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相談業務
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その日、デスクで電話番をしていた葵は社長の滝崎に応接室にお茶を持ってくるように言われた。客が来たのだ。
早速茶を淹れて運び込むと二十代後半の女性がいた。
名を瀬戸舞香という。勝田によると、ここの不動産屋が紹介した物件に住んでいる客で商社で事務員をしているそうだ。
葵も同席するよういわれた。そう言えば、契約書に雑用には相談および、調査業務もふくむと書かれていた。早速クレーム処理だろうか。それならばこの高い給料も納得である。葵は少し緊張して席に着く。
しかし、その相談内容が住まいの事ではなく。
「なんだか、最近、体が重いんです。頭がずきずきするというか、それに金縛りがひどくて。夜中に誰かがのしかかってくるようなんです。」
普通ならば、心療内科を紹介されそうな相談内容だが、社長は真剣な表情で聞いている。葵は途方に暮れた。こんな相談受けてどうするつもりだろう。ただ話を聞いて顧客の気持ちを楽にしてあげるつもりなのか……。不動産業界の事については良く分からない。
「そうですか。それは大変ですね。今夜は弊社の水原を付けます。午後八時にはお宅に向かわせますので。それまでに夕食を済ませておいてくださいね」
「はい」
「え?」
滝崎が言うのを聞いて舞香は頷き、葵は目を見開いた。確かに雇用契約書には雑用の中に相談・調査業務も入っているが。
「あの社長、私、これからあの方のお宅へ?」
葵は瀬戸舞香が帰った後、茶器を片付けながら質問する。出来れば行きたくない。彼の言った事は聞き間違いだと思いたい。
「ええ、あなたにも視えているでしょう? 瀬戸様に憑いているものが」
「え?」
「視えていますよね?」
社長に強い眼差して見据えられて、背中がぞくりとする。
「なぜ、それを」
震える声で答えた。中学で嫌な思いをして以来この能力については人に話したことがない。葵の力が本物だと知っていたのは同じ力を持っていた祖母だけだ。
「霊感をおもちでしょ、それがあなたを雇った理由ですから」
サラリという。なぜ、バレたのだろう? さっぱりわからない。
「どうして、私が霊感を持っているなんてわかるんですか?」
「君はあの雑踏で僕を見つけたからね」
「え?」
「普通の人に僕の姿は見えないはずなんだよ。しかも、ピンポイントで目が合ったでしょう」
と瀧崎は綺麗な笑みを見せる。しかし、その笑みに温かみはなく。
葵は顔色を失くし後退る。
「ま! まさか社長!」
「変な誤解をしないように、僕は生きてます」
「え、ほ、本当ですか?」
「だいたいここにいる社員で霊感があるのは君だけだ。僕が幽霊ならば、皆に僕が視えないでしょう。君はなんて間抜けなことを言わせるんだ」
瀧崎が呆れたように葵を見下ろす。
「そうですよね。よかったあ」
葵はほっと胸をなでおろす。
あれ、なんかおかしくない?
瀧崎の話が説明になっていないことに気が付いた。
早速茶を淹れて運び込むと二十代後半の女性がいた。
名を瀬戸舞香という。勝田によると、ここの不動産屋が紹介した物件に住んでいる客で商社で事務員をしているそうだ。
葵も同席するよういわれた。そう言えば、契約書に雑用には相談および、調査業務もふくむと書かれていた。早速クレーム処理だろうか。それならばこの高い給料も納得である。葵は少し緊張して席に着く。
しかし、その相談内容が住まいの事ではなく。
「なんだか、最近、体が重いんです。頭がずきずきするというか、それに金縛りがひどくて。夜中に誰かがのしかかってくるようなんです。」
普通ならば、心療内科を紹介されそうな相談内容だが、社長は真剣な表情で聞いている。葵は途方に暮れた。こんな相談受けてどうするつもりだろう。ただ話を聞いて顧客の気持ちを楽にしてあげるつもりなのか……。不動産業界の事については良く分からない。
「そうですか。それは大変ですね。今夜は弊社の水原を付けます。午後八時にはお宅に向かわせますので。それまでに夕食を済ませておいてくださいね」
「はい」
「え?」
滝崎が言うのを聞いて舞香は頷き、葵は目を見開いた。確かに雇用契約書には雑用の中に相談・調査業務も入っているが。
「あの社長、私、これからあの方のお宅へ?」
葵は瀬戸舞香が帰った後、茶器を片付けながら質問する。出来れば行きたくない。彼の言った事は聞き間違いだと思いたい。
「ええ、あなたにも視えているでしょう? 瀬戸様に憑いているものが」
「え?」
「視えていますよね?」
社長に強い眼差して見据えられて、背中がぞくりとする。
「なぜ、それを」
震える声で答えた。中学で嫌な思いをして以来この能力については人に話したことがない。葵の力が本物だと知っていたのは同じ力を持っていた祖母だけだ。
「霊感をおもちでしょ、それがあなたを雇った理由ですから」
サラリという。なぜ、バレたのだろう? さっぱりわからない。
「どうして、私が霊感を持っているなんてわかるんですか?」
「君はあの雑踏で僕を見つけたからね」
「え?」
「普通の人に僕の姿は見えないはずなんだよ。しかも、ピンポイントで目が合ったでしょう」
と瀧崎は綺麗な笑みを見せる。しかし、その笑みに温かみはなく。
葵は顔色を失くし後退る。
「ま! まさか社長!」
「変な誤解をしないように、僕は生きてます」
「え、ほ、本当ですか?」
「だいたいここにいる社員で霊感があるのは君だけだ。僕が幽霊ならば、皆に僕が視えないでしょう。君はなんて間抜けなことを言わせるんだ」
瀧崎が呆れたように葵を見下ろす。
「そうですよね。よかったあ」
葵はほっと胸をなでおろす。
あれ、なんかおかしくない?
瀧崎の話が説明になっていないことに気が付いた。
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