職も住処もなくした私が訳ありアパートの管理人にスカウトされました。何やら事情があるようです。

ピヨピヨ

文字の大きさ
35 / 44

神社で

しおりを挟む
 霊障と関わる仕事はこれで、二度目だが恐らく月一ペースであるはず。

 こんな生活をしているといつか祟られるのではないかという気持ちが拭えることもなく、葵は仕事を終えた後、小久保神社に向かう。

 ここに来ると敷き詰められた玉砂利をふむたけで、穢れが落ちて行くような不思議な感覚がある。そういえば。祖母も氏神様を大事にするように言ってた。

 いつものように手水舎で清め、鈴を鳴らし賽銭を投げ入れた。
 今日は特に念入りに拝む。

 しかし、いつも社務所が開いていないのでお守りが買えないのだが残念だ。お参りが終わり石段をおり朱色の鳥居を過ぎる時、やはり前回と同じように何かの気配を感じて振り返る。しかそこには何もなく、ただ石燈篭の火影が揺れていた。不思議な感覚はあるが、霊障のように怖気が走るような感覚はない。

「水原さん」

 出し抜けに声をかけられ、ビクッとする。振り返るとダークスーツ姿の瀧崎だ。

「社長?」

 今帰りなのだろう。

「君は意外に信心深いんだね」

「いえ、そいうわけではないんですが、こういう仕事をしているといつか祟られるんじゃないかって思っちゃうんです」
 いつわりのない本音だ。

「そう、ならばこれを持っているといい」
 そう言って、結び紐を渡される。

「これは、ここの神社のお守りだ。君の身代わりになって守ってくれる。その紐がほどけることがあれば、僕のところに持ってくるといい」

「え? くれるんですか! ありがとうございます」

 葵は慌てて、頭を下げる。裏家業の時は鬼の瀧崎が優しい。お守りならば喜んでもらう。

「それで君はここの神社が何を祀っているのかしっている?」

「何にって、神様?」

神様にいろいろあるのは知っているが、由緒書きなど読んだことはなかった。
きょとんとする葵を見て、瀧崎がふふと笑う。


「この神社は水神を祀っている。なにに祈っているのかきちんと知っておいた方がいいですよ。それではお疲れ様」
 そういって瀧崎は神社にはいっていった。

 彼もここでお参りをしてから帰るのだろうか。
 葵はビルのはざまにある神社の石段の上に消えて行く、彼の背中を見送った。

 そういえば、社長はこの近くに住んでいるだろうか? あのアパートのオーナーではあるが住んではいない。
 つくづく謎の多い人だ。葵はそこで詮索を辞める。疲れてどうでもよくなった。


 「今日は熱燗に焼き鳥、おでんの気分だな」

 独り言ち、寒いビル風が吹く繁華街のなかをぬけ駅を目指した。
 帰ったら、まずは温泉だ。
 そして、次の給料日にもっと厚手のコートを買おう。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

行き遅れた私は、今日も幼なじみの皇帝を足蹴にする

九條葉月
キャラ文芸
「皇帝になったら、迎えに来る」幼なじみとのそんな約束を律儀に守っているうちに結婚適齢期を逃してしまった私。彼は無事皇帝になったみたいだけど、五年経っても迎えに来てくれる様子はない。今度会ったらぶん殴ろうと思う。皇帝陛下に会う機会なんてそうないだろうけど。嘆いていてもしょうがないので結婚はすっぱり諦めて、“神仙術士”として生きていくことに決めました。……だというのに。皇帝陛下。今さら私の前に現れて、一体何のご用ですか?

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...