呪いで猫にされた騎士は屈強な傭兵に拾われる

結衣可

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最終話 恋人として

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夜、暖炉の灯りだけが揺れる部屋で、アッシュはソファに座り、毛布を肩にかけて本を読んでいた。
解呪されてから、人間のままロウガンに甘えることが増えた。

(別に……甘えてるわけじゃない……ただ、ロウガンの隣だと落ち着くだけで……)

隣では、ロウガンが腕を組んで座っていた。どう見ても本を読んでいるようでいて――視線はずっとアッシュのほうへ。

(……なんだよ……そんな見るな……)

視線に気づいたアッシュは、本を持つ手を落ち着かせようとしたが、逆に震えた。

「アッシュ」

「な、なんだよ……」

「こっち来い」

「え、今?読んでるんだが……」

「いいから」

ぐい、と腕を掴まれ、アッシュはロウガンの膝の上へ落とされた。

「なっ!?!?お、おい、なんで……!」

「暴れんな。落ちるぞ」

「落ちたら、あんたのせいだ!!」

暴れても、ロウガンの腕の中から逃げられない。
恋人になってから、ロウガンは遠慮がなくなった。
そして、今夜は妙に――目つきが甘く、熱い。

(なんだ……この……雰囲気……)

「アッシュ」

「……な、なんだよ……」

ロウガンはアッシュの首元へ顔を寄せて――そっと、静かに噛んだ。

「……っっ!?!?」

アッシュの声が裏返る。

「な、なっ……! お、お前……っ……!!どこ噛んで……っ!!」

「いや、ずっと、こうして、お前に色々したいと思っていた」

「い、色々って!?」

ロウガンはアッシュが暴れるのも構わず、
首筋に唇を寄せ、少し歯を立て、また軽く噛んだ。

「ひゃっ……!」

アッシュの体がぴくっと跳ねる。

「……なんでそんな……猫みたいな反応すんだよ」

「猫だったんだから仕方ないだろ!!」

「そういうとこも可愛いな」

「~~~~っ!!」

アッシュは完全に言葉を失い、耳まで真っ赤になって膝の上で固まった。
ロウガンはその横顔を見て、満足げに微笑む。

「なぁ、アッシュ」

「……っ、な、なに……」

「我慢してたんだよ」

「……は?」

「猫のとき……お前の首とか耳の下を撫でると、喉鳴らしてただろ」

「~~~~~っ!?!?」

「人間に戻ったらできねぇと思ってた。でも……まあ……」

ロウガンはアッシュの髪を指ですくった。

「恋人になったんだし……触ってもいいだろ」

「そ?!……そんなこと!よ、よくない!!」

「気持ちよかったろ?」

「き、気持ちよくない!!」

「へぇ、そんな顔して?」

「……っ、そんな顔って……!!俺には、よくわからない」

アッシュはしどろもどろになりながら、ロウガンの胸を軽く叩く。
ロウガンはアッシュの動揺を感じ取り、アッシュの額にそっと唇を落とす。

「……嫌ならやめる」

(嫌なわけ……ない。でも、恥ずかしい)

アッシュは小さな声で呟いた。

「……や……めなくていい……」

ロウガンの瞳が揺れる。
優しさと、喜びと、少しだけ獣の色。

「……アッシュ」

低く、甘い声。
その声にアッシュが顔を上げると――ロウガンは首筋へもう一度唇を寄せた。
今度は先ほどより長く、ゆっくり、甘く。
そして――ほんの少しだけ、歯を立てる。

「っ……ぁ……!」

アッシュの体から力が抜けた。
ロウガンは、抱く腕に力を込めながら囁いた。

「……可愛すぎるんだよ、お前」

「わ~~~~っ……!!ばか……ロウガンの……ばか……!!」

真っ赤になってロウガンの胸元をぎゅっと掴むアッシュは、猫よりも愛しくて、可愛かった。
ロウガンはその頭を撫でながら、もう一度そっと噛んだ。

「……っ……ほんと……やめっ……」

「やめねぇ」

「なんで……」

「お前が、気持ちよさそうだから」

ロウガンの手が背中を撫で、鎖骨に歯を立てる。

「んっ……ロウガン……やだ……」

「何が嫌なんだ?」

「……じ、自分だけ、は……やだ」

「は?」

「ロウガンも……一緒に」

「お前、それはわかって言ってるのか?」

「……わ、わかってる」

「抱いていいんだな?」

はっきりと言葉にされて、カッと身体が熱くなる。
アッシュは俯いたまま、頷いた。

***

朝の光が、薄いカーテンを透かして寝室に差し込んでいた。

ロウガンはゆっくり目を覚まし――くすっと笑った。
腕の中に、アッシュがぴったり収まっている。
夜のあいだずっと抱きしめていた腕が、少ししびれている。

(……こんなにくっついて寝てたのか)

アッシュの寝息は静かで、胸元に額を寄せて眠っているその姿は――どう見ても“猫”だった。
ロウガンは喉の奥で小さく笑う。

「お前……猫癖抜けてねぇじゃねぇか」

そっと髪を撫でると、アッシュはむにゃっと眉を寄せて小さく動いた。

「……ん……」

寝ぼけた声が、あまりにも柔らかい。

(……可愛すぎるだろ)

ロウガンが頬に触れると、アッシュはさらに胸元にすり寄ってきて――

「……ロウガン……」

「起きてんのか?」

「……いないと……嫌だ……」

完全に寝言だった。

ロウガンの心臓が跳ねる。

「……おい、アッシュ。寝てても可愛いのは反則だろ」

そっと身体を起こそうとすると、アッシュがぎゅう、とロウガンの服を掴んだ。

「やだ……離れるな……」

「……っ」

(ダメだ。朝からこういうのは……マジで無理だ)

アッシュの寝顔は、昨夜より幼く見える。
ロウガンは観念し、もう一度横になってアッシュを抱きしめ直した。

「わーったよ。離れねぇから、寝てろ」

すると――アッシュがゆっくり目を開けた。

「……ん……?あ……朝……?」

「ああ」

「……なんで、こんな近く……?」

「お前が離さなかったからだよ」

アッシュの顔がじわじわ赤くなる。

「お、俺……そんな……子どもみたいな……!」

「子どもじゃない。恋人だろ?」

「~~~~っ!!」

アッシュは胸元に顔を埋めて誤魔化す。

「もう……やだ……昨夜の続きで頭がおかしい……」

「そんな事を言われると、続き、してやりたくなるな?」

「し、しない!!朝からそんな……!」

「朝だって別にいいだろ?」

「!?」

ロウガンは笑いながら、アッシュの後頭部に手を添えて額にキスをした。

「おはよう、アッシュ」

その声が甘すぎて、アッシュはまた真っ赤になる。

「……おはよ……バカ……」

「はいはい」

ロウガンが髪を撫でると、アッシュは完全にとろけた顔になって――

(……っ、またこれ……猫だった頃の癖だ……でも……気持ちいい……)

そのままロウガンの胸に身体を預けた。

「……ロウガン……」

「ん?」

「今日……ずっと……そばにいていい……?」

「もうここに住んでんだろ。どこに行く気だよ」

「……ふ、そっか……」

アッシュは嬉しそうに目を細め、ロウガンの胸元をぎゅっと掴んだ。

(ああ……この人のそばが、一番安心する……)

ロウガンはアッシュの頬にキスを落としながら呟いた。

「……今日はゆっくりしてろ。朝飯は俺が作る」

「……一緒に作る……離れたくない……」

「……っ」

「……ダメ……?」

「……ダメなわけ、あるかよ」

ロウガンはアッシュの手を取った。

「好きにしろ。お前の望みは全部叶えてやる」

アッシュの胸がじんと熱くなり――彼は照れながら、そっとロウガンの唇に触れた。

「じゃあ……離れないで……ずっとだよ……」

ロウガンは軽く笑って、アッシュの首元にまた甘噛みした。

「離れねぇよ」

「ひゃっ……!ま、また、噛むなって!!」

「お前が可愛いのが悪い」

「う~~……でも……ちょっとだけ……キスしたい」

「素直だな」

「もう!!早くっ!」

その声が甘くて、朝の光に溶けていった。
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