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32麒麟と姉妹の過去
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今日の訓練を始める前に、コハクがナデシコとスミレに、昨夜の夢で麒麟に会った事を話した。
「二人は麒麟の神使いだから、麒麟について話しを聞きたいんだ」
「わかりました」
ナデシコは、コハクの要望を快諾した。
一方、スミレは仕方がないという雰囲気だ。
三人は木の下の木漏れ日の中、後座を敷いて座っていた。
「それではコハク様、何をお聞きになりたいのでしょうか」
ナデシコが柔な笑顔を浮かべている。
「麒麟に呪力をわけてあげたいと思っているんだ。それは、シロガネを助けることになると思うから」
コハクの言葉に、ナデシコが頷いた。
「麒麟の力が少なくなっているは、私たちのせいでもあるのです」
「それはどういうこと?」
「まずは、私たちと麒麟の話しを致しましょう」
「お姉様……」
スミレから、いつもの勝気な様子は消え失せて、哀しげな表情を見せた。
「大丈夫よ、スミレ」
ナデシコが、麒麟の話しを語り始めた。
ナデシコとスミレが、まだ人であった幼少期の頃になる。
大陸の中央付近に位置する平野にて、栄える国がある。その国の辺境の山を登ると、小さな集落があった。
自給自足にて細々とひっそりと暮らす人々は、四神の神を崇める世界に於いて、数少ない麒麟を崇める者たちだった。
下界から閉ざされた集落の山頂からは美しい景色が見渡せる。
雄大な山の峰と壮大な空。
荘厳な太陽と幻想な月星。
一つとして同じ景色はない風光明媚。
その絶景を、何にも邪魔されることなく奔放に翔ける麒麟の姿を見れた。
優美で煌めくその麗しい姿に山に棲む者たちは憧れた。
そして、麒麟が現れた後には必ず山の自然は穏やかで豊かな恵みの幸が与えられた。
山に棲む者たちは麒麟を神として敬い崇める。
感謝と祝福の祈りを捧げ奉り、二人の巫女の少女が唄を歌い舞を踊った。
ある日、閉ざされた集落に、数人の旅人が訪れた。
国の地図を制作する為に、地形観測を行なっているという者たちであった。
旅人たちは山の者たちに手伝って欲しいと依頼する。
気の良い山の者たちは快諾した。
山の高さ、湖に川の大きさ、谷底の深さ、何が何処にあるのかを調べて記していく。
または、山から見える東西南北の風景を記して国全体を把握した。
山に棲む者たちが、山で暮らす為の知恵と知識によって、地図制作の情報は集まる。
その間、旅人たちは集落で滞在することになる。
訪問者たちから聞く下界の話しは、珍しくて村の誰もが興味深々だった。
子供も大人も楽しそうに聞き惚れる。
集落以外の人に会うなど滅多ない。
下界に降りて戻って来るには、慣れている者でも半月はかかる。
しかも、帰りはたくさんの荷物を背負って山を登るのだ。堅いのよい大人の男でなければ難しい。
山を歩き、寝起きと食事を共に過ごして親交を深めていった。
全てを記せたと旅人たちが山を下山する時は、山の者たちは悲しんで残念がった。
別れの、再び会う約束の宴を開いた。
旅立つ朝。
別れを惜しむその時、山の者たちが膝をつき空を見上げて祈り始めた。
二人の少女が声を高らかに歌う。軽やかな舞を踊り出す。
空を翔ける生き物の存在に旅人は気がついた。
初めて見る空を翔ける麒麟の姿に驚いた。
朝日を背に、二人の巫女の歌と舞に合わせて光を振り撒いて神々しく翔ける姿に魅入られた。
静かな日々に戻ってから半年ほど過ぎた頃に、再び旅人たちが現れてた。
山の者たちは遠路遥々と再び訪れてくれた事を喜んだ。
見知った旅人たちの他にも数十人もいる。しかも大層な荷物を背負ってだ。
土産話しもそこそこに、麒麟に会いたいと申し出があった。
しかし、麒麟は気まぐれで、いつ会えるかわからない。その旨を伝えれば、会えるまで滞在したいと旅人たちは言った。
ある時、旅人たちが巫女である二人の姉妹の少女に尋ねた。
「早く麒麟に会いたいが、何かいい方法は知らないかな」
「知らないわ」
背の高い姉の少女は首を横に振った。しかし、もう一人の背の低い妹の少女は首を縦に振った。
「知っているわ」
姉の少女が妹の少女を咎める。
「ダメじゃない」
「ダメなの?」
「教えてくれないかい」
「内緒なの、ねぇ」
妹の少女が姉の少女に同意を求める。
「そうだ、これをあげるよう」
それは、それは綺麗な髪飾りだった。
「きれい……」
どちらの少女ともなく感嘆の呟きが聞こえた。
妹の少女は瞳を輝かせて髪飾りに見惚れている。同じく姉の少女も瞳を潤わせて見つめていた。
「でも、一つしかないわ」
妹の少女が寂しそうに言う。
「また今度、違う髪飾りを持ってこよう。それまで二人で交代で使えばいいよ」
二人の少女が顔を見合わせた。
姉の少女が話しを始めた。
麒麟が訪れた時に捧げる歌と舞の他に、中々訪れない時に、麒麟に来て欲しいときだけに願う歌と舞がある。
それを麒麟が訪れるまで歌い踊り続け奉納するのだ。
すぐに現れるときもあれば、幾日も後のときもある。それでも、その歌と舞を奉納すれば、麒麟に来てくれた。
その話しを聞いて旅人の男は、ほくそ笑む。そして、二人の少女に麒麟を呼ぶように言った。
だが、山の者たちがそれを許すわけがない。もちろん少女たちも従わない。
ならば致し方ないと、二人の少女を残して、意を唱える山の者たちを次々と無情にも殺していった。
このままでは皆が死んでしまう。泣く泣く山の者たちは、二人の少女に麒麟を呼ぶための歌と舞の奉納をさせることにした。
二人の巫女の少女は、怯えて震える心で奉納する。
助けて……、たすけて……。
歌い舞を踊り、祈りを捧げた。
すると、麒麟が現れた。旅人の男たちが一斉に隠し持っていた武器を取り出した。
それは、金属で作られた弓で金属の矢を放つ武器だ。
その引き金を引く。麒麟に目掛けて一斉に撃った。
だが、麒麟は俊敏な動きでかわす。
「やめてぇーー」
姉の少女が涙を流して男たちに叫んだ。
姉の言葉に反応した妹の少女がひとりの男に体当たりした。それを機に他の村人たちも制する。しかし、相手は武器を持つ者たちだ。返り討ちに合い幾人も血を流して地面に横たわる。
麒麟がヒィー、ヒィーと鳴いた。
すると、麒麟の背より後光が現れて光の矢が旅人の男たちだけに振り注ぐ。
だが、村人たちを盾にされた。隙を狙われて、麒麟に弓矢が当たった。
麒麟は深傷を負い、空から地面に降りた。
旅人の男たちが麒麟に群がり、捕まると思いきや。
麒麟の周りに結界が発動する。武装した旅人たちを跳ね飛ばした。
そして、その中から人影が現れた。
「愚かな人どもよ。何ものであるか、わかっての狼藉か」
「……お前は何だ」
「答えたところで何になる。我が問いに答えよ」
結界の中に現れたのは銀髪の男だった。
只者でない雰囲気に、武装した男たちは慄き平伏したくなる。
受け答えをしている男は、強烈な圧を受けて汗ばみ緊張に耐えながら答えた。
「稀なる珍獣ゆえに、我が帝が欲している」
「国の上に立つ者が無能ならば、民は不幸よ。家臣ならば命に従うのは然るべきか。だが、その命に義があるか問うのもまた然るべき。考えざる者、行う者は同罪。許されざる者なり」
「何を降らんことを!」
武装した者たちの矢が、銀髪の男を襲う。しかし、結界に阻まれるのは当然だ。
銀髪の男は無視をして、麒麟の手当てをする。何かの呪文を吐くと麒麟の傷が綺麗に治った。
それを見ていた武装した男たちは驚くのと同時に、あの力は恐ろしいが手に入れたいと思った。
銀髪の男が結界を解いたので、一斉に襲いかかるが手も足もでない。
たじろぐ武装した男たちは、村人たちを人質にと思い動こうとしたが、身動きが出来ない。見えない何かにが縛れていた。
「お前たちの思考など手に取るが如く、愚かなり」
男が呆れながら呟いた。そして、非情な笑みを浮かべる。
「私は人を殺さぬ。だが、お前たちの犯した罪は許されない。さて、生き残っている山の者たちよ、動けぬこの者たちをどうする。神である麒麟を傷つけて、同胞を殺した。好きにするが良いぞ」
殺さないと言っていていた口が、殺してもよいと言っている。
ころせ、ころせと、どこからともなく声が重なった。その時。
麒麟がヒィー、ヒィーと鳴いた。
声が止んで、皆が麒麟を見つめる。
言葉はなくとも神と崇める者たちには伝わる。許せと殺すなと訴えているのだと。
「殺さない。殺したら、この悪い人たちと同じになる!」
姉の少女が高らかに声を上げた。
「ぼくも、ころさないーー」
妹の少女が泣きながら声を上げた。
その後、死んだ同胞を痛みて土に返した。銀髪の男は呪術にて、生き残った山の者たちを下山させる。
そして、捕縛した男たちは山の麓に捨て置いた。
「この場所から遥か西に小国がある。その国の前王の名はザクロ。まだ生きているはずだ。訪ねてみよ。私の名はシロガネ。名を出せば力になってくれようぞ」
「ありがとう。私の名前はナデシコです」
「ぼくの名前はスミレだよ。ありがとぉ」
二人の少女が微笑んだ。
「麒麟にはもう会えないの?」
スミレが悲しげに聞いた。
「いつか、会えるさ」
「あなたにはもう会えないの?」
ナデシコが寂しそうに尋ねた。
「今生を清く正しく生きるが良い。ならば、きっと、また会える」
そして、シロガネは一瞬にて、その場から姿を消した。
「二人は麒麟の神使いだから、麒麟について話しを聞きたいんだ」
「わかりました」
ナデシコは、コハクの要望を快諾した。
一方、スミレは仕方がないという雰囲気だ。
三人は木の下の木漏れ日の中、後座を敷いて座っていた。
「それではコハク様、何をお聞きになりたいのでしょうか」
ナデシコが柔な笑顔を浮かべている。
「麒麟に呪力をわけてあげたいと思っているんだ。それは、シロガネを助けることになると思うから」
コハクの言葉に、ナデシコが頷いた。
「麒麟の力が少なくなっているは、私たちのせいでもあるのです」
「それはどういうこと?」
「まずは、私たちと麒麟の話しを致しましょう」
「お姉様……」
スミレから、いつもの勝気な様子は消え失せて、哀しげな表情を見せた。
「大丈夫よ、スミレ」
ナデシコが、麒麟の話しを語り始めた。
ナデシコとスミレが、まだ人であった幼少期の頃になる。
大陸の中央付近に位置する平野にて、栄える国がある。その国の辺境の山を登ると、小さな集落があった。
自給自足にて細々とひっそりと暮らす人々は、四神の神を崇める世界に於いて、数少ない麒麟を崇める者たちだった。
下界から閉ざされた集落の山頂からは美しい景色が見渡せる。
雄大な山の峰と壮大な空。
荘厳な太陽と幻想な月星。
一つとして同じ景色はない風光明媚。
その絶景を、何にも邪魔されることなく奔放に翔ける麒麟の姿を見れた。
優美で煌めくその麗しい姿に山に棲む者たちは憧れた。
そして、麒麟が現れた後には必ず山の自然は穏やかで豊かな恵みの幸が与えられた。
山に棲む者たちは麒麟を神として敬い崇める。
感謝と祝福の祈りを捧げ奉り、二人の巫女の少女が唄を歌い舞を踊った。
ある日、閉ざされた集落に、数人の旅人が訪れた。
国の地図を制作する為に、地形観測を行なっているという者たちであった。
旅人たちは山の者たちに手伝って欲しいと依頼する。
気の良い山の者たちは快諾した。
山の高さ、湖に川の大きさ、谷底の深さ、何が何処にあるのかを調べて記していく。
または、山から見える東西南北の風景を記して国全体を把握した。
山に棲む者たちが、山で暮らす為の知恵と知識によって、地図制作の情報は集まる。
その間、旅人たちは集落で滞在することになる。
訪問者たちから聞く下界の話しは、珍しくて村の誰もが興味深々だった。
子供も大人も楽しそうに聞き惚れる。
集落以外の人に会うなど滅多ない。
下界に降りて戻って来るには、慣れている者でも半月はかかる。
しかも、帰りはたくさんの荷物を背負って山を登るのだ。堅いのよい大人の男でなければ難しい。
山を歩き、寝起きと食事を共に過ごして親交を深めていった。
全てを記せたと旅人たちが山を下山する時は、山の者たちは悲しんで残念がった。
別れの、再び会う約束の宴を開いた。
旅立つ朝。
別れを惜しむその時、山の者たちが膝をつき空を見上げて祈り始めた。
二人の少女が声を高らかに歌う。軽やかな舞を踊り出す。
空を翔ける生き物の存在に旅人は気がついた。
初めて見る空を翔ける麒麟の姿に驚いた。
朝日を背に、二人の巫女の歌と舞に合わせて光を振り撒いて神々しく翔ける姿に魅入られた。
静かな日々に戻ってから半年ほど過ぎた頃に、再び旅人たちが現れてた。
山の者たちは遠路遥々と再び訪れてくれた事を喜んだ。
見知った旅人たちの他にも数十人もいる。しかも大層な荷物を背負ってだ。
土産話しもそこそこに、麒麟に会いたいと申し出があった。
しかし、麒麟は気まぐれで、いつ会えるかわからない。その旨を伝えれば、会えるまで滞在したいと旅人たちは言った。
ある時、旅人たちが巫女である二人の姉妹の少女に尋ねた。
「早く麒麟に会いたいが、何かいい方法は知らないかな」
「知らないわ」
背の高い姉の少女は首を横に振った。しかし、もう一人の背の低い妹の少女は首を縦に振った。
「知っているわ」
姉の少女が妹の少女を咎める。
「ダメじゃない」
「ダメなの?」
「教えてくれないかい」
「内緒なの、ねぇ」
妹の少女が姉の少女に同意を求める。
「そうだ、これをあげるよう」
それは、それは綺麗な髪飾りだった。
「きれい……」
どちらの少女ともなく感嘆の呟きが聞こえた。
妹の少女は瞳を輝かせて髪飾りに見惚れている。同じく姉の少女も瞳を潤わせて見つめていた。
「でも、一つしかないわ」
妹の少女が寂しそうに言う。
「また今度、違う髪飾りを持ってこよう。それまで二人で交代で使えばいいよ」
二人の少女が顔を見合わせた。
姉の少女が話しを始めた。
麒麟が訪れた時に捧げる歌と舞の他に、中々訪れない時に、麒麟に来て欲しいときだけに願う歌と舞がある。
それを麒麟が訪れるまで歌い踊り続け奉納するのだ。
すぐに現れるときもあれば、幾日も後のときもある。それでも、その歌と舞を奉納すれば、麒麟に来てくれた。
その話しを聞いて旅人の男は、ほくそ笑む。そして、二人の少女に麒麟を呼ぶように言った。
だが、山の者たちがそれを許すわけがない。もちろん少女たちも従わない。
ならば致し方ないと、二人の少女を残して、意を唱える山の者たちを次々と無情にも殺していった。
このままでは皆が死んでしまう。泣く泣く山の者たちは、二人の少女に麒麟を呼ぶための歌と舞の奉納をさせることにした。
二人の巫女の少女は、怯えて震える心で奉納する。
助けて……、たすけて……。
歌い舞を踊り、祈りを捧げた。
すると、麒麟が現れた。旅人の男たちが一斉に隠し持っていた武器を取り出した。
それは、金属で作られた弓で金属の矢を放つ武器だ。
その引き金を引く。麒麟に目掛けて一斉に撃った。
だが、麒麟は俊敏な動きでかわす。
「やめてぇーー」
姉の少女が涙を流して男たちに叫んだ。
姉の言葉に反応した妹の少女がひとりの男に体当たりした。それを機に他の村人たちも制する。しかし、相手は武器を持つ者たちだ。返り討ちに合い幾人も血を流して地面に横たわる。
麒麟がヒィー、ヒィーと鳴いた。
すると、麒麟の背より後光が現れて光の矢が旅人の男たちだけに振り注ぐ。
だが、村人たちを盾にされた。隙を狙われて、麒麟に弓矢が当たった。
麒麟は深傷を負い、空から地面に降りた。
旅人の男たちが麒麟に群がり、捕まると思いきや。
麒麟の周りに結界が発動する。武装した旅人たちを跳ね飛ばした。
そして、その中から人影が現れた。
「愚かな人どもよ。何ものであるか、わかっての狼藉か」
「……お前は何だ」
「答えたところで何になる。我が問いに答えよ」
結界の中に現れたのは銀髪の男だった。
只者でない雰囲気に、武装した男たちは慄き平伏したくなる。
受け答えをしている男は、強烈な圧を受けて汗ばみ緊張に耐えながら答えた。
「稀なる珍獣ゆえに、我が帝が欲している」
「国の上に立つ者が無能ならば、民は不幸よ。家臣ならば命に従うのは然るべきか。だが、その命に義があるか問うのもまた然るべき。考えざる者、行う者は同罪。許されざる者なり」
「何を降らんことを!」
武装した者たちの矢が、銀髪の男を襲う。しかし、結界に阻まれるのは当然だ。
銀髪の男は無視をして、麒麟の手当てをする。何かの呪文を吐くと麒麟の傷が綺麗に治った。
それを見ていた武装した男たちは驚くのと同時に、あの力は恐ろしいが手に入れたいと思った。
銀髪の男が結界を解いたので、一斉に襲いかかるが手も足もでない。
たじろぐ武装した男たちは、村人たちを人質にと思い動こうとしたが、身動きが出来ない。見えない何かにが縛れていた。
「お前たちの思考など手に取るが如く、愚かなり」
男が呆れながら呟いた。そして、非情な笑みを浮かべる。
「私は人を殺さぬ。だが、お前たちの犯した罪は許されない。さて、生き残っている山の者たちよ、動けぬこの者たちをどうする。神である麒麟を傷つけて、同胞を殺した。好きにするが良いぞ」
殺さないと言っていていた口が、殺してもよいと言っている。
ころせ、ころせと、どこからともなく声が重なった。その時。
麒麟がヒィー、ヒィーと鳴いた。
声が止んで、皆が麒麟を見つめる。
言葉はなくとも神と崇める者たちには伝わる。許せと殺すなと訴えているのだと。
「殺さない。殺したら、この悪い人たちと同じになる!」
姉の少女が高らかに声を上げた。
「ぼくも、ころさないーー」
妹の少女が泣きながら声を上げた。
その後、死んだ同胞を痛みて土に返した。銀髪の男は呪術にて、生き残った山の者たちを下山させる。
そして、捕縛した男たちは山の麓に捨て置いた。
「この場所から遥か西に小国がある。その国の前王の名はザクロ。まだ生きているはずだ。訪ねてみよ。私の名はシロガネ。名を出せば力になってくれようぞ」
「ありがとう。私の名前はナデシコです」
「ぼくの名前はスミレだよ。ありがとぉ」
二人の少女が微笑んだ。
「麒麟にはもう会えないの?」
スミレが悲しげに聞いた。
「いつか、会えるさ」
「あなたにはもう会えないの?」
ナデシコが寂しそうに尋ねた。
「今生を清く正しく生きるが良い。ならば、きっと、また会える」
そして、シロガネは一瞬にて、その場から姿を消した。
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