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31麒麟の夢
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町から帰って来た夜。
コハクは、昨日の夜とは違って、明日の訓練に備えて早く眠ることにした。
出かけたので、少しの疲れと楽しかった思いは、心地良い眠りを促した。
布団に入れるなり、すんなりとコハクは眠りついた。
しばらくして、コハクは目が覚めた。
さっき眠ったような気もするけど、随分と長く眠っていたような気もする。
ぼんやりとしながら思考するが、頭は動かなくて、体は力も入らなくて、不思議な感覚がまとわりつく。
しばらくして、周りがくっきりと見えてくれば、青い空の色だった。そこで、コハクは、自分が宙に浮いているのだとわかった。
いったい何が起きているのか。
これは夢をなのだろうか。
冴えない頭で、つらつらと取り留めもなくあれこれと思う。
すると、空の彼方から何が近づいて来るのがわかった。
それは、雲を蹴り風を靡かせ、空を翔ける。
凛々しく気品ある美しく神々しい。
コハクに目の前に来たのは、麒麟だった。
『ようこそ』
その一言でコハクは理解した。
「キミがボクをここに呼んだの」
『そうだよ』
「えっと、ここは空の上みたいだけど、どこなの?」
『夢の架け橋』
「やっぱり夢の中?」
『うーん、夢だけど夢じゃない。キミの見る夢と誰かの夢を架ける(翔る)場所』
「へぇ、そんな場所があるんだ。それで? ボクに何か話があるんだよね」
『察しがいいね。うん、お願いがあるだ』
「お願い……」
神である麒麟が、コハクに願うことがある。それは、驚きと怖さが混在するけど、興味もあった。
コハクの表情を見れば、その心は一目瞭然だ。
『ふふっ、大丈夫だよ』
「うん……」
コハクは素直に受け入れて、言葉を飲み込んだ。
『キミの呪力が欲しいんだ』
「呪力をあげるの? あげたらボクはどうなるの……」
『あぁ、別に全部が欲しいってわけじゃないんだ。必要な時に分けてもらえたらって話』
「なぜ、ボクなの」
『キミの呪力はキラキラ輝いて綺麗なんだ。そして暖かいからね、気持ち良くなる』
コハクは、以前シロガネが、記憶と封印の話しの時に言った呪力についての話しを思い出す。そして、呪力をあげることの意味を考える。
「ボクは記憶がなくて何も分からない。だから、シロガネに聞いてからにしてもいいかな」
『彼奴のこと、信頼しているんだね。それじゃあ早く戻りなよ。あの馬鹿、血相変えて君を心配しているよ』
「え、馬鹿ってシロガネのこと? それに心配って? ねぇ、キミとシロガネはどういう関係なの?」
『質問ばかりだね』
「だって急に現れて色々言うんだもん」
『それもそっか。彼奴は、不自由な馬鹿だから見てられないってこと』
「シロガネのこと……心配してくれてるんだね」
『そんな風にキミは思うんだね。やはり是非ともキミの呪力が欲しくなるよ』
麒麟はコハクに背を向けて走り去ろうする。そして振り返って呟いた。
『借りは返さなきゃね』
そういうなり、空の彼方へと翔け出せば、一瞬にて遠くへと、その姿は見えなくなる。
『……コハク!』
遠くからシロガネの声が聞こえた。
コハクが目を覚ます。
瞳に映るのは、血相を変えたシロガネだった。
「コハク! 目を覚ましたんだね。良かった」
「シロガネ……どうしたの?」
コハクは目をこすりながら、ゆっくりと体を起こした。シロガネが、大きなため息を吐いて強く抱きしめた。
「起きてこないから、起こしに来たんだよ。何度も呼んで、体をゆすっても一向に起きなくて、とても心配したんだよ」
シロガネは、コハクを起こしに部屋に向かった。部屋に入って、コハクが眠っている寝台に近づけば、すぐに異変に気がついた。
コハクの体を揺さぶり、何度も声をかけるが一向に反応がない。
息はしいている。
呪術でコハクの体を調べると、意識が現実ではない場所に囚われている気配を感じた。
意識を強制的に、戻す為の呪文を唱えた。
「戻って来い、コハク!」
そして、コハクの瞳が開いたのだった。
「心配したの?」
「あぁ、とても心配したよ」
「もう、朝なんだ……心配かけてごめんね」
「一体、何があったんだい」
シロガネが、コハクに何があったのか覚えていると確信していた。
「夢を見ていた……じゃない。夢の中で麒麟に会ったんだ」
「麒麟」
シロガネの確認する問うと、コハクは頷いた。
「麒麟に、ボクの呪力が欲しいって言われたんだ。けど、ボクにはそれが良いことなのか分からない。だから、シロガネに聞いてからって答えたんだ」
「麒麟はなんと」
「そうそう、シロガネと麒麟ってどういう関係なの? なんだか訳ありな感じがしたんだけど」
シロガネが話しの内容を聞いて考え込んでいる。
「コハク、麒麟は他に何か言っていたかい」
「あっ、借りを返すって言ってた」
「借りか……。コハクは麒麟に呪力を分ける事についてどう思う」
「シロガネがいいなら構わないよ。麒麟が困っているなら助けてあげたい。それに、呪力を分ける事は、シロガネの為になる気がするんだ」
麒麟がコハクの元にわざわざ訪れた意味と話しの内容から、麒麟はシロガネのために動いているはずなのだ。
コハクが、問いかけるようにシロガネを見つめている。
その視線を受けてシロガネは、最初の問いに答えた。
「麒麟は四神と違って自由に動きまわるから、昔から色んなところで会うんだ。よく麒麟に助けてもらってね。もちろん、私も麒麟の力になった事がある。古き良き戦友かな」
「今は違うの?」
「今は、私も一人ではないからね。麒麟の力を借りることは少なくなった。それに、麒麟には麒麟の役割があるはずだからね」
「それじゃあ、麒麟がボクの呪力を欲しがるのはなぜ?」
「それはきっと、麒麟の力が弱くなっているんだろうね」
「どういうこと?」
「四神は、東西南北を守護する神として民から崇められている。信仰は神を支える力となる。それによって、神使いを地上に顕現させて魔を払う力になる」
「それじゃあ、麒麟には信仰する人が少ないってこと?」
「一応、中央が麒麟の領域なんだけどね。自由奔放な麒麟は一つの場所に止まらないから神として信仰する者たちは、極一部の者たちだ。その者たちがいなくなれば、もう誰も麒麟を神だと認識しなくなるだろうね」
コハクは、以前、陰陽道についての話しの中で、麒麟の認識の違いについての事を思い出した。
「もしかして、ボクが麒麟を神だと知らなかったことに繋がるんじゃ……」
「だろうね」
シロガネの肯定は、コハクが、シロガネと一緒の世界の住人でないと断言した事になる。
コハクはもう驚かない。今さら、誤魔化す必要はないと、意を決したのだとわかった。
「ボクは、麒麟の力になりたい」
「契約は等価交換だからね。コハクの呪力を麒麟にあげることで、コハクは麒麟の力を貸りられるよ」
全ては流用して干渉し合う。五行陰陽道の中にある、ひとつの考え方だ。
「麒麟はシロガネを助けてくれたんだ。ならば、ボクは麒麟を助けるよ」
「コハク……」
「あと、麒麟が神であることを世に広めなきゃ」
「その事については、ナデシコとスミレに話しを聞くといい」
「そっか! 二人は麒麟の神使いだったね」
少しずつ動く。
扉の向こうから覗く過去と未来。
コハクは、昨日の夜とは違って、明日の訓練に備えて早く眠ることにした。
出かけたので、少しの疲れと楽しかった思いは、心地良い眠りを促した。
布団に入れるなり、すんなりとコハクは眠りついた。
しばらくして、コハクは目が覚めた。
さっき眠ったような気もするけど、随分と長く眠っていたような気もする。
ぼんやりとしながら思考するが、頭は動かなくて、体は力も入らなくて、不思議な感覚がまとわりつく。
しばらくして、周りがくっきりと見えてくれば、青い空の色だった。そこで、コハクは、自分が宙に浮いているのだとわかった。
いったい何が起きているのか。
これは夢をなのだろうか。
冴えない頭で、つらつらと取り留めもなくあれこれと思う。
すると、空の彼方から何が近づいて来るのがわかった。
それは、雲を蹴り風を靡かせ、空を翔ける。
凛々しく気品ある美しく神々しい。
コハクに目の前に来たのは、麒麟だった。
『ようこそ』
その一言でコハクは理解した。
「キミがボクをここに呼んだの」
『そうだよ』
「えっと、ここは空の上みたいだけど、どこなの?」
『夢の架け橋』
「やっぱり夢の中?」
『うーん、夢だけど夢じゃない。キミの見る夢と誰かの夢を架ける(翔る)場所』
「へぇ、そんな場所があるんだ。それで? ボクに何か話があるんだよね」
『察しがいいね。うん、お願いがあるだ』
「お願い……」
神である麒麟が、コハクに願うことがある。それは、驚きと怖さが混在するけど、興味もあった。
コハクの表情を見れば、その心は一目瞭然だ。
『ふふっ、大丈夫だよ』
「うん……」
コハクは素直に受け入れて、言葉を飲み込んだ。
『キミの呪力が欲しいんだ』
「呪力をあげるの? あげたらボクはどうなるの……」
『あぁ、別に全部が欲しいってわけじゃないんだ。必要な時に分けてもらえたらって話』
「なぜ、ボクなの」
『キミの呪力はキラキラ輝いて綺麗なんだ。そして暖かいからね、気持ち良くなる』
コハクは、以前シロガネが、記憶と封印の話しの時に言った呪力についての話しを思い出す。そして、呪力をあげることの意味を考える。
「ボクは記憶がなくて何も分からない。だから、シロガネに聞いてからにしてもいいかな」
『彼奴のこと、信頼しているんだね。それじゃあ早く戻りなよ。あの馬鹿、血相変えて君を心配しているよ』
「え、馬鹿ってシロガネのこと? それに心配って? ねぇ、キミとシロガネはどういう関係なの?」
『質問ばかりだね』
「だって急に現れて色々言うんだもん」
『それもそっか。彼奴は、不自由な馬鹿だから見てられないってこと』
「シロガネのこと……心配してくれてるんだね」
『そんな風にキミは思うんだね。やはり是非ともキミの呪力が欲しくなるよ』
麒麟はコハクに背を向けて走り去ろうする。そして振り返って呟いた。
『借りは返さなきゃね』
そういうなり、空の彼方へと翔け出せば、一瞬にて遠くへと、その姿は見えなくなる。
『……コハク!』
遠くからシロガネの声が聞こえた。
コハクが目を覚ます。
瞳に映るのは、血相を変えたシロガネだった。
「コハク! 目を覚ましたんだね。良かった」
「シロガネ……どうしたの?」
コハクは目をこすりながら、ゆっくりと体を起こした。シロガネが、大きなため息を吐いて強く抱きしめた。
「起きてこないから、起こしに来たんだよ。何度も呼んで、体をゆすっても一向に起きなくて、とても心配したんだよ」
シロガネは、コハクを起こしに部屋に向かった。部屋に入って、コハクが眠っている寝台に近づけば、すぐに異変に気がついた。
コハクの体を揺さぶり、何度も声をかけるが一向に反応がない。
息はしいている。
呪術でコハクの体を調べると、意識が現実ではない場所に囚われている気配を感じた。
意識を強制的に、戻す為の呪文を唱えた。
「戻って来い、コハク!」
そして、コハクの瞳が開いたのだった。
「心配したの?」
「あぁ、とても心配したよ」
「もう、朝なんだ……心配かけてごめんね」
「一体、何があったんだい」
シロガネが、コハクに何があったのか覚えていると確信していた。
「夢を見ていた……じゃない。夢の中で麒麟に会ったんだ」
「麒麟」
シロガネの確認する問うと、コハクは頷いた。
「麒麟に、ボクの呪力が欲しいって言われたんだ。けど、ボクにはそれが良いことなのか分からない。だから、シロガネに聞いてからって答えたんだ」
「麒麟はなんと」
「そうそう、シロガネと麒麟ってどういう関係なの? なんだか訳ありな感じがしたんだけど」
シロガネが話しの内容を聞いて考え込んでいる。
「コハク、麒麟は他に何か言っていたかい」
「あっ、借りを返すって言ってた」
「借りか……。コハクは麒麟に呪力を分ける事についてどう思う」
「シロガネがいいなら構わないよ。麒麟が困っているなら助けてあげたい。それに、呪力を分ける事は、シロガネの為になる気がするんだ」
麒麟がコハクの元にわざわざ訪れた意味と話しの内容から、麒麟はシロガネのために動いているはずなのだ。
コハクが、問いかけるようにシロガネを見つめている。
その視線を受けてシロガネは、最初の問いに答えた。
「麒麟は四神と違って自由に動きまわるから、昔から色んなところで会うんだ。よく麒麟に助けてもらってね。もちろん、私も麒麟の力になった事がある。古き良き戦友かな」
「今は違うの?」
「今は、私も一人ではないからね。麒麟の力を借りることは少なくなった。それに、麒麟には麒麟の役割があるはずだからね」
「それじゃあ、麒麟がボクの呪力を欲しがるのはなぜ?」
「それはきっと、麒麟の力が弱くなっているんだろうね」
「どういうこと?」
「四神は、東西南北を守護する神として民から崇められている。信仰は神を支える力となる。それによって、神使いを地上に顕現させて魔を払う力になる」
「それじゃあ、麒麟には信仰する人が少ないってこと?」
「一応、中央が麒麟の領域なんだけどね。自由奔放な麒麟は一つの場所に止まらないから神として信仰する者たちは、極一部の者たちだ。その者たちがいなくなれば、もう誰も麒麟を神だと認識しなくなるだろうね」
コハクは、以前、陰陽道についての話しの中で、麒麟の認識の違いについての事を思い出した。
「もしかして、ボクが麒麟を神だと知らなかったことに繋がるんじゃ……」
「だろうね」
シロガネの肯定は、コハクが、シロガネと一緒の世界の住人でないと断言した事になる。
コハクはもう驚かない。今さら、誤魔化す必要はないと、意を決したのだとわかった。
「ボクは、麒麟の力になりたい」
「契約は等価交換だからね。コハクの呪力を麒麟にあげることで、コハクは麒麟の力を貸りられるよ」
全ては流用して干渉し合う。五行陰陽道の中にある、ひとつの考え方だ。
「麒麟はシロガネを助けてくれたんだ。ならば、ボクは麒麟を助けるよ」
「コハク……」
「あと、麒麟が神であることを世に広めなきゃ」
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