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41朱雀の神域
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夕食を食べながら、コハクは今日のゲンゲとの訓練の事をシロガネに話しをしていた。
「コハクは頑張っているな。訓練は順調のようで、皆とも仲良くなれて良かった」
「うん。訓練は大変だけど、皆んなと過ごせて楽しくもあるよ」
「私の知らない所で、何やら楽しいことをしているようだ」
シロガネが、含みのある表情で微笑んだ。
それはコハクの言う楽しい事には、皆から聞く自身のことも含まれていると思うからだ。
コハクが、シロガネに思いをよせている事に他ならない。
シロガネを嬉しくさせて、こそばがゆくする。
「シロガネこそ、楽しそうだね」
コハクが、にこやかに笑う。それは、厄介な心を隠して誤魔化すシロガネの癖を見抜いているからだ。
「当然だろう。コハクが楽しければ、私も楽しいよ」
つかさずシロガネが、コハクが受け止めた心以上の物を是として返してくる。
いつだってシロガネの言動は、コハクの心を握りしめて離さない。
だからコハクは我がままになれる。
そして恥ずかしさと素直さを持って、同じ心をシロガネに伝える。
「ボクもシロガネと一緒なんだよ」
二人の心が重なる音がする。
しばしの穏やかな歓談と食事を終えて、シロガネが切り出した。
「明日は、アヤメとシオンに頼んでいるが、疲れてないかい?」
「アヤメは、元気になったんだね」
「あぁ、問題ない」
「良かった。会えるのが嬉しいよ。ボクは疲れてないから、全然大丈夫!」
「そうか。二人は休養していたからね。復帰するには、コハクの特訓がちょうど良いだろうよ」
「アヤメとシオンは火属性だよね」
「そうだな。コハクは火が苦手だろう」
その指摘に、コハクが驚きと戸惑いが合わさった不思議そうな顔をした。
そんな話しなど、一度もした覚えはない。話題に出たこともない。
何より、コハクはそんな事を思ったことがない。考えたこともないことなのに、なぜか違うとは言えなかった。
「どうして……そう、思うの」
「コハクから感じられる呪力の色や気配と揺らぎ、からだね」
「わからない……、知らない。だけど、シロガネがそう言うなら、そうなのかもしれない」
何故、今、この事実を突きつけるのか。
明日、何も知らないままで訓練をしても良かったのではないか。その方が素直に火属性の事を学べて吸収出来たのではないか。
身に覚えのない不安が、コハクを覆い尽くす。心が震えて怯えるのは、シロガネに対してではなくて、火が苦手である事実に怯えていた。
「すまないね。不安にさせたようだ。でも、何も知らずにいるのと知っているのでは、成果に差がでるのは歴然だからね」
シロガネの思いを聞いて、コハクは理解した。
「そうなんだ。わかったよ」
苦手である事実を受け入れて、コハクは明日の訓練に挑むことになる。
その夜、コハクは寝つけないでいた。
それはそうである。突きつけられた事実、火が苦手である事について考えてしまうからだ。
記憶がないので、その理由がわからないのがもどかしい。だけど、思い出せないことに、ホッとする心にもなる。悲しく、嫌な出来事ならば思い出したくないと思うからだ。
考えても仕方がないというのに、思えば思うほど眠れない。
しかし思い疲れて、いつの間にか眠っていた。
「あれ? ここは」
見覚えのある場所は、コハクと麒麟と初めて出会った場所だった。
シャタン、シャタンと音がする方を見れば、麒麟が翔けてきた。
「やぁ」
「またキミが呼んだの?」
「ううん、君が僕を呼んだんだよ」
「ボクなの?」
麒麟が優雅に体を動かして頷いた。
「あっ、シロガネに聞いたかどうかの件かな」
「そうじゃないと思うよ」
「そうなの」
「その件は、まぁ一応、君から聞かなきゃだよね」
その口ぶりからシロガネの返事など既に知っているようだ。だけど、コハク本人の意思の確認は必要なのだろう。
「いいって。ボクもキミの力になりたいんだ」
「そっか。じゃ、必要な時は頼むよ」
コハクは了承して頷いた。
「君は、僕に聞きたいことがあるんだろう」
その問いに、コハクはキョトンとしている。だから、麒麟は苦笑した。
「言い方を変えるね。相談したい事があるんだろう」
「そうだ。あるよ」
麒麟は神だ、コハクの心を見透す。
コハクは火が苦手であるらしい事の話しをした。
「理由を知りたいの?」
「知りたいけど、知ってしまったら火属性の訓練を頑張れないかもしれない」
初めて会った時とは打って変わり、弱々しいコハクの様子に、麒麟は瞬きをした。
次に、ヒィーヒィーンと切なそうな鳴き声を出した。コハクは驚いて瞬きをすれば、気がつくと麒麟の背中に乗って宙を翔けていた。
いつの間にと、思う事もままならない。
宙を舞うような感覚は初めての体験だ。恐ろしくもり楽しくもある。
「これは、一体どういうこと」
「いこう!」
「どこへ?」
「朱雀に会いに行けば、きっと怖くなくなるさ」
「えっ!」
麒麟が速度を速めた。もはや翔けている感覚はなくなる。それは、まるで瞬間移動をしているような感覚だった。
気がつけば、青い空と蒼い海が果てしなく広がる間を走っている。
前から風が吹き抜ける。体中に染みる心地よさは、爽快さになる。
海に囲まれた大きな島が見えた。
近づくに連れて、爽快だった風が温くなっていく。更に近づくと熱波が襲う。
コハクは体に結界を張った。
麒麟が翔ける、遥か上空から島全体を眺めた。
ゴツゴツとした岩が広がり、水蒸気が吹いている。これは溶岩が流れた跡だ。
その反対側には、美しい緑の大地が延々と広がっていた。
真逆な景色に、コハクは畏怖の念を抱く。
そして、高く聳える火口からは、細く赤い溶岩流が見える。
その隙にある平な場所に麒麟が降り立った。
コハクは麒麟の背中から降りて辺りを見渡す。圧倒される自然の息吹き、この世界の存在を肌に感じる。
麒麟がヒィーンと高く響く声で鳴いた。
火山が一瞬、揺れた。青い炎が吹き出して溶岩が流れ出す。
すると、山頂から大きな赫いものが回転しながら飛び出てきた。
それこそが朱雀である。
赫く輝く御体、雄大に翼を広げて宙を舞う。その軌跡から赫の鱗粉が煌めき散りばめられる。華麗で優美な姿に見惚れてしまう。しかし、放たれる威厳は息を呑み、強烈な存在感に戦慄が走る。
その圧感な雰囲気を携えた朱雀が、コハクたちのいる場所へと向かってきた。
そしてコハクたちの目の前に降り立てば、翼をたたんだ。その風圧にコハクは目を閉じた。
次に目を開けた時、コハクは麗しい朱雀をマジマジと見つめた。
「やぁ、朱雀」
「ひさしいですね、麒麟。互いに姿を現し合うのは、いつぶりでしょう」
「どこにいても互いの存在を認知出来るから問題ないかな」
「相変わらず麒麟は奔放ですね」
「朱雀も飛べるだろう。何処へでも行けばいい」
「それもいいでしょう。いつかきっと」
朱雀がコハクをジッと見つめていた。コハクは少し焦りながら挨拶をする。
「初めまして、ボクはコハクって言うんだ」
「知っています」
「シロガネから聞いたの」
「違います。だけど、彼の者の思いは知り得るから問題ありません。そして、君が麒麟と現れた理由も然りなのです」
神である朱雀も、また心を見透す。
「明日はアヤメとシオンと一緒に訓練をするけど、シロガネに、火が苦手だと言われて……。そんな事を思ったことなかったから、気づかなかったんだ。だから、本当にそうなのか、わからない。だって、ボクには記憶がないから……」
「私が怖いですか」
「ううん、全然」
コハクは思いっ切り首を振った。
「なら心配はありません」
「そうなの」
「彼の者も意地が悪いこと」
「シロガネのこと?」
朱雀が頷く代わりに、羽を大きく動かして羽ばたいた。
「君は火が苦手ではありません。良き思い出がないのでしょう。困った事が多かった。だから、無意識に火を避ける傾向があるだけ」
「それをシロガネは苦手だと言ったんだ」
「それだけではないようです」
「ホント彼奴は意地が悪いよ。要は、朱雀に合わせようと、策を講じたってのが正解じゃないかな」
つかさず麒麟が悪態をつく。
「そうなの? でも、それは意地悪じゃないと思うけど」
「君には優しいですね」
朱雀がつかさず揶揄った。
「神の皆んなには、優しくないの」
「神だけじゃないよ。眷属の式神たちにもじゃないか」
「そんな事ない。シロガネは皆んなを大切に思っているよ」
麒麟とコハクが、白熱しそうな雰囲気になって、朱雀が取り持つ。
「公平を厳守して世の理を治める。その厳しさを保つ為の仮面は必要です。式神たちは眷属だから大切にするのは当然でしょう。許される範囲も広い。けど、如何なる命令も覆させない。成すべき事を成すのは厳しさなのです」
朱雀の言葉にコハクは、不思議と納得していた。
シロガネが式神たちを自由にさせているのは、各々が成すべき事を理解しているからだ。シロガネの命に従う。思いを汲んで動く。様々な重圧に応える。
頑な信心の元、人の為に世の為に、自ら動ける志を胸に掲げて、ただ唯シロガネを慕い、仕え捧げている。
「いずれ君にもわかるはず。だって、君にもあるのだから」
あぁ、そうだった。
忘れていたわけじゃないけど、コハクにもよく似た者たちが側にいた。
今は、コハクの成長を見守っているような、または来るべき時に備えているような。
コハクの内で、静かにその時を待つ守護する者たちだ。
「ありがとう、いずれじゃない。もう僕は理解している」
凛とした表情は一瞬、コハクから幼さが消失して一人の青年の姿と重なった。
「コハクは頑張っているな。訓練は順調のようで、皆とも仲良くなれて良かった」
「うん。訓練は大変だけど、皆んなと過ごせて楽しくもあるよ」
「私の知らない所で、何やら楽しいことをしているようだ」
シロガネが、含みのある表情で微笑んだ。
それはコハクの言う楽しい事には、皆から聞く自身のことも含まれていると思うからだ。
コハクが、シロガネに思いをよせている事に他ならない。
シロガネを嬉しくさせて、こそばがゆくする。
「シロガネこそ、楽しそうだね」
コハクが、にこやかに笑う。それは、厄介な心を隠して誤魔化すシロガネの癖を見抜いているからだ。
「当然だろう。コハクが楽しければ、私も楽しいよ」
つかさずシロガネが、コハクが受け止めた心以上の物を是として返してくる。
いつだってシロガネの言動は、コハクの心を握りしめて離さない。
だからコハクは我がままになれる。
そして恥ずかしさと素直さを持って、同じ心をシロガネに伝える。
「ボクもシロガネと一緒なんだよ」
二人の心が重なる音がする。
しばしの穏やかな歓談と食事を終えて、シロガネが切り出した。
「明日は、アヤメとシオンに頼んでいるが、疲れてないかい?」
「アヤメは、元気になったんだね」
「あぁ、問題ない」
「良かった。会えるのが嬉しいよ。ボクは疲れてないから、全然大丈夫!」
「そうか。二人は休養していたからね。復帰するには、コハクの特訓がちょうど良いだろうよ」
「アヤメとシオンは火属性だよね」
「そうだな。コハクは火が苦手だろう」
その指摘に、コハクが驚きと戸惑いが合わさった不思議そうな顔をした。
そんな話しなど、一度もした覚えはない。話題に出たこともない。
何より、コハクはそんな事を思ったことがない。考えたこともないことなのに、なぜか違うとは言えなかった。
「どうして……そう、思うの」
「コハクから感じられる呪力の色や気配と揺らぎ、からだね」
「わからない……、知らない。だけど、シロガネがそう言うなら、そうなのかもしれない」
何故、今、この事実を突きつけるのか。
明日、何も知らないままで訓練をしても良かったのではないか。その方が素直に火属性の事を学べて吸収出来たのではないか。
身に覚えのない不安が、コハクを覆い尽くす。心が震えて怯えるのは、シロガネに対してではなくて、火が苦手である事実に怯えていた。
「すまないね。不安にさせたようだ。でも、何も知らずにいるのと知っているのでは、成果に差がでるのは歴然だからね」
シロガネの思いを聞いて、コハクは理解した。
「そうなんだ。わかったよ」
苦手である事実を受け入れて、コハクは明日の訓練に挑むことになる。
その夜、コハクは寝つけないでいた。
それはそうである。突きつけられた事実、火が苦手である事について考えてしまうからだ。
記憶がないので、その理由がわからないのがもどかしい。だけど、思い出せないことに、ホッとする心にもなる。悲しく、嫌な出来事ならば思い出したくないと思うからだ。
考えても仕方がないというのに、思えば思うほど眠れない。
しかし思い疲れて、いつの間にか眠っていた。
「あれ? ここは」
見覚えのある場所は、コハクと麒麟と初めて出会った場所だった。
シャタン、シャタンと音がする方を見れば、麒麟が翔けてきた。
「やぁ」
「またキミが呼んだの?」
「ううん、君が僕を呼んだんだよ」
「ボクなの?」
麒麟が優雅に体を動かして頷いた。
「あっ、シロガネに聞いたかどうかの件かな」
「そうじゃないと思うよ」
「そうなの」
「その件は、まぁ一応、君から聞かなきゃだよね」
その口ぶりからシロガネの返事など既に知っているようだ。だけど、コハク本人の意思の確認は必要なのだろう。
「いいって。ボクもキミの力になりたいんだ」
「そっか。じゃ、必要な時は頼むよ」
コハクは了承して頷いた。
「君は、僕に聞きたいことがあるんだろう」
その問いに、コハクはキョトンとしている。だから、麒麟は苦笑した。
「言い方を変えるね。相談したい事があるんだろう」
「そうだ。あるよ」
麒麟は神だ、コハクの心を見透す。
コハクは火が苦手であるらしい事の話しをした。
「理由を知りたいの?」
「知りたいけど、知ってしまったら火属性の訓練を頑張れないかもしれない」
初めて会った時とは打って変わり、弱々しいコハクの様子に、麒麟は瞬きをした。
次に、ヒィーヒィーンと切なそうな鳴き声を出した。コハクは驚いて瞬きをすれば、気がつくと麒麟の背中に乗って宙を翔けていた。
いつの間にと、思う事もままならない。
宙を舞うような感覚は初めての体験だ。恐ろしくもり楽しくもある。
「これは、一体どういうこと」
「いこう!」
「どこへ?」
「朱雀に会いに行けば、きっと怖くなくなるさ」
「えっ!」
麒麟が速度を速めた。もはや翔けている感覚はなくなる。それは、まるで瞬間移動をしているような感覚だった。
気がつけば、青い空と蒼い海が果てしなく広がる間を走っている。
前から風が吹き抜ける。体中に染みる心地よさは、爽快さになる。
海に囲まれた大きな島が見えた。
近づくに連れて、爽快だった風が温くなっていく。更に近づくと熱波が襲う。
コハクは体に結界を張った。
麒麟が翔ける、遥か上空から島全体を眺めた。
ゴツゴツとした岩が広がり、水蒸気が吹いている。これは溶岩が流れた跡だ。
その反対側には、美しい緑の大地が延々と広がっていた。
真逆な景色に、コハクは畏怖の念を抱く。
そして、高く聳える火口からは、細く赤い溶岩流が見える。
その隙にある平な場所に麒麟が降り立った。
コハクは麒麟の背中から降りて辺りを見渡す。圧倒される自然の息吹き、この世界の存在を肌に感じる。
麒麟がヒィーンと高く響く声で鳴いた。
火山が一瞬、揺れた。青い炎が吹き出して溶岩が流れ出す。
すると、山頂から大きな赫いものが回転しながら飛び出てきた。
それこそが朱雀である。
赫く輝く御体、雄大に翼を広げて宙を舞う。その軌跡から赫の鱗粉が煌めき散りばめられる。華麗で優美な姿に見惚れてしまう。しかし、放たれる威厳は息を呑み、強烈な存在感に戦慄が走る。
その圧感な雰囲気を携えた朱雀が、コハクたちのいる場所へと向かってきた。
そしてコハクたちの目の前に降り立てば、翼をたたんだ。その風圧にコハクは目を閉じた。
次に目を開けた時、コハクは麗しい朱雀をマジマジと見つめた。
「やぁ、朱雀」
「ひさしいですね、麒麟。互いに姿を現し合うのは、いつぶりでしょう」
「どこにいても互いの存在を認知出来るから問題ないかな」
「相変わらず麒麟は奔放ですね」
「朱雀も飛べるだろう。何処へでも行けばいい」
「それもいいでしょう。いつかきっと」
朱雀がコハクをジッと見つめていた。コハクは少し焦りながら挨拶をする。
「初めまして、ボクはコハクって言うんだ」
「知っています」
「シロガネから聞いたの」
「違います。だけど、彼の者の思いは知り得るから問題ありません。そして、君が麒麟と現れた理由も然りなのです」
神である朱雀も、また心を見透す。
「明日はアヤメとシオンと一緒に訓練をするけど、シロガネに、火が苦手だと言われて……。そんな事を思ったことなかったから、気づかなかったんだ。だから、本当にそうなのか、わからない。だって、ボクには記憶がないから……」
「私が怖いですか」
「ううん、全然」
コハクは思いっ切り首を振った。
「なら心配はありません」
「そうなの」
「彼の者も意地が悪いこと」
「シロガネのこと?」
朱雀が頷く代わりに、羽を大きく動かして羽ばたいた。
「君は火が苦手ではありません。良き思い出がないのでしょう。困った事が多かった。だから、無意識に火を避ける傾向があるだけ」
「それをシロガネは苦手だと言ったんだ」
「それだけではないようです」
「ホント彼奴は意地が悪いよ。要は、朱雀に合わせようと、策を講じたってのが正解じゃないかな」
つかさず麒麟が悪態をつく。
「そうなの? でも、それは意地悪じゃないと思うけど」
「君には優しいですね」
朱雀がつかさず揶揄った。
「神の皆んなには、優しくないの」
「神だけじゃないよ。眷属の式神たちにもじゃないか」
「そんな事ない。シロガネは皆んなを大切に思っているよ」
麒麟とコハクが、白熱しそうな雰囲気になって、朱雀が取り持つ。
「公平を厳守して世の理を治める。その厳しさを保つ為の仮面は必要です。式神たちは眷属だから大切にするのは当然でしょう。許される範囲も広い。けど、如何なる命令も覆させない。成すべき事を成すのは厳しさなのです」
朱雀の言葉にコハクは、不思議と納得していた。
シロガネが式神たちを自由にさせているのは、各々が成すべき事を理解しているからだ。シロガネの命に従う。思いを汲んで動く。様々な重圧に応える。
頑な信心の元、人の為に世の為に、自ら動ける志を胸に掲げて、ただ唯シロガネを慕い、仕え捧げている。
「いずれ君にもわかるはず。だって、君にもあるのだから」
あぁ、そうだった。
忘れていたわけじゃないけど、コハクにもよく似た者たちが側にいた。
今は、コハクの成長を見守っているような、または来るべき時に備えているような。
コハクの内で、静かにその時を待つ守護する者たちだ。
「ありがとう、いずれじゃない。もう僕は理解している」
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