八千代を翔けて、愛う日まで

ゆらん

文字の大きさ
68 / 79

67約束の場所

しおりを挟む
 コハクが光の道を通り抜けると先ほど変わらない光景が目に広がる。
 そして、約束の場所にシロガネが佇んでいた。コハクがシロガネに駆け寄った。
「シロガネっ」
「やっと会えたね」
 シロガネがコハクの手をとって強く握った。
「僕にとっては今さっきだけど、シロガネにとっては百年振りなんだよね」
「そうだよ」
 シロガネは、コハクの存在を確かめるように握った手を自身の頬に寄せた。
「シロガネ、全然変わらないね。覚えてくれてありがとう」
「忘れるわけがないよ。コハクも変わらない。ずっと会える日を待っていたよ」
 コハクから浄化の光がシロガネに流れている。今なら分かる。コハクは、ずっとシロガネの魔素を浄化していたのだ。
「シロガネ、無理をしては駄目だよ」
「心配は無いさ」
 コハクの後ろに控えている浅葱からの視線をシロガネは躱す。
 別な気配をコハクの後ろから感じた。
「中央国は、陰陽寮は、どんな様子」
 コハクが背後で跪く緋色に問う。
「完全に気づかれてますよ。寮の中で待ち構えますね」
「なら、正々堂々と向かえばいいかな。でも下準備は必要だから、浅葱、山吹」
 黄白が二人を見つめる。
「先に、戻って他の式神たちと連携をとっておいて」
「心得た」と浅葱が無愛想に頷く。
「了解だ」と山吹はニヤリと笑う。
「緋色。しっかりと黄白の護衛するのだぞ。この意味、分かっているよな」
「浅葱様の憂いを晴らして差し上げたいのですが、おいしいネタのお持ち帰りをする約束が御座いましてね」
「千草かっ」
「もう、下らない話ししてないで、さっさと行くよ」
 コハクは召喚の術式を始める。
「我が名は黄白。神、白桜の命に応えよ。竜胆りんどう桔梗ききょうよ。参れ」
 金風の中から瓜二つの少女が二人……否。少女の姿をした美少年が二人現れた。
「お呼びでしょうか」
 少年たちの声が重なる。
「二人に、中央国の都まで続く道を作って欲しい」
「この命は、白桜様なの」
 一本角がある少年が呟く。
「それとも、黄白様なの」
 ニ本角がある少年が呟く。
「えっと……。竜胆と桔梗、どうしたのかな」
「お二人とも拗ねていらしゃるようですよ」
 緋色が捕捉した。
「どうして?」
「おや、おわかりならないとは、なんて冷たい方でしょうか。竜胆さんも桔梗さんも事情を知らされないまま、愛する方に放ったらかしにされてしまったのですよ。それを悲しんでおられます」
「愛する方? 白桜なら、ボクが襲われて呪力がなくなったから身を隠す為に力を使ったからなんだ」
「もう知ってる。でも、愛する方が違う」
 少年たちが声を揃える。
 二人の言う、違うが、何を指すのか分からないままに、コハクは話しを進める。
「ひょっとして、他の皆んなも怒ってたりしてるのかな」
「他の人は知らない」
 無表情で竜胆が言う。
「でも千草ちぐさは喜んでいる」
 少し楽しそうに桔梗が言う。
「やはり千草か」
 浅葱の嘆きが聞こえた。
「えっと、千草がどうしたの」
 コハクが尋ねた。
「浮気がおいしいって」
「ネタのご褒美を所望するって」
「浮気って、なんのこと?」
「気にしない。浮気しても大丈夫。だって、私たちの愛する人は変わらない」
 二人が何を言っているのか理解出来ないのは、いつもの事だった。
「主は式神の皆んなを愛してるって言った」
 二人が声を合わせて、黄白の話しのをする。
 話しについて来れてない黄白は、唐突過ぎて良く分からないが、記憶を辿る。
「それはいつの話しかな?」
「あれは主がまだ可愛いらしい姿だった」
「よちよちと歩いて、言葉を交わせるように」
「覚えているぞ、忘れもしない。拙い言葉で、愛してるって伝える黄白の可愛いさに、感無量だった」
「浅葱……落ち着いてね」
 浮気も褒美も曖昧に、黄白は竜胆と桔梗に命じる。
「全部終わった後にしようね。仕事してくれる?」
「ご命令承りました。道を繋げます」
 フゥっと、黄白が息をつくと、シロガネが優しくコハクの頭を撫でた。コハクが嬉しそうに笑う。
 見つめ合う二人の様子を、竜胆と桔梗が見逃さずに、呪を唱えて舞い踊った。
 桜の木の横に大きな空間ができた。
 それを通れば、中央国の都にある陰陽寮の目に行く。
 浅葱と山吹が先に向かう。
「シロガネ。向こうに行く前に、僕のこと。今の状況になった経緯を説明をするね」
「よろしく頼むよ」

 黄白は王弟として、表向きには何不自由なく育った。
 それは黄白の出自が不鮮明であり、臣下や付添の者たちからすれば、誠なのかと疑わしい存在であったからだ。
 それは、ある日、突然。
 中央国の王である赤青せきせいが王宮に赤ん坊を連れて姿を現して告げた。
「この赤子は我が父の息子で、我が弟なり」
 家臣たちは突然の事に驚愕する。
 前王である赤青の父親は、流行り病にて一年前に崩御していた。その後を若干、十八歳の若さで後を継いだのが赤青である。
 そして、こう付け加えた。
「この子は類稀な存在となろう。大切に育てよ」
 王の言葉は絶対である。全ての疑問を飲み込んで家臣たちは是とした。
 だが、その言葉の通りとはいかないものだ。
 赤青の言葉通り、黄白の呪力は桁違いの質と量にて、益々、好奇な目を向けられる。
 しかも、黄白の呪力に引き寄せられた魔物がまとわりつけば、不可解な現象が起こった。
 それは、あらゆる疑念を持つ者たちにとっての恐れとなる。
 それでも黄白が素直な心を持って育ったのは、神白桜により見守られたからだった。

 この世を統べる神は、八百年前から不在であった。だが、百年前に新たな神として白桜が生まれた。正確には目覚めた。
 その白桜の命の元、双璧である水神の浅葱と雷神の山吹が黄白の護衛につく。
 綺麗な呪力の幼い子供は、魔物の格好の獲物となる。
 まだ、動けない知識もない。誰かが守ってやらねばならない。
 最初こそ、不平不満な浅葱であったが、黄白の面倒を見ているうちに情が沸く。深い愛情を注いだ。淡々と任務をこなす山吹とて、黄白と接している内に絆されて弟のような存在となった。
 そして、十四歳の時に神白桜により依代に選ばれると、黄白の存在が色んな意味で注目の的となる。
 だが、黄白は神白桜からの申し出を断った。多くの者たちが、羨ましく、妬まれ、崇められる。
 黄白の心の内など誰も知る由もない。勝手な推測がひとり歩きする。
 その後、黄白は陰陽寮の陰陽師となった。
 莫大な呪力と呪術の才能と知識の深さは、まさに神がかりだ。
 誰もが『神憑かみつき』だと思うほどである。
『神憑』とは『神月』とも表記されて、神の依代を指す。それは神の寵愛を受ける者の証。
 例え『神月』でも万能ではない。
 神が光ならば、魔は闇である。
 夜の暗闇、鬱蒼とした森、洞窟、水底、廃墟など光が届かないところは気をつけなければならない。
 さらに警戒しなければならない刻があった。それは新月である。
 月のない新月は、月の光が地上に届か無くなり、現世が暗闇に染まる。
 月の光の力を失えば、後光と呼ばれる神の力も失われて使えなくなる。
 なので、神の力がなくなる故に新月の俗称は、神無月神無し憑きと呼ばれている。 
 その名の通り呼んで字の如く、神がいないという意味だ。
 新月に神の力が使えないとしても、元々の力があるので魔物と対峙しても心配する事は無いだろう。
 ただ多勢に無勢のよろしくない状況には、用心に越した事はなかった。
 何故なら、敵が魔物だけに限らないという事である。
 だから神白桜は新月の刻は必ず、黄白を守るために、右目に浅葱と左目に山吹を封印して守護していた。

 元服した黄白は、陰陽師として、王弟として黄白は国家に携わり有能を発揮する。
 だが、それを快く思わない者がいるのは当然だろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

邪魔はさせない

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 病棟で知り合った2人。生まれ変わって異世界で冒険者になる夢を叶えたい!

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

【蒼き月の輪舞】 モブにいきなりモテ期がきました。そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!

黒木  鳴
BL
「これが人生に三回訪れるモテ期とかいうものなのか……?そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!そして俺はモブっ!!」アクションゲームの世界に転生した主人公ラファエル。ゲームのキャラでもない彼は清く正しいモブ人生を謳歌していた。なのにうっかりゲームキャラのイケメン様方とお近づきになってしまい……。実は有能な無自覚系お色気包容主人公が年下イケメンに懐かれ、最強隊長には迫られ、しかも王子や戦闘部隊の面々にスカウトされます。受け、攻め、人材としても色んな意味で突然のモテ期を迎えたラファエル。生態系トップのイケメン様たちに狙われたモブの運命は……?!固定CPは主人公×年下侯爵子息。くっついてからは甘めの溺愛。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

処理中です...