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第八話
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俺は早速、教会前の花壇で水やりをしているシスターに話しかける。
「すいません、修道院の噂についてお聞きしても大丈夫ですか?」
シスターは少し驚いた顔をしたあと、にっこり微笑む。
「半年前ぐらいからある噂ですか? いいですよ」
(お、まだ新入生か……。俺のこと“聖桜の悪魔”だと気づいてないのか。ラッキーだな)
心の中でそっと呟く。
話はこう始まったらしい――
――女の子二人が修道院の戸締まりを確認していたときのこと。
部屋の中から、聞いたこともない“呪文のような声”が聞こえてきたという。
恐る恐るドアを開けると、仮面をつけた人影が……。
それ以降、この話は都市伝説となった。
最初は誰も信じようとしなかったけれど、次第に
「夜に声がした」
「人影を見た」
という目撃談が増え、誰もこの修道院を使わなくなったのだとか。
俺は思わず、真剣な顔のシスターを見上げる。
(……なるほど、これはガチかもしれない)
「……ありがとう。教えてくれて」
魔宮、ここで少しだけ敬意を込めて礼を言った。仮面の人影か…と手を頭につけ考えながら歩く
道沿いを歩いていると――
見覚えのある丸っこい人影が座っていた。
「……あ、神父さんじゃん」
思わず声をかけると、神父はぷにぷにした肉厚の体をゆらしてこちらを向いた。
「ああ、魔宮くん、こないだの神崎さん件、ありがとね」とぽそり。
神父さんにちょうど話したいことがあったので、俺は隣に座る。
(……狭っ! 二人用ベンチなのに隣に座るとぷよぷよ感がヤバいんだけど)
俺は神父の隣に座り、ぷよぷよ感に圧倒されつつ切り出す。
「神父さん、ちょっと頼みたいことがあるんだけど……修道院の構造とか、右の通路とか、何か情報ないですか?」
神父はふにゃっと笑って、杖で地面を軽くトントン。
「構造かのう……まあ、昔からこの修道院は迷路みたいになっとるからのう。右の通路は夜になると妙に音が響くと言われとるな」
(お、ざっくりだけど十分情報だ……)
「でも、夜に入るのは危ないぞ。魔宮くん、お前が“聖桜の悪魔”だから心配じゃ」
「そ、それ褒め言葉……じゃなくて、俺は安全に行動するっすよ」
神父はにやりと笑う。
「ふむ……なら、何かあったらすぐ知らせるんじゃぞ。修道院の秘密は、案外近くに隠れておるかもしれんからな」
「ほほほ……」と神父は軽く笑い、立ち上がる。
「さて、そろそろ教会に戻ろうかのう」
俺も立ち上がったその時――
入学式のことを思い出した。
(あっ……そうだ!)
「神父さん!」思わず声をかける。
「入学式のときに、外で俺を看病してくれた女の人、覚えてますか?」
神父は少し振り返り、目を細める。
「うむ……あれは誰だったかのう。魔宮くんとは同い年なのは覚えておるが、一年も経つと皆、顔が大人っぽく変わるからのう」
(……お、覚えてないのかよ!)
心の中で突っ込む俺。
しかし神父はにこりと笑い、肩をすくめて言った。
「でも、安心しろとびきりかわい子だったぞ。ふふふ」
神父はそのまま教会に歩いていった。
俺は後ろから、ぷよぷよ揺れる背中を見つつ、心の中でつぶやいた。
(……いやいや、情報はそれだけかよ! でもまあ、とびきり可愛いってのは覚えててくれたんだな……よし、覚えてるってことにしておこう)ある程度、聞き込み調査を終えて修道院に戻った。
右側の通路を見ると、不気味さが倍増していて――思わず足がすくむ。急いで左側の通路へ向かう。
部室のドアの前に立つと――騒がしい声が聞こえる。
「おいおい、ちゃんと仕事してるのか?」
俺は思わずドアを開けた。
すると、綾瀬がミニ聖母マリア像に両手を握り、真剣な顔で祈っていた。
「暴走した魔宮辰巳を、人間の姿に戻してください!
神よ、どうかお願いします……!」
その隣で神崎は、ゲラゲラ笑いながら机に突っ伏している。
「……お前ら、完全にネタにしてるだろ」
俺は思わず突っ込みを入れたくなるが、綾瀬の天然さと神崎の悪ノリが同時に目に入って、どうしていいか分からなかった。
どうやら、この短時間で二人は仲が深まったようだ。
俺は聞き込み調査の内容を二人に伝え、集合日を話した。
「調査は明日決行する。夜、修道院前に集合だ」
俺が言うと、神崎は「はーい」と軽く返事。
綾瀬はやる気満々の目で「はいっ!」と言った。
……くそ、やっぱり可愛いな、この子
その日、聖心部の活動は平和に終わった。
「すいません、修道院の噂についてお聞きしても大丈夫ですか?」
シスターは少し驚いた顔をしたあと、にっこり微笑む。
「半年前ぐらいからある噂ですか? いいですよ」
(お、まだ新入生か……。俺のこと“聖桜の悪魔”だと気づいてないのか。ラッキーだな)
心の中でそっと呟く。
話はこう始まったらしい――
――女の子二人が修道院の戸締まりを確認していたときのこと。
部屋の中から、聞いたこともない“呪文のような声”が聞こえてきたという。
恐る恐るドアを開けると、仮面をつけた人影が……。
それ以降、この話は都市伝説となった。
最初は誰も信じようとしなかったけれど、次第に
「夜に声がした」
「人影を見た」
という目撃談が増え、誰もこの修道院を使わなくなったのだとか。
俺は思わず、真剣な顔のシスターを見上げる。
(……なるほど、これはガチかもしれない)
「……ありがとう。教えてくれて」
魔宮、ここで少しだけ敬意を込めて礼を言った。仮面の人影か…と手を頭につけ考えながら歩く
道沿いを歩いていると――
見覚えのある丸っこい人影が座っていた。
「……あ、神父さんじゃん」
思わず声をかけると、神父はぷにぷにした肉厚の体をゆらしてこちらを向いた。
「ああ、魔宮くん、こないだの神崎さん件、ありがとね」とぽそり。
神父さんにちょうど話したいことがあったので、俺は隣に座る。
(……狭っ! 二人用ベンチなのに隣に座るとぷよぷよ感がヤバいんだけど)
俺は神父の隣に座り、ぷよぷよ感に圧倒されつつ切り出す。
「神父さん、ちょっと頼みたいことがあるんだけど……修道院の構造とか、右の通路とか、何か情報ないですか?」
神父はふにゃっと笑って、杖で地面を軽くトントン。
「構造かのう……まあ、昔からこの修道院は迷路みたいになっとるからのう。右の通路は夜になると妙に音が響くと言われとるな」
(お、ざっくりだけど十分情報だ……)
「でも、夜に入るのは危ないぞ。魔宮くん、お前が“聖桜の悪魔”だから心配じゃ」
「そ、それ褒め言葉……じゃなくて、俺は安全に行動するっすよ」
神父はにやりと笑う。
「ふむ……なら、何かあったらすぐ知らせるんじゃぞ。修道院の秘密は、案外近くに隠れておるかもしれんからな」
「ほほほ……」と神父は軽く笑い、立ち上がる。
「さて、そろそろ教会に戻ろうかのう」
俺も立ち上がったその時――
入学式のことを思い出した。
(あっ……そうだ!)
「神父さん!」思わず声をかける。
「入学式のときに、外で俺を看病してくれた女の人、覚えてますか?」
神父は少し振り返り、目を細める。
「うむ……あれは誰だったかのう。魔宮くんとは同い年なのは覚えておるが、一年も経つと皆、顔が大人っぽく変わるからのう」
(……お、覚えてないのかよ!)
心の中で突っ込む俺。
しかし神父はにこりと笑い、肩をすくめて言った。
「でも、安心しろとびきりかわい子だったぞ。ふふふ」
神父はそのまま教会に歩いていった。
俺は後ろから、ぷよぷよ揺れる背中を見つつ、心の中でつぶやいた。
(……いやいや、情報はそれだけかよ! でもまあ、とびきり可愛いってのは覚えててくれたんだな……よし、覚えてるってことにしておこう)ある程度、聞き込み調査を終えて修道院に戻った。
右側の通路を見ると、不気味さが倍増していて――思わず足がすくむ。急いで左側の通路へ向かう。
部室のドアの前に立つと――騒がしい声が聞こえる。
「おいおい、ちゃんと仕事してるのか?」
俺は思わずドアを開けた。
すると、綾瀬がミニ聖母マリア像に両手を握り、真剣な顔で祈っていた。
「暴走した魔宮辰巳を、人間の姿に戻してください!
神よ、どうかお願いします……!」
その隣で神崎は、ゲラゲラ笑いながら机に突っ伏している。
「……お前ら、完全にネタにしてるだろ」
俺は思わず突っ込みを入れたくなるが、綾瀬の天然さと神崎の悪ノリが同時に目に入って、どうしていいか分からなかった。
どうやら、この短時間で二人は仲が深まったようだ。
俺は聞き込み調査の内容を二人に伝え、集合日を話した。
「調査は明日決行する。夜、修道院前に集合だ」
俺が言うと、神崎は「はーい」と軽く返事。
綾瀬はやる気満々の目で「はいっ!」と言った。
……くそ、やっぱり可愛いな、この子
その日、聖心部の活動は平和に終わった。
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