがわかったからだ。
「あなたは体だけはきれいなんだから、私にあやつらせてよ」と、意味のわからないことをいいだしたのである。
ちょうどそのころ、わたしに友達ができた。
村川伸介。
友達になってから半年で、交際がはじまった。伸介と旅行へ行くとき、名古屋駅を発った新幹線で、一言ボソリと「付き合わないか」といったのだ。
伸介は、まあ、もとからそういう男だったが、私はべつに悪い気はせず、こうしてカップルが誕生したわけだ。でも――
「もう、交際歴4年か……」
ゼク〇ィとか見ても、「交際3年を超したらそろそろ告白? Rさんの体験談」みたいな感じで。
それを見ると、さらにヤバイって感じて。
もう、堂々巡り。
交際歴が3年を超えてから、毎晩、由子が携帯にメールを送る。
最近、わたしは由子のメルアドを「迷惑メールに入れる」という設定にした。
一週間ほどは効果があったのだが、由子からLine。
「同窓会のとき、勢いで友だちになったじゃない? 同窓会の連絡ぐらいしか使ってなかったけど、これからメールはこっちに変えることにしようと思って」
ああ、うるさい。
ブロックしようかな。
でも、そしたら仲間外れにされる。
同窓会の日程が、わからなくなる――。
今日。
伸介とアパートの近くを散歩。
告白は、できなかった。
コンビニに立ち寄って、牛乳を買って、はちみつも買って、交ぜて――
お母さんの味を思い出すなぁ。
伸介の家と私の家の分岐点。
伸介に手を振って、私は曲がり角を曲がった。
「あれ? ……こんな路地裏、あったっけ?」
気になって、わたしは路地裏へ入っていった。
「25時間営業 コンビニエンスストア 〈タイムプラス〉」という文字が目に飛び込んでくる。
「25時間営業……? 〈タイムプラス〉?」
看板に書かれてある文字を、私は反芻した。
「あと、1時間あれば、告白ができたのにって、確かに言ったけど……」
意味深なそのコンビニに、杏奈は吸い込まれていった。
タイムプラスは、基本的には普通のコンビニだったが、なぜか時計が中心にあった。
そして、それが、22時45分のまま、動かなかった。
「……? 22時45分って、私が自動ドアをくぐった時間よね」
はちみつの棚と牛乳の棚から、安さだけをたよりに手にとった。
2分くらいは経過しているはずなのだが……
タイムプラスの経営理念とかいうのが、セルフレジの奥のスペースに小さく見えた。
「お客様の時間を、1時間だけプラス。1日の新定義。タイムプラス」
「1日が、1時間だけ、伸びる……?」
牛乳と蜂蜜をかかえながら、私は自動ドアをくぐった。
そして、決意した。今度のデートで、タイムプラスに寄って、そして、伸介に告白しよう。
意気揚々と足を踏み出して、でも、なんだか怖くて、振り返った。
「……あれ?」
タイムプラスはもう、そこにはなかった。
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