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67約束の場所
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コハクが光の道を通り抜けると先ほど変わらない光景が目に広がる。
そして、約束の場所にシロガネが佇んでいた。コハクがシロガネに駆け寄った。
「シロガネっ」
「やっと会えたね」
シロガネがコハクの手をとって強く握った。
「僕にとっては今さっきだけど、シロガネにとっては百年振りなんだよね」
「そうだよ」
シロガネは、コハクの存在を確かめるように握った手を自身の頬に寄せた。
「シロガネ、全然変わらないね。覚えてくれてありがとう」
「忘れるわけがないよ。コハクも変わらない。ずっと会える日を待っていたよ」
コハクから浄化の光がシロガネに流れている。今なら分かる。コハクは、ずっとシロガネの魔素を浄化していたのだ。
「シロガネ、無理をしては駄目だよ」
「心配は無いさ」
コハクの後ろに控えている浅葱からの視線をシロガネは躱す。
別な気配をコハクの後ろから感じた。
「中央国は、陰陽寮は、どんな様子」
コハクが背後で跪く緋色に問う。
「完全に気づかれてますよ。寮の中で待ち構えますね」
「なら、正々堂々と向かえばいいかな。でも下準備は必要だから、浅葱、山吹」
黄白が二人を見つめる。
「先に、戻って他の式神たちと連携をとっておいて」
「心得た」と浅葱が無愛想に頷く。
「了解だ」と山吹はニヤリと笑う。
「緋色。しっかりと黄白の護衛するのだぞ。この意味、分かっているよな」
「浅葱様の憂いを晴らして差し上げたいのですが、おいしいネタのお持ち帰りをする約束が御座いましてね」
「千草かっ」
「もう、下らない話ししてないで、さっさと行くよ」
コハクは召喚の術式を始める。
「我が名は黄白。神、白桜の命に応えよ。竜胆と桔梗よ。参れ」
金風の中から瓜二つの少女が二人……否。少女の姿をした美少年が二人現れた。
「お呼びでしょうか」
少年たちの声が重なる。
「二人に、中央国の都まで続く道を作って欲しい」
「この命は、白桜様なの」
一本角がある少年が呟く。
「それとも、黄白様なの」
ニ本角がある少年が呟く。
「えっと……。竜胆と桔梗、どうしたのかな」
「お二人とも拗ねていらしゃるようですよ」
緋色が捕捉した。
「どうして?」
「おや、おわかりならないとは、なんて冷たい方でしょうか。竜胆さんも桔梗さんも事情を知らされないまま、愛する方に放ったらかしにされてしまったのですよ。それを悲しんでおられます」
「愛する方? 白桜なら、ボクが襲われて呪力がなくなったから身を隠す為に力を使ったからなんだ」
「もう知ってる。でも、愛する方が違う」
少年たちが声を揃える。
二人の言う、違うが、何を指すのか分からないままに、コハクは話しを進める。
「ひょっとして、他の皆んなも怒ってたりしてるのかな」
「他の人は知らない」
無表情で竜胆が言う。
「でも千草は喜んでいる」
少し楽しそうに桔梗が言う。
「やはり千草か」
浅葱の嘆きが聞こえた。
「えっと、千草がどうしたの」
コハクが尋ねた。
「浮気がおいしいって」
「ネタのご褒美を所望するって」
「浮気って、なんのこと?」
「気にしない。浮気しても大丈夫。だって、私たちの愛する人は変わらない」
二人が何を言っているのか理解出来ないのは、いつもの事だった。
「主は式神の皆んなを愛してるって言った」
二人が声を合わせて、黄白の話しのをする。
話しについて来れてない黄白は、唐突過ぎて良く分からないが、記憶を辿る。
「それはいつの話しかな?」
「あれは主がまだ可愛いらしい姿だった」
「よちよちと歩いて、言葉を交わせるように」
「覚えているぞ、忘れもしない。拙い言葉で、愛してるって伝える黄白の可愛いさに、感無量だった」
「浅葱……落ち着いてね」
浮気も褒美も曖昧に、黄白は竜胆と桔梗に命じる。
「全部終わった後にしようね。仕事してくれる?」
「ご命令承りました。道を繋げます」
フゥっと、黄白が息をつくと、シロガネが優しくコハクの頭を撫でた。コハクが嬉しそうに笑う。
見つめ合う二人の様子を、竜胆と桔梗が見逃さずに、呪を唱えて舞い踊った。
桜の木の横に大きな空間ができた。
それを通れば、中央国の都にある陰陽寮の目に行く。
浅葱と山吹が先に向かう。
「シロガネ。向こうに行く前に、僕のこと。今の状況になった経緯を説明をするね」
「よろしく頼むよ」
黄白は王弟として、表向きには何不自由なく育った。
それは黄白の出自が不鮮明であり、臣下や付添の者たちからすれば、誠なのかと疑わしい存在であったからだ。
それは、ある日、突然。
中央国の王である赤青が王宮に赤ん坊を連れて姿を現して告げた。
「この赤子は我が父の息子で、我が弟なり」
家臣たちは突然の事に驚愕する。
前王である赤青の父親は、流行り病にて一年前に崩御していた。その後を若干、十八歳の若さで後を継いだのが赤青である。
そして、こう付け加えた。
「この子は類稀な存在となろう。大切に育てよ」
王の言葉は絶対である。全ての疑問を飲み込んで家臣たちは是とした。
だが、その言葉の通りとはいかないものだ。
赤青の言葉通り、黄白の呪力は桁違いの質と量にて、益々、好奇な目を向けられる。
しかも、黄白の呪力に引き寄せられた魔物がまとわりつけば、不可解な現象が起こった。
それは、あらゆる疑念を持つ者たちにとっての恐れとなる。
それでも黄白が素直な心を持って育ったのは、神白桜により見守られたからだった。
この世を統べる神は、八百年前から不在であった。だが、百年前に新たな神として白桜が生まれた。正確には目覚めた。
その白桜の命の元、双璧である水神の浅葱と雷神の山吹が黄白の護衛につく。
綺麗な呪力の幼い子供は、魔物の格好の獲物となる。
まだ、動けない知識もない。誰かが守ってやらねばならない。
最初こそ、不平不満な浅葱であったが、黄白の面倒を見ているうちに情が沸く。深い愛情を注いだ。淡々と任務をこなす山吹とて、黄白と接している内に絆されて弟のような存在となった。
そして、十四歳の時に神白桜により依代に選ばれると、黄白の存在が色んな意味で注目の的となる。
だが、黄白は神白桜からの申し出を断った。多くの者たちが、羨ましく、妬まれ、崇められる。
黄白の心の内など誰も知る由もない。勝手な推測がひとり歩きする。
その後、黄白は陰陽寮の陰陽師となった。
莫大な呪力と呪術の才能と知識の深さは、まさに神がかりだ。
誰もが『神憑』だと思うほどである。
『神憑』とは『神月』とも表記されて、神の依代を指す。それは神の寵愛を受ける者の証。
例え『神月』でも万能ではない。
神が光ならば、魔は闇である。
夜の暗闇、鬱蒼とした森、洞窟、水底、廃墟など光が届かないところは気をつけなければならない。
さらに警戒しなければならない刻があった。それは新月である。
月のない新月は、月の光が地上に届か無くなり、現世が暗闇に染まる。
月の光の力を失えば、後光と呼ばれる神の力も失われて使えなくなる。
なので、神の力がなくなる故に新月の俗称は、神無月と呼ばれている。
その名の通り呼んで字の如く、神がいないという意味だ。
新月に神の力が使えないとしても、元々の力があるので魔物と対峙しても心配する事は無いだろう。
ただ多勢に無勢のよろしくない状況には、用心に越した事はなかった。
何故なら、敵が魔物だけに限らないという事である。
だから神白桜は新月の刻は必ず、黄白を守るために、右目に浅葱と左目に山吹を封印して守護していた。
元服した黄白は、陰陽師として、王弟として黄白は国家に携わり有能を発揮する。
だが、それを快く思わない者がいるのは当然だろう。
そして、約束の場所にシロガネが佇んでいた。コハクがシロガネに駆け寄った。
「シロガネっ」
「やっと会えたね」
シロガネがコハクの手をとって強く握った。
「僕にとっては今さっきだけど、シロガネにとっては百年振りなんだよね」
「そうだよ」
シロガネは、コハクの存在を確かめるように握った手を自身の頬に寄せた。
「シロガネ、全然変わらないね。覚えてくれてありがとう」
「忘れるわけがないよ。コハクも変わらない。ずっと会える日を待っていたよ」
コハクから浄化の光がシロガネに流れている。今なら分かる。コハクは、ずっとシロガネの魔素を浄化していたのだ。
「シロガネ、無理をしては駄目だよ」
「心配は無いさ」
コハクの後ろに控えている浅葱からの視線をシロガネは躱す。
別な気配をコハクの後ろから感じた。
「中央国は、陰陽寮は、どんな様子」
コハクが背後で跪く緋色に問う。
「完全に気づかれてますよ。寮の中で待ち構えますね」
「なら、正々堂々と向かえばいいかな。でも下準備は必要だから、浅葱、山吹」
黄白が二人を見つめる。
「先に、戻って他の式神たちと連携をとっておいて」
「心得た」と浅葱が無愛想に頷く。
「了解だ」と山吹はニヤリと笑う。
「緋色。しっかりと黄白の護衛するのだぞ。この意味、分かっているよな」
「浅葱様の憂いを晴らして差し上げたいのですが、おいしいネタのお持ち帰りをする約束が御座いましてね」
「千草かっ」
「もう、下らない話ししてないで、さっさと行くよ」
コハクは召喚の術式を始める。
「我が名は黄白。神、白桜の命に応えよ。竜胆と桔梗よ。参れ」
金風の中から瓜二つの少女が二人……否。少女の姿をした美少年が二人現れた。
「お呼びでしょうか」
少年たちの声が重なる。
「二人に、中央国の都まで続く道を作って欲しい」
「この命は、白桜様なの」
一本角がある少年が呟く。
「それとも、黄白様なの」
ニ本角がある少年が呟く。
「えっと……。竜胆と桔梗、どうしたのかな」
「お二人とも拗ねていらしゃるようですよ」
緋色が捕捉した。
「どうして?」
「おや、おわかりならないとは、なんて冷たい方でしょうか。竜胆さんも桔梗さんも事情を知らされないまま、愛する方に放ったらかしにされてしまったのですよ。それを悲しんでおられます」
「愛する方? 白桜なら、ボクが襲われて呪力がなくなったから身を隠す為に力を使ったからなんだ」
「もう知ってる。でも、愛する方が違う」
少年たちが声を揃える。
二人の言う、違うが、何を指すのか分からないままに、コハクは話しを進める。
「ひょっとして、他の皆んなも怒ってたりしてるのかな」
「他の人は知らない」
無表情で竜胆が言う。
「でも千草は喜んでいる」
少し楽しそうに桔梗が言う。
「やはり千草か」
浅葱の嘆きが聞こえた。
「えっと、千草がどうしたの」
コハクが尋ねた。
「浮気がおいしいって」
「ネタのご褒美を所望するって」
「浮気って、なんのこと?」
「気にしない。浮気しても大丈夫。だって、私たちの愛する人は変わらない」
二人が何を言っているのか理解出来ないのは、いつもの事だった。
「主は式神の皆んなを愛してるって言った」
二人が声を合わせて、黄白の話しのをする。
話しについて来れてない黄白は、唐突過ぎて良く分からないが、記憶を辿る。
「それはいつの話しかな?」
「あれは主がまだ可愛いらしい姿だった」
「よちよちと歩いて、言葉を交わせるように」
「覚えているぞ、忘れもしない。拙い言葉で、愛してるって伝える黄白の可愛いさに、感無量だった」
「浅葱……落ち着いてね」
浮気も褒美も曖昧に、黄白は竜胆と桔梗に命じる。
「全部終わった後にしようね。仕事してくれる?」
「ご命令承りました。道を繋げます」
フゥっと、黄白が息をつくと、シロガネが優しくコハクの頭を撫でた。コハクが嬉しそうに笑う。
見つめ合う二人の様子を、竜胆と桔梗が見逃さずに、呪を唱えて舞い踊った。
桜の木の横に大きな空間ができた。
それを通れば、中央国の都にある陰陽寮の目に行く。
浅葱と山吹が先に向かう。
「シロガネ。向こうに行く前に、僕のこと。今の状況になった経緯を説明をするね」
「よろしく頼むよ」
黄白は王弟として、表向きには何不自由なく育った。
それは黄白の出自が不鮮明であり、臣下や付添の者たちからすれば、誠なのかと疑わしい存在であったからだ。
それは、ある日、突然。
中央国の王である赤青が王宮に赤ん坊を連れて姿を現して告げた。
「この赤子は我が父の息子で、我が弟なり」
家臣たちは突然の事に驚愕する。
前王である赤青の父親は、流行り病にて一年前に崩御していた。その後を若干、十八歳の若さで後を継いだのが赤青である。
そして、こう付け加えた。
「この子は類稀な存在となろう。大切に育てよ」
王の言葉は絶対である。全ての疑問を飲み込んで家臣たちは是とした。
だが、その言葉の通りとはいかないものだ。
赤青の言葉通り、黄白の呪力は桁違いの質と量にて、益々、好奇な目を向けられる。
しかも、黄白の呪力に引き寄せられた魔物がまとわりつけば、不可解な現象が起こった。
それは、あらゆる疑念を持つ者たちにとっての恐れとなる。
それでも黄白が素直な心を持って育ったのは、神白桜により見守られたからだった。
この世を統べる神は、八百年前から不在であった。だが、百年前に新たな神として白桜が生まれた。正確には目覚めた。
その白桜の命の元、双璧である水神の浅葱と雷神の山吹が黄白の護衛につく。
綺麗な呪力の幼い子供は、魔物の格好の獲物となる。
まだ、動けない知識もない。誰かが守ってやらねばならない。
最初こそ、不平不満な浅葱であったが、黄白の面倒を見ているうちに情が沸く。深い愛情を注いだ。淡々と任務をこなす山吹とて、黄白と接している内に絆されて弟のような存在となった。
そして、十四歳の時に神白桜により依代に選ばれると、黄白の存在が色んな意味で注目の的となる。
だが、黄白は神白桜からの申し出を断った。多くの者たちが、羨ましく、妬まれ、崇められる。
黄白の心の内など誰も知る由もない。勝手な推測がひとり歩きする。
その後、黄白は陰陽寮の陰陽師となった。
莫大な呪力と呪術の才能と知識の深さは、まさに神がかりだ。
誰もが『神憑』だと思うほどである。
『神憑』とは『神月』とも表記されて、神の依代を指す。それは神の寵愛を受ける者の証。
例え『神月』でも万能ではない。
神が光ならば、魔は闇である。
夜の暗闇、鬱蒼とした森、洞窟、水底、廃墟など光が届かないところは気をつけなければならない。
さらに警戒しなければならない刻があった。それは新月である。
月のない新月は、月の光が地上に届か無くなり、現世が暗闇に染まる。
月の光の力を失えば、後光と呼ばれる神の力も失われて使えなくなる。
なので、神の力がなくなる故に新月の俗称は、神無月と呼ばれている。
その名の通り呼んで字の如く、神がいないという意味だ。
新月に神の力が使えないとしても、元々の力があるので魔物と対峙しても心配する事は無いだろう。
ただ多勢に無勢のよろしくない状況には、用心に越した事はなかった。
何故なら、敵が魔物だけに限らないという事である。
だから神白桜は新月の刻は必ず、黄白を守るために、右目に浅葱と左目に山吹を封印して守護していた。
元服した黄白は、陰陽師として、王弟として黄白は国家に携わり有能を発揮する。
だが、それを快く思わない者がいるのは当然だろう。
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