八千代を翔けて、愛う日まで

ゆらん

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63コハクの戦い

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 コハクとエレンは結界の中心部へと進んだ。
 そして、盗賊たちの本拠地の建物を見つけた。
 コハクが、小屋で使ったトカゲの式神を放って、本拠地の状況を把握する。
 エレンが、ルーンをいつもの熊に姿に戻した。
 そして、エレンはルーンと一緒に、盗賊の本拠地に戦いに向かった。
 コハクが、トカゲの感覚を共有した情報をエレンに伝える。
 エレンとルーンによって、盗賊たちが倒されていく。盗賊たちが倒れている横を、エレンとルーンの後をコハクが追う。
 エレンは、体術と小刀を使って盗賊たちと戦い交える。ルーンは、大きな手を振って爪で盗賊たちを薙ぎ倒していった。
 全ての盗賊たちが倒された。
 残るは、首領である呪術者だけだ。
 いるであろう部屋の扉に、コハクとエレンとルーンが立っていた。
 エレンが扉を開いた。
 呪術者が、大鎌を持った人型の式神を召喚して待ち受けていた。
「どんな奴かと思ったら、こんな餓鬼とはな」
「その餓鬼に、倒されているあなたの仲間は情けないですよね」
 ハハハハっと呪術者が笑った。
「仲間なわけあるものか。ただの駒だ。こんな、ごろつき者など、いくらでもいる」
 互いの利益のみの関係だという。
 コハクは、悲しくて虚しくて寂しい心になった。
「女の子たちを拐うだなんて、どうして、そんな酷いことをするんだ」
 コハクが声を荒げた。
「理由なんて、金しかないわ。呪術を使えるんだぞ。特別なこの力を使って何が悪い。命がけの退魔をしても、報酬は微々たるものだ。感謝も口だけで、こちらに得などないわ」
「そんな、勝手な理由で、許せない」
「許せないだと、餓鬼にはわからないだろうよ。ここは俺の結界内だぞ。多少の呪術を使えるだろうが、何をどうすると言うのだ。俺の支配圏では焼け石に水」
 ガハハハっと呪術者が笑う。
 呪術者が大鎌を持った式神に、コハクとエレンを討つように命じた。
 大鎌を持つ式神が襲ってくるのを、ルーンが立ち向かって防ぐ。
 間合いを詰めたいが、大鎌を振り回されて詰め寄れない。ルーンが近づけられなくて、苦戦している。
『ニョキニョキ生えてお邪魔むしー』
「カリン!」
『風が吹いてぇ、葉っぱで目隠しぃー』
 部屋の中から突如として木が現れて枝が伸びて、大鎌を持つ式神の動きを遅らせた。
 風が吹き、木の葉が舞い散ちれば視界を遮った。
「なんだ、これは」
 呪術者も大鎌を持つ式神も対応が出来ずに隙が出来た。
 コハクの右手には水の球。左手には光の球があった。呪術者の言うように、相手の結界で呪力を使うには武が悪い。そんな事は百も承知であるから、この本拠地に向かう前から密かに呪力を練り上げて、機を狙っていた。
 呪術者と大鎌を持つ式神を狙って、水球から弾がいくつも放たれる。
 当たれば、水圧でよろけて、弾ければ水浸しになる。それなり痛みもあった。
「くそ、こんな子供騙しな技」
 呪術者が召喚術式を発動した。
 すると、魔物が現れた。
 おそらく、ニイナを襲って連れ去った魔物だろう。
 魔物がコハクに襲いかかる。
 コハクが魔物に向かって水球弾を撃つ。
 エレンが間に入って、魔物が水球弾で怯んだ隙をみて小刀を投げつけた。
 コハクの水球弾が止まない。それに合わせて、エレンの素早い動きで魔物を切り刻む。魔物は致命傷を負って消滅した。
「くそっ」
「これが最後だ」
 コハクが放ったのは特大の水球弾だった。
 それが、呪術者に当たり弾けるかと思いきや、弾けずに呪術者を水球弾の中に捕えたのだ。
 呪術者は驚きながら、息が出来ないと慌てている様子だが、不思議な事に息が出来た。
 ホッとしたのも束の間。
 コハクの左手の光の球からビリビリっと音がしている。水の攻撃をしている間に、左手の光の球で雷を作っていたのだ。
 その雷を、電撃を水球へと放った。
 呪術者は成す術もなく、痺れて動けなくなった。
 水球は消えて、床に横たわっている。
 呪術者が気を失ったことで、式神は消えて結界は解けた。
「やっつけたよ。カリン、エレン」
「コハク、すごーいっ」
 すると、コハクの後ろから気配がした。
 コハクは後ろを振り向いて、大きく笑った。
「シロガネっ」
 コハクは飛びつくように駆け寄った。
「見てたの?」
「見てたよ」
 カリンが、否エレンは、膝をついて首を垂れている。
 シロガネの後ろにはジャノメがいた。
「知っていると思うけど、今回の件は、全てボクが決めたんだ。そして、皆んなに無理を承知でお願いしたことなんだ。だから、皆んなを怒らないで下さい」
 コハクが、深々とシロガネに頭を下げたのだ。
「頭を上げておくれ。コハクは、私に対して、そんなことをしなくていいんだよ。心配はしたけど、怒ってはいないからね。それに、コハクは、ちゃんと連絡と報告をした。ここの場所もわかるようにした。そして、結果も出した。何も問題はないよ」
 コハクが、一歩前に近づいてシロガネに触れようとしたが、その手を止めた。
 代わりにシロガネが、その手を握って胸の中に寄せて抱きしめた。
「シロガネ、ありがとう」
「よく頑張ったね」
 シロガネが優しくコハクの髪を撫でた。

「この後、盗賊たちと呪術者は奉行所に引き渡したらいいのかな」
「その辺りの連絡の手配は、スイセンに任せて来たよ」
「じゃあ、倒した盗賊たちを捕まえておかなきゃ」
「心配ないよ。コハクたちが倒した盗賊たちは、ザクロとゲンゲが、縄で縛って捕らえていると思うよ」
「そうなんだっ! じゃあ、ユウキとニイナに、捕らえられていた女の子たちは……」
「コハクの友達だね。ナデシコとスミレとユリが側にいるよ。皆んなの傷や心の治療を任せている。後は、アヤメとシオンには、少女たちの両親や身内に連絡をさせているよ」
「色々と、ありがとう」
「おやおや、畏まらないでくれるかい」
「だって、結局はシロガネたちを当てにして動いていたんだもん」
「別にいいんじゃないかな。使えるモノは使うべきだよ」
「ボクは、一人では動けなかったんだ。シロガネがいてくれて、式神の皆んながいるから、動くことが出来たんだ」
「それでいいんだよ」
 コハクとシロガネが微笑み合う。

 コハクはシロガネたちと一緒に、シロガネが使った光の道で、ユウキとニイナのところに戻った。
 光の中からコハクが現れた。
「コハク」
「コハクっ」
 ユウキとニイナは驚きながら、名前を呼んで駆け寄った。
「ユウキ、ニイナ」
 コハクが二人に手を振った。
「ありがとうな、ニイナを助けてくれて」
「コハク、助けてくれてありがとうね」
「うん、皆んな無事で良かったよ」
「退魔士って、すごいんだな」
「そうかもしれないね。だけど、ユウキ、覚えておいてね。今回の首謀者は、ボクたちと同じ呪術を使える者で、実行犯は盗賊だった。魔物を操っていたんだ」
「わかってるよ、お前が特別なんだってな。それは、俺とニイナの秘密だ」
「うん、ありがとう」
 コハクはユウキとニイナに、また町で会う約束をして別れた。
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