職も住処もなくした私が訳ありアパートの管理人にスカウトされました。何やら事情があるようです。

ピヨピヨ

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業務終了

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 会社に戻ると6時を過ぎていた。珍しくもう勝田は帰ってしまい。従業員は全員出払っていた。

「水原さん、お帰りなさい。報告書を仕上げたらかえっていいですよ」
 やはり、鬼だ。葵はぐったりとした。直帰くらいさせてくれてもいいのに。

「社長、西谷様から、絵を頂いてしまったんですが」
「それはよかったですね。大切にするといい。そのうち値が上がりますよ」
と瀧崎がのんびりした口調で言う。

「そうなるといいですね」

 西谷は良い人だったので、売れっ子の画家になれればいいなと葵も思う。

「それで、社長あのビスクドール、封印といちゃってよかったんですか? また動きだすんじゃないですか?」
「元からその状態でしたら、何も封印してお返しすることはないでしょう」

 瀧崎は淡々としている。

「でも、あの、しゃべったんですけど。あの人形」
「なんと言っていましたか?」
「『ありがとう』って言われました」
「感謝されてよかったじゃないですか」

 どうも常人と感覚が違う。人形がしゃべったと言って馬鹿にされないのはよいのだが、あのままでいいのだろうかと心配になる。何といってもベアトリスは噛みつくし……。

「あのそういう問題ではない気がします。それに西谷様とベアトリスまるで恋人同士みたいなんですよ。仲が良くって」

 まるで寄り添うにくっついていた。

「ああ、ベアトリスという名前なんですね。西谷様のところに戻りたくて、あんな悪戯をするくらいですから。いいんじゃないですか」
「え? たたりじゃなかったんですか」

 そういうと瀧崎がにっこりと笑う。

「異類婚姻譚、ご存じでしょう?」
 
 いきなり話題が移り、葵は目を瞬いた。

「鶴と人間が結婚したりする話のことですか?」

 瀧崎が頷く。

「あの二人は愛し合っているんですよ」
「ベアトリスは人形ですよ? 動物ですらないいですよ? 何でそんなことが分かるんです」

 ありえない。葵は目を瞬いた。

「多分、ダカシーではなく、たかしと言っていたんでしょう。西谷様のお名前です。彼が恋しかったんでしょうね。
 それから、動いている彼女にふれたときどう感じました」

「……まるで生きているようでした。生温かくて」

 ベアトリスに触れたときの生々しい感触がよみがえり、ぞくりとする。

「あのビスクドールには魂が宿っている。だから愛する人から離してはいけないんですよ。まあ、もともと人型のものには魂が宿りやすいと言いますし」
「なんか怖くて……。人形とか無理です」
「ははは。まあ、いいじゃないですか。愛し合っている二人が再び一緒になれたんですから」

といって社長は気楽に笑う。
そういうふうに言われると今回の仕事はビジュアル的には怖かったが、いい事をした気がしてくる。

 前回も何だかんだと人助けになった。そして、多分こんなふうに感じてしまうのは、普通ではないのだろう。
だんたん仕事に馴染みつつある自分が怖い。

「水原さん、報告書、早く上げてね」
「はい、ただいま!」

 社長にせかされ、葵は慌てて仕事にとりかかった。

 
 明日は休みだ。帰ったら、ビールに温泉だ。
 
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