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只今業務中1
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「また、一晩中私一人ですか? なぜ、社長がいると霊障がおきないのです?」
葵は食い気味に言う。こんなところに一人で置いて行かれるなどたまったものではない。前回の生霊のよりも嫌な予感がする。
「僕は祓う者、においで彼らには分かるらしい。だから、出ないんだ」
羨ましすぎると葵は思う。
「この部屋、いろいろと怨念が漂っていて、具合が悪くなりそうです」
もうすでに先ほどから寒気が止まらない。
「大丈夫。あなたが倒れるまでにはにはかたがつくでしょう。現象を確かめてから、そのものだけをお札で封じてください」
鬼畜だ。鬼畜がいる。
「その現象ってやっぱり人形が動いて蛇口を開けるってことですよね」
蛇口を開けるとはいってもレバー式だから押すだけだが……。どのみちあまりにも怖すぎて胃が痛くなってくる。
「何事も経験です。頑張ってください」
にっこりと美しい顔をほころばせ社長は去って行った。
口調は丁寧なのにやらせることがひどい。しかし、他の業務に不満はないし、住まわしてもらっている管理人室は本当に素晴らしい。地下の温泉も最高だ。アパートの住人たちも親切で、もうあそこから引っ越したくない。
やはりこの仕事を手放すなど考えられない。
葵はリビングで、来る途中コンビニで買ったサンドイッチとお茶で簡単な夕食を済ませると、用意してきた魔法瓶の熱いコーヒーを一口飲む。
暖房がついているのにも拘わらずやはり寒気がとまらない。霊障だ。社長が去ってから、部屋の温度がググっと下がったような気がする。しかし、今回は電気がまだついている。怖いので電気を消す気はないし、霊障が始まればまた勝手にちかちかするか消えるのだ。
葵の眠れない夜が始まった。
しかし、霊感持ちにとって劣悪な環境でも、時計の針が午前一時を回ることには瞼がおもくなってきた。我ながら大した神経だ。
うとうととし始めた頃、ガタリという音とサーっという水が流れる音が聞こえてきた。
「ひっ」と小さく声を上げる。お約束通りいつの間にか電気は消えていて、水音と何かがかさかさと移動する音だけがする。葵はスマホのライトをつけると最初にダイニングの水場にむかった。
きっちりとレバーは上げられているのでそれをおろす。
そして次に水音がする洗面台へどきどきしながら向かう。右手にはお札を握りしめていていた。これから見つけたものにお札を張り付けなければいけない。
全部にお札を貼り付ければ万時解決だと思うが、依頼人の川本いわくここにあるものは商品なので、そうされては困るそうだ。
そして覗き込んだ洗面台には何もいなくて、レバーだけがあげられていて、水が流れている。
後ろにある風呂場からカタカタと音がする。ドアが少しだけ開いていた。もう風呂場にいることは決定だ。
嫌だ。帰りたい。
葵は食い気味に言う。こんなところに一人で置いて行かれるなどたまったものではない。前回の生霊のよりも嫌な予感がする。
「僕は祓う者、においで彼らには分かるらしい。だから、出ないんだ」
羨ましすぎると葵は思う。
「この部屋、いろいろと怨念が漂っていて、具合が悪くなりそうです」
もうすでに先ほどから寒気が止まらない。
「大丈夫。あなたが倒れるまでにはにはかたがつくでしょう。現象を確かめてから、そのものだけをお札で封じてください」
鬼畜だ。鬼畜がいる。
「その現象ってやっぱり人形が動いて蛇口を開けるってことですよね」
蛇口を開けるとはいってもレバー式だから押すだけだが……。どのみちあまりにも怖すぎて胃が痛くなってくる。
「何事も経験です。頑張ってください」
にっこりと美しい顔をほころばせ社長は去って行った。
口調は丁寧なのにやらせることがひどい。しかし、他の業務に不満はないし、住まわしてもらっている管理人室は本当に素晴らしい。地下の温泉も最高だ。アパートの住人たちも親切で、もうあそこから引っ越したくない。
やはりこの仕事を手放すなど考えられない。
葵はリビングで、来る途中コンビニで買ったサンドイッチとお茶で簡単な夕食を済ませると、用意してきた魔法瓶の熱いコーヒーを一口飲む。
暖房がついているのにも拘わらずやはり寒気がとまらない。霊障だ。社長が去ってから、部屋の温度がググっと下がったような気がする。しかし、今回は電気がまだついている。怖いので電気を消す気はないし、霊障が始まればまた勝手にちかちかするか消えるのだ。
葵の眠れない夜が始まった。
しかし、霊感持ちにとって劣悪な環境でも、時計の針が午前一時を回ることには瞼がおもくなってきた。我ながら大した神経だ。
うとうととし始めた頃、ガタリという音とサーっという水が流れる音が聞こえてきた。
「ひっ」と小さく声を上げる。お約束通りいつの間にか電気は消えていて、水音と何かがかさかさと移動する音だけがする。葵はスマホのライトをつけると最初にダイニングの水場にむかった。
きっちりとレバーは上げられているのでそれをおろす。
そして次に水音がする洗面台へどきどきしながら向かう。右手にはお札を握りしめていていた。これから見つけたものにお札を張り付けなければいけない。
全部にお札を貼り付ければ万時解決だと思うが、依頼人の川本いわくここにあるものは商品なので、そうされては困るそうだ。
そして覗き込んだ洗面台には何もいなくて、レバーだけがあげられていて、水が流れている。
後ろにある風呂場からカタカタと音がする。ドアが少しだけ開いていた。もう風呂場にいることは決定だ。
嫌だ。帰りたい。
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