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33光の訓練
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三人を撫でるように爽やかな風が吹いた。
「ナデシコ、話しをしてくれてありがとう。スミレ、辛いことを思い出させてごめんね」
「キミが、謝る事なんてないんだから」
素っ気ない言葉とは違って、スミレは物静かな表情を浮かべている。
「コハク様に聞いて頂くために、麒麟が夢に現れたのだと思いますわ」
全てを心得ているとナデシコが微笑んだ。
「さっきの話しの最後から、ザクロに会えたんだね」
「はい、お会い致しました。大変良くして頂き感謝しております。私たちに生きる力を与えて下さり、呪術のことを教えて下さりましたわ」
「それじゃ、ザクロはナデシコとスミレの師匠なんだね! ボクと一緒だっ」
「そっか、そうなるのね。それって、ぼくが先輩ってことねぇー」
スミレが悪戯顔で楽しそうだ。
「二人が会った時、ザクロはお爺さんだったんたよね。想像つかないや」
コハクがクスクスと笑う。
「私は、シロガネ様の式神としてお会いした時に驚きました」
ナデシコがフフっと笑った。
「ぼくたちが、初めてザクロさまの国に行った時の王様は妹君のご子息よ。妹君に良く似てとても格好良い方だったわ。式神のザクロさまにお会いした時に雰囲気が似ていたから、すぐにわかったわ」
スミレが得意そうな顔をする。
三人は話しを咲かせた。
その後、いよいよ訓練をすることになる。
最初はナデシコだ。
ザクロと同じ光属性であっても、ナデシコは補佐を得意とする。
結界と浄化、そして回復だ。
ナデシコが歌えば、それは呪文となり術式が発動した。
コハクの周りに結界が現れる。
「スミレ」
「はい、お姉さま」
次にスミレが歌うえば、ナデシコと同じく術式が発動した。それは魔を感じた。
そして、魔素を含んだ粘着性のある魔物が現れる。
それらが、コハクに向かって飛びかかると結界に触れて消滅した。
「結界を解きます」
ナデシコが告げた。
結界が消えると、残りの魔物が再びコハクに飛びかかった。
コハクは咄嗟に腕を上げて身を庇う。
魔物がコハクの手の項に触れた。
すると、ジュッと焼かれたような痛みを感じた。
ナデシコの歌のような呪文で、魔物は消えた。
コハクの手の項は、火傷のような傷痕が残っていた。
再び、ナデシコが歌を響かせれば、手の項の傷がみるみると治っていく。
「……すごい」
「結界と浄化、そして回復です。体験して頂く為とはいえ、御身を傷つけてしまいました。申し訳ありません」
ナデシコが、丁寧に頭を下げる。
「ナデシコ、謝らないでよ。ほら、とても綺麗に治っている」
コハクは、慌てて手を見せて、大丈夫だと伝えた。
「歌うのと唱えるのに、違いがあるんだよね」
「はい。呪文よりも歌で呪や術式を発動させれば、持続付与と効能が増します」
「それはすごいや。それは、ナデシコやスミレが、巫女の資質を持っているからなんだね」
「はい、その通りでございます」
「それから、スミレは魔物の召喚ができるんだねっ」
「そうよ、低級から中級ならね。等価交換で私の呪力をあげて使役するの」
スミレは自慢げな様子だ。
コハクが、ナデシコのように歌で呪術を練習するわけにもいかない。
だから、歌を呪文に変換して術式を発動させた。
スミレの召喚した魔物を、結界と浄化で消滅させる。
そして、先ほどとは逆で、ナデシコが魔物に触れて傷を負った。それを、コハクが回復呪文で綺麗に治した。
「さすがは、コハク様ですわ」
「初めてにしては、上手だと思うわ」
二人が、結界と浄化に回復の呪術を難なくこなしたコハクを褒めた。
「ありがとう」
コハクが下を俯いて、顎を手にする。
何かを考えている様子に、ナデシコとスミレは、顔を見合わせる。
しばらく、そのままコハクを見守った。
「ナデシコは、ザクロのような攻撃はしないんだよね?」
「はい。わたくしには、攻撃は不向きでした」
「それじゃあ、防御はどうかな。自分を守りながら皆んなの補佐は出来る?」
「防御ならば、自身に結界を張りますね」
「もしも結界をすり抜けたり、破壊する強い敵がいて、襲われたら怪我をする。そうすれば、空を飛べなくなって、皆んなの補佐はできなくなるよね。って、これはボク自身の体験の一つなんだけどさ」
ナデシコは、ハッとした表情をした。
「襲われた場合の対処は……浄化でしょうか。でも、結界を壊すわけですから、効果はありませんわね。私が怪我を負えば集中力が乱れて、皆様の補佐は難しいですね」
「だけど、そんな強い敵なんていないわ」
今まで大人しく話しを聞いていたスミレが、声を上げる。
「そうだね。皆んな神使いだから、強いよね」
「そうよ」
「いいえ、万が一に備えて考えるのは良い事ですわ」
「だけど、お姉様の呪力は凄いわ」
「でも、浄化では倒せない魔物がいるのは確かですわ。そんな私が、戦う皆様を補佐が出来ずいるなんて、存在価値がありませんわ」
「ちょっと、待ってぇ、ナデシコ。ごめんね、そこまで思わなくても大丈夫だよ」
ナデシコの生真面目さを、コハクは失念していたと少々焦る。
「いいえ、コハク様。もしもを考えておくのは大切ですわ。何か、良い考えはありませんかしら」
コハクが、ザクロの為に光属性を生かした戦い方を考えた経緯を、ナデシコは知っているようだ。
コハクがポツリと大きく呟く。
「結界と浄化と回復の一体化」
コハクの中から溢れる記憶があった。それをナデシコに説明を始めた。
結界は、大きな規模になるほどに呪力が必要だ。戦いで使用する際は防衛戦、又は負傷した戦士の避難や治癒をする避難場所に使う。
浄化は、魔素の浄化や下級魔物の排除ができる。
回復は、戦況に応じて個別や全体に付与する。
状況を把握して行うは効率が悪く後衛の術者の負担になる。
なら、必要な時に必要な効果を得るにはどうしたらよいのか。
それが、結界と浄化と回復を一つにした術式。
「これなら、ナデシコの負担は減って、自身も皆んなも護られると思うんだ」
まるで、その術式を知っているような話し振りである。
「確かに、そのような事が可能でしたら……。しかしながら、結界と浄化に回復を一緒だなんて……」
「大丈夫、ぜんぜん難しくないよ。だって、すでに結界と浄化を一緒にしているよね」
「そうなのですか」
「だって結界に触れた魔物が消えたよ。これは、光属性の清浄の力の特性だ。だけど下級魔物に限る」
「ねぇ、その全部一緒の術式は、コハクが考えるの?」
スミレが話しに参加する。
「もう知っているんだと思う」
「どういうこと?」
「とりあえず、やってみるね」
コハクは目を閉じて、記憶を明瞭にしていけば、術式の呪文を思い出す。
パチリと瞳を開いて、声高らかに呪文を唱える。
「清く正しく輝く光は、ここを護り、これを浄化せし、この身を回復する力となる。払え給え、清め給え、与え給え」
一瞬、コハクを術式が包んで消えた。
「スミレ、魔物をお願い」
スミレが魔物を数匹ほど召還した。
コハクに向かって襲いかかるが、結界が阻む。そして、魔物は浄化されて消えた。
次にコハクが、故意にて結界の中に魔物をおびき寄せれば、魔物は浄化されて消えた。
再び、侵入させた魔物に故意に手を傷つければ、傷が治った。
「結界と浄化と回復が一緒に付与されたね」
「これは、とても素晴らしいですわぁ」
いつも上品なナデシコが、はしゃいでいる様子は珍しい。
「すごいじゃないっ」
スミレも一緒に感嘆する。
「ありがとう。中級魔物ぐらいなら結界で防げそうかな。けど、回復の効果が低いね。それに呪力量が思っていた以上に必要だった」
描いていた結果と違っていたので、コハクは残念そうだ。
「それでも、労力と時間を考えれば、呪力量は仕方ありませんわ。回復の効果は質が上がるように訓練を致します」
「心配入りませんわ。おねさまの呪力量は多いもの」
「持続効果は、ボクの力が足りないってことだね。出来るって事で、良しとしよう」
呪力量に依存しているだけの大雑把な術式だった。一体、何を思って考えたのか、コハクは苦笑する。
「最前線で、戦う者たちだけに付与ってな感じだね。皆一斉に戦う場合は、ナデシコだけが回復するわけじゃないし、全体回復はそっちに任せればいいか」
ナデシコは、確かにと納得しながら頷いた。
「いつか、もっと呪力を抑えられるように考えてみる」
それは、記憶が戻った時の話しだ。
「付与術式で、結界と浄化と回復が可能だと教えて下さった事に感謝しておりますわ。呪力に見合う素晴らしい術式だと思います。だって、皆様の補佐が増えることは喜ばしいですもの」
ナデシコは両手を胸で合わせて喜んでいた。
今までの一通りの話しを聞いていたスミレは、コハクを複雑な面持ちで見つめていた。
「ナデシコ、話しをしてくれてありがとう。スミレ、辛いことを思い出させてごめんね」
「キミが、謝る事なんてないんだから」
素っ気ない言葉とは違って、スミレは物静かな表情を浮かべている。
「コハク様に聞いて頂くために、麒麟が夢に現れたのだと思いますわ」
全てを心得ているとナデシコが微笑んだ。
「さっきの話しの最後から、ザクロに会えたんだね」
「はい、お会い致しました。大変良くして頂き感謝しております。私たちに生きる力を与えて下さり、呪術のことを教えて下さりましたわ」
「それじゃ、ザクロはナデシコとスミレの師匠なんだね! ボクと一緒だっ」
「そっか、そうなるのね。それって、ぼくが先輩ってことねぇー」
スミレが悪戯顔で楽しそうだ。
「二人が会った時、ザクロはお爺さんだったんたよね。想像つかないや」
コハクがクスクスと笑う。
「私は、シロガネ様の式神としてお会いした時に驚きました」
ナデシコがフフっと笑った。
「ぼくたちが、初めてザクロさまの国に行った時の王様は妹君のご子息よ。妹君に良く似てとても格好良い方だったわ。式神のザクロさまにお会いした時に雰囲気が似ていたから、すぐにわかったわ」
スミレが得意そうな顔をする。
三人は話しを咲かせた。
その後、いよいよ訓練をすることになる。
最初はナデシコだ。
ザクロと同じ光属性であっても、ナデシコは補佐を得意とする。
結界と浄化、そして回復だ。
ナデシコが歌えば、それは呪文となり術式が発動した。
コハクの周りに結界が現れる。
「スミレ」
「はい、お姉さま」
次にスミレが歌うえば、ナデシコと同じく術式が発動した。それは魔を感じた。
そして、魔素を含んだ粘着性のある魔物が現れる。
それらが、コハクに向かって飛びかかると結界に触れて消滅した。
「結界を解きます」
ナデシコが告げた。
結界が消えると、残りの魔物が再びコハクに飛びかかった。
コハクは咄嗟に腕を上げて身を庇う。
魔物がコハクの手の項に触れた。
すると、ジュッと焼かれたような痛みを感じた。
ナデシコの歌のような呪文で、魔物は消えた。
コハクの手の項は、火傷のような傷痕が残っていた。
再び、ナデシコが歌を響かせれば、手の項の傷がみるみると治っていく。
「……すごい」
「結界と浄化、そして回復です。体験して頂く為とはいえ、御身を傷つけてしまいました。申し訳ありません」
ナデシコが、丁寧に頭を下げる。
「ナデシコ、謝らないでよ。ほら、とても綺麗に治っている」
コハクは、慌てて手を見せて、大丈夫だと伝えた。
「歌うのと唱えるのに、違いがあるんだよね」
「はい。呪文よりも歌で呪や術式を発動させれば、持続付与と効能が増します」
「それはすごいや。それは、ナデシコやスミレが、巫女の資質を持っているからなんだね」
「はい、その通りでございます」
「それから、スミレは魔物の召喚ができるんだねっ」
「そうよ、低級から中級ならね。等価交換で私の呪力をあげて使役するの」
スミレは自慢げな様子だ。
コハクが、ナデシコのように歌で呪術を練習するわけにもいかない。
だから、歌を呪文に変換して術式を発動させた。
スミレの召喚した魔物を、結界と浄化で消滅させる。
そして、先ほどとは逆で、ナデシコが魔物に触れて傷を負った。それを、コハクが回復呪文で綺麗に治した。
「さすがは、コハク様ですわ」
「初めてにしては、上手だと思うわ」
二人が、結界と浄化に回復の呪術を難なくこなしたコハクを褒めた。
「ありがとう」
コハクが下を俯いて、顎を手にする。
何かを考えている様子に、ナデシコとスミレは、顔を見合わせる。
しばらく、そのままコハクを見守った。
「ナデシコは、ザクロのような攻撃はしないんだよね?」
「はい。わたくしには、攻撃は不向きでした」
「それじゃあ、防御はどうかな。自分を守りながら皆んなの補佐は出来る?」
「防御ならば、自身に結界を張りますね」
「もしも結界をすり抜けたり、破壊する強い敵がいて、襲われたら怪我をする。そうすれば、空を飛べなくなって、皆んなの補佐はできなくなるよね。って、これはボク自身の体験の一つなんだけどさ」
ナデシコは、ハッとした表情をした。
「襲われた場合の対処は……浄化でしょうか。でも、結界を壊すわけですから、効果はありませんわね。私が怪我を負えば集中力が乱れて、皆様の補佐は難しいですね」
「だけど、そんな強い敵なんていないわ」
今まで大人しく話しを聞いていたスミレが、声を上げる。
「そうだね。皆んな神使いだから、強いよね」
「そうよ」
「いいえ、万が一に備えて考えるのは良い事ですわ」
「だけど、お姉様の呪力は凄いわ」
「でも、浄化では倒せない魔物がいるのは確かですわ。そんな私が、戦う皆様を補佐が出来ずいるなんて、存在価値がありませんわ」
「ちょっと、待ってぇ、ナデシコ。ごめんね、そこまで思わなくても大丈夫だよ」
ナデシコの生真面目さを、コハクは失念していたと少々焦る。
「いいえ、コハク様。もしもを考えておくのは大切ですわ。何か、良い考えはありませんかしら」
コハクが、ザクロの為に光属性を生かした戦い方を考えた経緯を、ナデシコは知っているようだ。
コハクがポツリと大きく呟く。
「結界と浄化と回復の一体化」
コハクの中から溢れる記憶があった。それをナデシコに説明を始めた。
結界は、大きな規模になるほどに呪力が必要だ。戦いで使用する際は防衛戦、又は負傷した戦士の避難や治癒をする避難場所に使う。
浄化は、魔素の浄化や下級魔物の排除ができる。
回復は、戦況に応じて個別や全体に付与する。
状況を把握して行うは効率が悪く後衛の術者の負担になる。
なら、必要な時に必要な効果を得るにはどうしたらよいのか。
それが、結界と浄化と回復を一つにした術式。
「これなら、ナデシコの負担は減って、自身も皆んなも護られると思うんだ」
まるで、その術式を知っているような話し振りである。
「確かに、そのような事が可能でしたら……。しかしながら、結界と浄化に回復を一緒だなんて……」
「大丈夫、ぜんぜん難しくないよ。だって、すでに結界と浄化を一緒にしているよね」
「そうなのですか」
「だって結界に触れた魔物が消えたよ。これは、光属性の清浄の力の特性だ。だけど下級魔物に限る」
「ねぇ、その全部一緒の術式は、コハクが考えるの?」
スミレが話しに参加する。
「もう知っているんだと思う」
「どういうこと?」
「とりあえず、やってみるね」
コハクは目を閉じて、記憶を明瞭にしていけば、術式の呪文を思い出す。
パチリと瞳を開いて、声高らかに呪文を唱える。
「清く正しく輝く光は、ここを護り、これを浄化せし、この身を回復する力となる。払え給え、清め給え、与え給え」
一瞬、コハクを術式が包んで消えた。
「スミレ、魔物をお願い」
スミレが魔物を数匹ほど召還した。
コハクに向かって襲いかかるが、結界が阻む。そして、魔物は浄化されて消えた。
次にコハクが、故意にて結界の中に魔物をおびき寄せれば、魔物は浄化されて消えた。
再び、侵入させた魔物に故意に手を傷つければ、傷が治った。
「結界と浄化と回復が一緒に付与されたね」
「これは、とても素晴らしいですわぁ」
いつも上品なナデシコが、はしゃいでいる様子は珍しい。
「すごいじゃないっ」
スミレも一緒に感嘆する。
「ありがとう。中級魔物ぐらいなら結界で防げそうかな。けど、回復の効果が低いね。それに呪力量が思っていた以上に必要だった」
描いていた結果と違っていたので、コハクは残念そうだ。
「それでも、労力と時間を考えれば、呪力量は仕方ありませんわ。回復の効果は質が上がるように訓練を致します」
「心配入りませんわ。おねさまの呪力量は多いもの」
「持続効果は、ボクの力が足りないってことだね。出来るって事で、良しとしよう」
呪力量に依存しているだけの大雑把な術式だった。一体、何を思って考えたのか、コハクは苦笑する。
「最前線で、戦う者たちだけに付与ってな感じだね。皆一斉に戦う場合は、ナデシコだけが回復するわけじゃないし、全体回復はそっちに任せればいいか」
ナデシコは、確かにと納得しながら頷いた。
「いつか、もっと呪力を抑えられるように考えてみる」
それは、記憶が戻った時の話しだ。
「付与術式で、結界と浄化と回復が可能だと教えて下さった事に感謝しておりますわ。呪力に見合う素晴らしい術式だと思います。だって、皆様の補佐が増えることは喜ばしいですもの」
ナデシコは両手を胸で合わせて喜んでいた。
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