13 / 44
調査業務実践2
しおりを挟む
それから、舞香が熱いコーヒーを入れてくれた。
二人で小さなキッチンテーブルに向かい合って座る。彼女はここで食事をしていると言っていた。
「いただきます」
わたされたカップに口をつける。身体が温まりひと心地ついた。
それからポツリポリと舞香が身の上話を始めた。都内の商社に勤めていて、この六月に結婚して退社すると言う。そんな幸せな人が、なぜ生霊なんかに憑りつかれたのだろう
「彼は、竹内翔太さんと言って、大学の頃の友人なんです」
チェストやベッドのサイドテーブルにその彼氏との写真が立てかけてある。仲睦まじい様子で微笑ましい。
「優しそうな方ですね」
「はい、結構友達の期間がながかったんだけれど、ここ一年でパタパタと結婚が決まって」
とても幸せそうに語る。
「それはおめでとうございます」
「今でこそ順調ですが、彼はいま遠方にいて結婚が決まれば私は仕事をやめなければならないから、いろいろと悩んだ時期もあったですよ」
「そうだったんですか」
葵には経験はないが、やりがいのある仕事を持っているとこんな悩みも出るものなのかと思う。
「親友に相談したこともあったんですよ」
友達にも彼氏にも仕事にも恵まれ、舞香の人生は順風満帆だ。少し羨ましい。しかし、なぜそんな彼女が生霊に憑かれるはめになったのだろう。不思議だ。
「いいお友達をお持ちなんですね。羨ましいです」
素直な気持ちで言った。
「はい、でも最初は彼女が、彼とつきあっていたんです」
と言って舞香が微笑む。
「え?」
なんだか雲行きが怪しい。葵は少しどきどきして来た。舞香に張り付く影がピクリと反応したような気がする。もしかしてどろどろの三角関係?
「でも、美玖は、あ、友達の名前美玖って言いうんです。美玖はとても自立心が強くて行動力があって、会社を立ち上げたんです。それで彼とすれ違ってしまって別れたんです。その後、私が彼と付き合うようになったの。
彼が美玖にフラれて落ち込んでいるのを慰めているうちに、だんだんと親しくなって」
話が進むにつれ、舞香に憑いた黒い影が濃くなって来ているような気がして、彼女の話に集中できない。
(生霊ってやっぱり知り合いだよね?)
舞香は不安も手伝ってか、葵にぺらぺらとプライベートなことを話し続ける。それに彼女も途中で気付き。
「あ、ごめんなさい。会ったばかりの人に自分のことばかりぺらぺらとしゃべってしまって。葵さんのほうはどうなの?」
舞香が、いきなり痛いところをついてきた。
「ははは、私はもう、そう話は全然です。たいていふられるし」
笑ってごまかす。まだ、人に話せるほど心の傷が回復していない。
「え、そうなんですか? 水原さん、そんなに綺麗なのに」
「いえ、そんな全然です。私、重いみたいです、ははは」
葵がふるふると首をふり、笑う。顧客にこれほど気を使わせてどうする。
葵の元カレは同じ会社で、あちらは正社員、こちらは派遣社員の関係だった。最初、彼と付き合えることになったときは天にも昇るような浮かれっぷりで、今思うと恥ずかしくなる。ただ、騙されただけだった。
二人で小さなキッチンテーブルに向かい合って座る。彼女はここで食事をしていると言っていた。
「いただきます」
わたされたカップに口をつける。身体が温まりひと心地ついた。
それからポツリポリと舞香が身の上話を始めた。都内の商社に勤めていて、この六月に結婚して退社すると言う。そんな幸せな人が、なぜ生霊なんかに憑りつかれたのだろう
「彼は、竹内翔太さんと言って、大学の頃の友人なんです」
チェストやベッドのサイドテーブルにその彼氏との写真が立てかけてある。仲睦まじい様子で微笑ましい。
「優しそうな方ですね」
「はい、結構友達の期間がながかったんだけれど、ここ一年でパタパタと結婚が決まって」
とても幸せそうに語る。
「それはおめでとうございます」
「今でこそ順調ですが、彼はいま遠方にいて結婚が決まれば私は仕事をやめなければならないから、いろいろと悩んだ時期もあったですよ」
「そうだったんですか」
葵には経験はないが、やりがいのある仕事を持っているとこんな悩みも出るものなのかと思う。
「親友に相談したこともあったんですよ」
友達にも彼氏にも仕事にも恵まれ、舞香の人生は順風満帆だ。少し羨ましい。しかし、なぜそんな彼女が生霊に憑かれるはめになったのだろう。不思議だ。
「いいお友達をお持ちなんですね。羨ましいです」
素直な気持ちで言った。
「はい、でも最初は彼女が、彼とつきあっていたんです」
と言って舞香が微笑む。
「え?」
なんだか雲行きが怪しい。葵は少しどきどきして来た。舞香に張り付く影がピクリと反応したような気がする。もしかしてどろどろの三角関係?
「でも、美玖は、あ、友達の名前美玖って言いうんです。美玖はとても自立心が強くて行動力があって、会社を立ち上げたんです。それで彼とすれ違ってしまって別れたんです。その後、私が彼と付き合うようになったの。
彼が美玖にフラれて落ち込んでいるのを慰めているうちに、だんだんと親しくなって」
話が進むにつれ、舞香に憑いた黒い影が濃くなって来ているような気がして、彼女の話に集中できない。
(生霊ってやっぱり知り合いだよね?)
舞香は不安も手伝ってか、葵にぺらぺらとプライベートなことを話し続ける。それに彼女も途中で気付き。
「あ、ごめんなさい。会ったばかりの人に自分のことばかりぺらぺらとしゃべってしまって。葵さんのほうはどうなの?」
舞香が、いきなり痛いところをついてきた。
「ははは、私はもう、そう話は全然です。たいていふられるし」
笑ってごまかす。まだ、人に話せるほど心の傷が回復していない。
「え、そうなんですか? 水原さん、そんなに綺麗なのに」
「いえ、そんな全然です。私、重いみたいです、ははは」
葵がふるふると首をふり、笑う。顧客にこれほど気を使わせてどうする。
葵の元カレは同じ会社で、あちらは正社員、こちらは派遣社員の関係だった。最初、彼と付き合えることになったときは天にも昇るような浮かれっぷりで、今思うと恥ずかしくなる。ただ、騙されただけだった。
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』
宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?
行き遅れた私は、今日も幼なじみの皇帝を足蹴にする
九條葉月
キャラ文芸
「皇帝になったら、迎えに来る」幼なじみとのそんな約束を律儀に守っているうちに結婚適齢期を逃してしまった私。彼は無事皇帝になったみたいだけど、五年経っても迎えに来てくれる様子はない。今度会ったらぶん殴ろうと思う。皇帝陛下に会う機会なんてそうないだろうけど。嘆いていてもしょうがないので結婚はすっぱり諦めて、“神仙術士”として生きていくことに決めました。……だというのに。皇帝陛下。今さら私の前に現れて、一体何のご用ですか?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる