職も住処もなくした私が訳ありアパートの管理人にスカウトされました。何やら事情があるようです。

ピヨピヨ

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調査業務実践2

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 それから、舞香が熱いコーヒーを入れてくれた。
 二人で小さなキッチンテーブルに向かい合って座る。彼女はここで食事をしていると言っていた。

「いただきます」

 わたされたカップに口をつける。身体が温まりひと心地ついた。

 それからポツリポリと舞香が身の上話を始めた。都内の商社に勤めていて、この六月に結婚して退社すると言う。そんな幸せな人が、なぜ生霊なんかに憑りつかれたのだろう

「彼は、竹内翔太さんと言って、大学の頃の友人なんです」

 チェストやベッドのサイドテーブルにその彼氏との写真が立てかけてある。仲睦まじい様子で微笑ましい。

「優しそうな方ですね」
「はい、結構友達の期間がながかったんだけれど、ここ一年でパタパタと結婚が決まって」

 とても幸せそうに語る。

「それはおめでとうございます」
「今でこそ順調ですが、彼はいま遠方にいて結婚が決まれば私は仕事をやめなければならないから、いろいろと悩んだ時期もあったですよ」
「そうだったんですか」

 葵には経験はないが、やりがいのある仕事を持っているとこんな悩みも出るものなのかと思う。

「親友に相談したこともあったんですよ」

 友達にも彼氏にも仕事にも恵まれ、舞香の人生は順風満帆だ。少し羨ましい。しかし、なぜそんな彼女が生霊に憑かれるはめになったのだろう。不思議だ。

「いいお友達をお持ちなんですね。羨ましいです」

 素直な気持ちで言った。

「はい、でも最初は彼女が、彼とつきあっていたんです」

と言って舞香が微笑む。

「え?」

 なんだか雲行きが怪しい。葵は少しどきどきして来た。舞香に張り付く影がピクリと反応したような気がする。もしかしてどろどろの三角関係?

「でも、美玖は、あ、友達の名前美玖って言いうんです。美玖はとても自立心が強くて行動力があって、会社を立ち上げたんです。それで彼とすれ違ってしまって別れたんです。その後、私が彼と付き合うようになったの。
 彼が美玖にフラれて落ち込んでいるのを慰めているうちに、だんだんと親しくなって」
 
 話が進むにつれ、舞香に憑いた黒い影が濃くなって来ているような気がして、彼女の話に集中できない。

(生霊ってやっぱり知り合いだよね?)

 舞香は不安も手伝ってか、葵にぺらぺらとプライベートなことを話し続ける。それに彼女も途中で気付き。

「あ、ごめんなさい。会ったばかりの人に自分のことばかりぺらぺらとしゃべってしまって。葵さんのほうはどうなの?」

 舞香が、いきなり痛いところをついてきた。

「ははは、私はもう、そう話は全然です。たいていふられるし」

 笑ってごまかす。まだ、人に話せるほど心の傷が回復していない。 


「え、そうなんですか? 水原さん、そんなに綺麗なのに」
「いえ、そんな全然です。私、重いみたいです、ははは」

 葵がふるふると首をふり、笑う。顧客にこれほど気を使わせてどうする。

 葵の元カレは同じ会社で、あちらは正社員、こちらは派遣社員の関係だった。最初、彼と付き合えることになったときは天にも昇るような浮かれっぷりで、今思うと恥ずかしくなる。ただ、騙されただけだった。




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