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第五話:余韻に溶ける、二つの体温
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熱の奔流が過ぎ去った後、部屋には甘く気怠い静寂だけが残された。
俺たちの汗と、愛液の匂いが混じり合った、濃密な空気。
俺は、白銀さんの熱い体内に自身の存在を残したまま、ぐったりとその上に覆いかぶさっていた。
聞こえるのは、お互いの荒い呼吸と、激しく脈打つ心臓の音だけ。
完璧な生徒会長の、聖域だったはずの場所。その内部が、俺の熱をまだ名残惜しそうに、きゅう、と締め付けている。
「……はぁ……はぁ……」
先に正気を取り戻したのは、俺の方だった。
腕の中で、白銀さんはぐったりと目を閉じ、浅い呼吸を繰り返している。
涙の跡が残る頬、汗で額に張り付いた黒髪、そして、快感の余韻に微かに痙攣する白い肌。
その全てが、俺が彼女の“初めて”を奪ったのだという事実を、残酷なまでに突きつけていた。
(……俺は、なんてことを……)
罪悪感が、遅れてやってきた。
だが、それ以上に、この腕の中にあるか弱くて愛おしい存在を、どうしようもなく守りたいという感情が勝っていた。
俺はゆっくりと身を起こし、彼女の中からそっと自身を引き抜いた。
ぬ、と生々しい音がして、俺たちの繋がっていた証がシーツの上に点々と染みを作る。
彼女の瞳が、うっすらと開かれた。
その焦点の合わない、とろんとした瞳が俺を捉える。
「……ありすがわ、くん……?」
「……ああ」
「……どこか、いっちゃうの……?」
消え入りそうな声。
まるで、捨てられるのを怖がる子猫のような眼差しに、胸が締め付けられる。
「どこにも行かないよ」
俺はそう言って、彼女の額にそっとキスを落とした。
汗で濡れた髪を、優しく指で梳いてやる。
「……ここにいる」
その言葉に、彼女の瞳から、またぽろり、と涙がこぼれ落ちた。
でも、それはさっきまでの痛みや快感の涙とは違う。
安堵と、そして、今までずっと欲しかった何かを手に入れたことへの、歓喜の涙のように見えた。
「……あったかい……」
彼女はそう呟くと、俺の胸にすり寄ってきた。
熱に浮かされているせいか、それとも、今までずっと張り詰めていた糸が切れたせいか、彼女はひたすらに甘えてくる。
俺は、そんな彼女を抱きしめながら、ベッドサイドにあったティッシュで、汚れてしまった彼女の太ももをそっと拭ってやった。
その行為に、彼女の身体がびくりと震える。
「……ごめ、なさ……きたなく、しちゃって……」
「馬鹿。汚いなんて、思うわけないだろ」
俺は彼女の身体を清め、乱れたシーツを直し、自分も下着とズボンだけを身につけた。
そして、彼女の隣にそっと横になる。
「……有栖川くん」
「ん?」
「……私、ずっと怖かった」
「……」
「“完璧な白銀夜瑠”でいなきゃって。少しでも気を抜いたら、誰も私を見てくれなくなるんじゃないかって……」
独白のような、か細い声。
俺は何も言わず、ただ彼女の言葉に耳を傾ける。
「でも、あなたは……こんな、だらしなくて、恥ずかしい私を……受け入れてくれた……」
彼女は俺の胸に顔をうずめると、小さな声で言った。
「……うれしかった」
その一言に、俺の心は完全に決まった。
こいつを守ろう。
“完璧な生徒会長”という鎧の下で、ずっと一人で震えていたこの少女を、俺が守り抜こう、と。
俺は彼女の華奢な身体を強く抱きしめた。
「もう一人にはしない」
「……うん」
「これからは、俺の前でくらい、完璧じゃなくていい。泣いてもいいし、甘えてもいい」
俺がそう言うと、彼女は顔を上げて、潤んだ瞳で俺をじっと見つめた。
そして、悪戯っぽく、ふふ、と笑った。
「じゃあ、もう一つだけ、お願い、いいかな?」
「なんだ?」
「……朝まで、このまま……抱きしめてて、ほしいな……」
その言葉は、もはや俺にとって、断ることのできない絶対の命令だった。
【続く】
俺たちの汗と、愛液の匂いが混じり合った、濃密な空気。
俺は、白銀さんの熱い体内に自身の存在を残したまま、ぐったりとその上に覆いかぶさっていた。
聞こえるのは、お互いの荒い呼吸と、激しく脈打つ心臓の音だけ。
完璧な生徒会長の、聖域だったはずの場所。その内部が、俺の熱をまだ名残惜しそうに、きゅう、と締め付けている。
「……はぁ……はぁ……」
先に正気を取り戻したのは、俺の方だった。
腕の中で、白銀さんはぐったりと目を閉じ、浅い呼吸を繰り返している。
涙の跡が残る頬、汗で額に張り付いた黒髪、そして、快感の余韻に微かに痙攣する白い肌。
その全てが、俺が彼女の“初めて”を奪ったのだという事実を、残酷なまでに突きつけていた。
(……俺は、なんてことを……)
罪悪感が、遅れてやってきた。
だが、それ以上に、この腕の中にあるか弱くて愛おしい存在を、どうしようもなく守りたいという感情が勝っていた。
俺はゆっくりと身を起こし、彼女の中からそっと自身を引き抜いた。
ぬ、と生々しい音がして、俺たちの繋がっていた証がシーツの上に点々と染みを作る。
彼女の瞳が、うっすらと開かれた。
その焦点の合わない、とろんとした瞳が俺を捉える。
「……ありすがわ、くん……?」
「……ああ」
「……どこか、いっちゃうの……?」
消え入りそうな声。
まるで、捨てられるのを怖がる子猫のような眼差しに、胸が締め付けられる。
「どこにも行かないよ」
俺はそう言って、彼女の額にそっとキスを落とした。
汗で濡れた髪を、優しく指で梳いてやる。
「……ここにいる」
その言葉に、彼女の瞳から、またぽろり、と涙がこぼれ落ちた。
でも、それはさっきまでの痛みや快感の涙とは違う。
安堵と、そして、今までずっと欲しかった何かを手に入れたことへの、歓喜の涙のように見えた。
「……あったかい……」
彼女はそう呟くと、俺の胸にすり寄ってきた。
熱に浮かされているせいか、それとも、今までずっと張り詰めていた糸が切れたせいか、彼女はひたすらに甘えてくる。
俺は、そんな彼女を抱きしめながら、ベッドサイドにあったティッシュで、汚れてしまった彼女の太ももをそっと拭ってやった。
その行為に、彼女の身体がびくりと震える。
「……ごめ、なさ……きたなく、しちゃって……」
「馬鹿。汚いなんて、思うわけないだろ」
俺は彼女の身体を清め、乱れたシーツを直し、自分も下着とズボンだけを身につけた。
そして、彼女の隣にそっと横になる。
「……有栖川くん」
「ん?」
「……私、ずっと怖かった」
「……」
「“完璧な白銀夜瑠”でいなきゃって。少しでも気を抜いたら、誰も私を見てくれなくなるんじゃないかって……」
独白のような、か細い声。
俺は何も言わず、ただ彼女の言葉に耳を傾ける。
「でも、あなたは……こんな、だらしなくて、恥ずかしい私を……受け入れてくれた……」
彼女は俺の胸に顔をうずめると、小さな声で言った。
「……うれしかった」
その一言に、俺の心は完全に決まった。
こいつを守ろう。
“完璧な生徒会長”という鎧の下で、ずっと一人で震えていたこの少女を、俺が守り抜こう、と。
俺は彼女の華奢な身体を強く抱きしめた。
「もう一人にはしない」
「……うん」
「これからは、俺の前でくらい、完璧じゃなくていい。泣いてもいいし、甘えてもいい」
俺がそう言うと、彼女は顔を上げて、潤んだ瞳で俺をじっと見つめた。
そして、悪戯っぽく、ふふ、と笑った。
「じゃあ、もう一つだけ、お願い、いいかな?」
「なんだ?」
「……朝まで、このまま……抱きしめてて、ほしいな……」
その言葉は、もはや俺にとって、断ることのできない絶対の命令だった。
【続く】
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沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
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漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
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