41 / 44
逃げ込んだ先で
しおりを挟む
振り返ると慎吾だった。
「はなしなさいよ!」
「葵、頼むよ。俺と別れないでくれ。なんでかお前を別れてから悪いことばっかり続くんだ。俺、もうどうしていいのかわからなくって。仕事も失敗ばかりで、俺ほんとやばいんだ。たすけてくれよ」
彼が泣きそうになりながら葵に縋りついてくる。こんな時でも慎吾は顔だけはいい。この顔に恋をしたこともあった。だが、もうそれもとっくに終わっている。未練など欠片も残っていない。
「知るか! ぼけっ!」
一声叫ぶと振りかぶったカバンで慎吾を殴りつけた。
「あんたなんか大っ嫌い!」
しりもちをつく彼に罵声を浴びせ。葵は構わず一目散に石段を駆け上る。
折角運が向いてきたのに、ここで逃げ切らなければ身の破滅だ。
やっと境内についてはあはあと息をつく。
慎吾が石段を駆け上って来る気配はない。諦めたの? にわかには信じがたい。きっと慎吾が諦めても半ぐれが葵の顔を覚えているから追ってくるだろう。
ふと目を上げると境内の石燈篭に明かりがともっていた。さっきまでは暗かったのに。それにもう遅い時間なのに、参拝客がパラパラといる。ここの神社で参拝客を見るのは初めてた。そして社務所にも明かりがともっていた。後ろを振り返るが誰も追ってくる気配はない。
葵はとりあえず、お守りを買い、お祓いをしてもらうと思った。しばらくここで時間を潰そうと決めた。。
早速社務所を覗き込むと、そこには白い着物に色袴姿の中年男性が座っていた。しかし、それは見知った顔で……。
「あれ? 重田さん?」
アパートの住人重さんこと重田だ。
「葵ちゃん、じゃない。どうしたの? こんなところにきて?」
重田が目を見開いて驚いたような顔をする。
「重田さん、ここではたらいていたんですね。私、時々仕事の帰りにこの神社によるんです。でも社務所が開いていたのは初めて」
見知った顔に会ってほっとする。そうだ、さっきの連中が追いかけてくるようならここから警察に通報すればいい。
幸田に引きずれてあちこちに擦り傷が出来てしまったし、訴えてやろう。思いがけず重田に会ったせいか気が大きくなる。
「というか葵ちゃん、よくここに入れたね。人の身で」
「え?」
聞き返すと重田が「いやなんでもないよ」と苦笑する。
「氏子の希望でね。ここは夜から始まるんだ」
「なんだ、そうだったんですか。いつも社務所がしまっているから、お守り買えなくて。夜遅くにくれば、買えるんですね」
そういえば今は何時だろう? この間来た時もこの時間ではなかったか?いや、今日はだいぶ飲み屋でねばっていたから……。
「まあ、運が良ければ、道が開くかも」
「え? 道が開く?」
葵が目を瞬くと「いやなんでもない」とまた重田が言葉を濁す。
「それで、何のお守りが欲しいんだい」
「縁切りのお守りってあります? なければ厄除けか開運で」
「縁切り? もしかしてこの間話していた。しつこい元カレかい?」
重田が心配そうに尋ねてくる。
「はい、ああ、でももちろんアパートの住人の方々には迷惑かけませんから。住所を知られないように必ず撒いてから帰ります」
葵は慌てた。管理人が住人に迷惑をかけるわけにはいかない。
「はなしなさいよ!」
「葵、頼むよ。俺と別れないでくれ。なんでかお前を別れてから悪いことばっかり続くんだ。俺、もうどうしていいのかわからなくって。仕事も失敗ばかりで、俺ほんとやばいんだ。たすけてくれよ」
彼が泣きそうになりながら葵に縋りついてくる。こんな時でも慎吾は顔だけはいい。この顔に恋をしたこともあった。だが、もうそれもとっくに終わっている。未練など欠片も残っていない。
「知るか! ぼけっ!」
一声叫ぶと振りかぶったカバンで慎吾を殴りつけた。
「あんたなんか大っ嫌い!」
しりもちをつく彼に罵声を浴びせ。葵は構わず一目散に石段を駆け上る。
折角運が向いてきたのに、ここで逃げ切らなければ身の破滅だ。
やっと境内についてはあはあと息をつく。
慎吾が石段を駆け上って来る気配はない。諦めたの? にわかには信じがたい。きっと慎吾が諦めても半ぐれが葵の顔を覚えているから追ってくるだろう。
ふと目を上げると境内の石燈篭に明かりがともっていた。さっきまでは暗かったのに。それにもう遅い時間なのに、参拝客がパラパラといる。ここの神社で参拝客を見るのは初めてた。そして社務所にも明かりがともっていた。後ろを振り返るが誰も追ってくる気配はない。
葵はとりあえず、お守りを買い、お祓いをしてもらうと思った。しばらくここで時間を潰そうと決めた。。
早速社務所を覗き込むと、そこには白い着物に色袴姿の中年男性が座っていた。しかし、それは見知った顔で……。
「あれ? 重田さん?」
アパートの住人重さんこと重田だ。
「葵ちゃん、じゃない。どうしたの? こんなところにきて?」
重田が目を見開いて驚いたような顔をする。
「重田さん、ここではたらいていたんですね。私、時々仕事の帰りにこの神社によるんです。でも社務所が開いていたのは初めて」
見知った顔に会ってほっとする。そうだ、さっきの連中が追いかけてくるようならここから警察に通報すればいい。
幸田に引きずれてあちこちに擦り傷が出来てしまったし、訴えてやろう。思いがけず重田に会ったせいか気が大きくなる。
「というか葵ちゃん、よくここに入れたね。人の身で」
「え?」
聞き返すと重田が「いやなんでもないよ」と苦笑する。
「氏子の希望でね。ここは夜から始まるんだ」
「なんだ、そうだったんですか。いつも社務所がしまっているから、お守り買えなくて。夜遅くにくれば、買えるんですね」
そういえば今は何時だろう? この間来た時もこの時間ではなかったか?いや、今日はだいぶ飲み屋でねばっていたから……。
「まあ、運が良ければ、道が開くかも」
「え? 道が開く?」
葵が目を瞬くと「いやなんでもない」とまた重田が言葉を濁す。
「それで、何のお守りが欲しいんだい」
「縁切りのお守りってあります? なければ厄除けか開運で」
「縁切り? もしかしてこの間話していた。しつこい元カレかい?」
重田が心配そうに尋ねてくる。
「はい、ああ、でももちろんアパートの住人の方々には迷惑かけませんから。住所を知られないように必ず撒いてから帰ります」
葵は慌てた。管理人が住人に迷惑をかけるわけにはいかない。
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』
宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?
行き遅れた私は、今日も幼なじみの皇帝を足蹴にする
九條葉月
キャラ文芸
「皇帝になったら、迎えに来る」幼なじみとのそんな約束を律儀に守っているうちに結婚適齢期を逃してしまった私。彼は無事皇帝になったみたいだけど、五年経っても迎えに来てくれる様子はない。今度会ったらぶん殴ろうと思う。皇帝陛下に会う機会なんてそうないだろうけど。嘆いていてもしょうがないので結婚はすっぱり諦めて、“神仙術士”として生きていくことに決めました。……だというのに。皇帝陛下。今さら私の前に現れて、一体何のご用ですか?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる