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第3話 つかぬこと
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「ええっと――、つかぬことをお伺いしますが、本村さん、何歳ですか?」
「は?」
いけない、変なことを聞いてしまった。祐介は思わず顔を伏せた。本村はしばし目を宙に這わせたあと、
「二十五ですけど……何か?」
「二十五ですか」
祐介は、言うべきか迷ったが「俺もです」と答えた。「二十五の雰囲気がして、思わず」
「ああ、二十五の雰囲気ですねえ。ありますよねえ、なんか。二十五、六特有の」
「そう。二十二、三とはちょっと違うんですよねえ」
「そう、そう」
話しながら、祐介は、得体のしれない雑貨屋の店長と二十五、六特有の雰囲気で盛り上がっている自分を恥じた。
「何か、ご希望の商品など、ございますか?」
ウウン、と本村が咳払いしたのを合図に、話はまた振り出しに戻った。
「ああ——。俺は、実はこの辺りの出身で」
「ほう」
本村は少し興味を持ったようだった。
「こんな雑貨屋、あったかなあ? なんて」
「……気づかれてしまいましたか」
「え?」
まさか、ここが幽霊物件だとか、そういう類なのだろうか。幽霊が出る物件というより、この建物自体が幽霊のようなものだよな、と祐介は思った。
「実はですね」
本村はまた咳払いをした。この若さに似合わず、態度だけは超然としていて、40過ぎのエリートの営業マンを思わせた。
「この雑貨屋は、——松山さん、あなたにしか見えていないんです」
「は?」
まず、なんで俺の名前を? あなたにしか見えていない、と、今、確かに言ったよな?
松山の脳裏には、さまざまなクエスチョンマークが浮かんだが、それを目の前で朗らかに笑う男が一つ一つ丁寧に解説していった。
「は?」
いけない、変なことを聞いてしまった。祐介は思わず顔を伏せた。本村はしばし目を宙に這わせたあと、
「二十五ですけど……何か?」
「二十五ですか」
祐介は、言うべきか迷ったが「俺もです」と答えた。「二十五の雰囲気がして、思わず」
「ああ、二十五の雰囲気ですねえ。ありますよねえ、なんか。二十五、六特有の」
「そう。二十二、三とはちょっと違うんですよねえ」
「そう、そう」
話しながら、祐介は、得体のしれない雑貨屋の店長と二十五、六特有の雰囲気で盛り上がっている自分を恥じた。
「何か、ご希望の商品など、ございますか?」
ウウン、と本村が咳払いしたのを合図に、話はまた振り出しに戻った。
「ああ——。俺は、実はこの辺りの出身で」
「ほう」
本村は少し興味を持ったようだった。
「こんな雑貨屋、あったかなあ? なんて」
「……気づかれてしまいましたか」
「え?」
まさか、ここが幽霊物件だとか、そういう類なのだろうか。幽霊が出る物件というより、この建物自体が幽霊のようなものだよな、と祐介は思った。
「実はですね」
本村はまた咳払いをした。この若さに似合わず、態度だけは超然としていて、40過ぎのエリートの営業マンを思わせた。
「この雑貨屋は、——松山さん、あなたにしか見えていないんです」
「は?」
まず、なんで俺の名前を? あなたにしか見えていない、と、今、確かに言ったよな?
松山の脳裏には、さまざまなクエスチョンマークが浮かんだが、それを目の前で朗らかに笑う男が一つ一つ丁寧に解説していった。
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