八千代を翔けて、愛う日まで

ゆらん

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62友達の救出

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 コハクとエレンが、鈴虫の音を辿って天翔馬で空を翔けた。
 その速さは麒麟に劣るが、速い。
 小さな山が見えた。
 鈴虫の鳴く目的の場所を目指して、山の中に降りた。音が聞こえるのは、山道から外れた場所だった。
「コハクの言ってた通り、結界をしているね」
 エレンが呟いた。
 呪力で結界の感知が出来るからこそ、場所の特定が出来た。
 普通の人ならば、結界を踏むと一瞬にして、結界の反対側に飛ばされる。不思議に思いつつも山の中の出来事は、迷ったのかと思い気づかないままだろう。
「どうするコハク」
「鈴虫にボクの呪力を送って、結界をすり抜けないように出来るよ。だから、ボクの呪力をエレンにも送るね」
「なるほど。お願いするよ」
「この後、ルーンはどうするの? 結界の中は召喚が出来ないかも」
「このまま一緒に来てもらおうと思う。見てて」
 エレンが呪を唱えて術式が発動した。
 天翔馬のルーンの姿が小さな栗鼠に変わった。もちろん、額には三日月の痣がある。
「かわいい」
 キュキュっとルーンが鳴いて、コハクの肩に乗った。
「かわいいよぉねぇ」
「あれ、カリン?」
「ふふふっ、コハクは、すぐにわかるからぁ、すごいのぉ」
「魔物じゃなくてぇ、人が相手ならばぁ、エレンがいいのぉ。呪術をつかうときがあったら、ぼく、がんばるからねぇ」
「うん、ありがとう」
「それじゃ、行こうコハク」
「行こう、エレン」
 コハクが、呪力を鈴虫に送った。
 そして、結界の中へと入っていく。
 ゆっくりと周りを警戒しながら、中に進んでいくと声が聞こえてきた。
 コハクとエレンは、茂みに隠れて様子をうかがう。盗賊らしき男たちが大声で話していた。
 話しの内容から、魔物を操って女の子を拐っては、遊郭に売り飛ばす算段なのだとわかった。
 コハクは、驚きながらも怒り震える手を握りしめた。
 そんなコハクに、エレンが静かにコハクの肩に手を当てて慰めるように、優しく撫でた。
 コハクは小さく頷いて、冷静を取り戻す。
 盗賊たちの話しから、この奥にある小屋に拐った女の子たちがいるらしい。
 きっとニイナもそこにいるはずだ。
 コハクとエレンは、盗賊たちに見つからないように遠回りをして小屋に向かった。
 見つけた小屋の前には、見張りの盗賊が一人立っていた。
 小屋の中の状況を確認するために、コハクが白い紙を口に当てて呪力を込める。小さく呪を唱えて、トカゲの式神を作った。
 小屋の隙間からトカゲを忍び込ませた。
 トカゲの感覚と共有して中の状況を把握する。小屋は扉を開けると広間があり、その奥に部屋があった。
 その部屋には女の子たちが数人いた。その中に、ニイナがいるのを見つけた。
 すぐにでも助けたい。だけど、この結界の中を移動して、この人数を無事に救い出すのは難しい。
 どうしたら良いのだろうか。
 コハクが考えていると、リーン、リーンと鈴虫の鳴く声が聞こえた。
 鈴虫の式神が主であるコハクの元に戻って来たのだ。
「そうだ」
 コハクが指を噛んで血を滲ませた。そして、小屋の壁に術式を描いた。
「これは……、コハクが鈴虫を送るために描いた術式だね」
 エレンが呟いた。
「うん。相手に気づかれないように、ぼくの式神がこっちに来れるようにしただけだった。だから、この術式で、こっちとあっちを繋いだんだ。これで、ニイナたちを送れるよ」
「でも、式神の召喚術式だから人は移動出来ないって……」
「そう、人だけならね。だって魔物は、ニイナを連れてここに戻ったんだ」
「なるほど」
「あの式神の召喚術式を使った鈴虫と一緒なら、可能だよ」
 コハクとエレンは移動して小屋の前に来ていた。
「じゃあ、エレンお願い」
 エレンは静かに頷いて、見張りの盗賊に向かって行く。
 突然、現れたエレンに、盗賊は驚いた。
 エレンの素早い動きの体術にて、盗賊は刀を抜く間もなく呆気なく倒された。
「エレン、強いっ」
「まぁ、不意打ちだしね。それに相手が弱すぎなだけだ」
 コハクとエレンは、小屋の扉を開けて中に入る。そして、奥の扉を開けた。
 部屋の中にいた少女たちが、一斉にコハクたちを見た。
 その瞳は悲しみを携えて怯えていた。
「コ、コハクぅ!」
 ニイナが声を上げた。立ち上がって、涙を流してながらコハクに駆け寄った。
「ニイナ、無事で良かったよ」
「コハク、どうしてぇ、ここに……」
「もう、大丈夫だよ。皆んなを助けに来たんだ。説明は後にして、とりあえず、ここから皆んなと一緒に出よう」
 ニイナと一緒に囚われていた少女たちの瞳に光が差した。
 小屋の外に出た。
 コハクの描いた術式の前に、ニイナと少女たちが手を繋いでいる。
 コハクが、ニイナに鈴虫を渡した。
「今から、ユウキのところへ送るね。そこで助けを待ってて、ボクの式神がいるから安心してね」
「わかったっ」
 ニイナは、嬉しそうに頷いた。
 コハクが術式を発動すると、ニイナと少女たちが術式の中に吸い込まれるように消えた。
「これで一安心だ」
「それでコハクは、これから、どうするつもり」
「このまま放っておいたら、ニイナのように、また女の子たちが攫われる。それを阻止しなきゃって思ってる」
「それは、ここのにいる盗賊たちと戦うってことだよ。それに、首謀者は呪術者だ」
「だね。だからこそ、許せないんだ」
「主の式神として、主の心を汲むならば、引き返すことを推奨するよ」
「エレン……」
「だけど、コハクの友達としてなら、コハクと同じ気持ちなんだ」
「エレンっ」
「さて、どうしようかな。主に叱られるかな」
 エレンが苦笑している。
「その時は、ぼくも一緒に叱られるよ!」
 コハクの言葉にエレンは笑った。しかし、真剣な表情に変わる。
「もしも、コハクの身に危険が及んだ場合、ぼくとカリンで、その場を凌ぐ。その隙に天翔馬に乗って、結界の外に出てほしい」
「そんなっ、二人を放って逃げ出すなんて……」
「この約束が守れないなら、協力は出来ない。ぼくは主の式神だ。主は、ぼくたち神使に、コハクを守るように命じている。上級式神がコハクの願いを聞き入れたのは、ぼくたちがいたからだ」
 エレンの言葉が重い。
 ここにいる式神がエレンでなければ、きっと是が非でも、この場から連れ戻されていたに違いない。
 コハクは深呼吸をした。
「わかった、約束する。だけど、そうならないようにする為に策を考えるよ。だけど、もしもの時は、エレンの言う通りにする。だけど、絶対に戻って来てね。これも約束だよ」
「うん、約束だ」
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